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2018.10.08

破折歯接着保存治療歯の10年経過症例 Part1( I さんのケース)

台風一過、今日は秋晴れの清々しい天気ですが皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
台風25号の影響で7日(日)に予定していた札幌マラソンが中止になってしまいました 
娘がネットでたまたま見つけて前日に教えてくれたのですが、前々日までは全く知りませんでした(まあ、さすがに
走るのは難しかったと思いますが)。

私自身これまで大会中止を経験したことがありませんでしたので、今回ハーフ参加費の5140円は返金されないという
ことも初めて知りました(大会開催に向けた運営費等に充当されるようです)。
大会の申込規約には「地震・風水害・降雪・事件・事故・疾病等による開催縮小、中止、参加料返金の有無、その額、
通知方法等についてはその都度主催者が判断し、決定します」とあり、例えばコンサートが台風で中止になった場合、
チケットは払い戻しされますが、マラソンの場合はこれまで中止になった大会もほとんどが返金されていないようです。

今年は7月の広島学会参加の際にも西日本豪雨の直撃に遭いましたし、「台風、洪水、地震などの自然災害は避けようが
ないしな~」ということで、三連休の6日は外を12km、翌日の大会予定日にはジムで10km走って札幌マラソンの元を
取りました(笑)

さて、前回のブログでもお知らせした通り、平成12年に当時63才で来院された I さんと平成10年に当時33才で来院
されたKさんの破折歯接着保存治療に纏(まつ)わるお話を2回に渡ってさせていただきます。

私が前回のブログでもお話しした眞坂信夫先生と出会い、歯根破折歯の接着保存治療を積極的に行うようになった
のは平成22年頃ですが、実はそれ以前にもその歯を保存する価値が十分あると私自身が考えたケースに限って、
破折歯の接着保存治療を行っていました。 I さんの破折歯もまさにそのような歯でした。

I さんの初診時のレントゲン写真です。

平成12年初診時

上顎はすでに歯がなく総義歯、下顎は前歯と左下奥に1本だけ奥歯が残っており部分床義歯が装着されていました。
I さんの主訴は、
1.バネの部分の見た目が悪くよく噛めない(下顎)
2.装着感の良い軽い義歯(上顎)を入れたいとのことでした。

平成13年治療終了時の状態です。

平成13年治療終了時

下顎はコーヌス義歯というバネのない二重冠義歯、上顎は軽くて生体親和性の良いチタン金属床義歯を作製しました。
治療終了後調子は良く、I さん曰く「義歯のように見えない」「何でも食べられる」とのことでした。

しばらく経過は良好だったのですが、治療終了7年目、平成20年に右下犬歯が腫れたとのことで来院されました。
調子良く噛めていたことと引き換えに歯に負担をかけ続けたことが、結果として金属ポスト先端部での歯根破折を
引き起こしていました。

 平成20年右下犬歯の状態

こういうタイプの下顎義歯(コーヌス義歯)はカメラの三脚と同じで足が一つなくなってしまうとバランスが悪くなります。
今回歯根破折を起こした右下犬歯を失ってしまうと、その後は左下の内冠が装着されている2本の歯に大きな負担が
かかります。即ち、右側で噛むと左下の2本の歯は右に揺さぶられるようになり、結果、左下にも歯根破折等のトラブルを
引き起こしやすくなります。I さんと相談の上、歯周外科処置による口腔内接着法という方法で右下犬歯の接着治療を
行うこととしました。

平成25年(治療終了12年後、接着保存治療5年後)の状態です。何事もなかったかのように問題なく経過しています。

平成20年の状態

「とにかくよく噛める」「ここで(破折した右下犬歯部)で食べると食事がおいしい」とのこと(ひえ~~、  )
「一度割れている歯なので、くれぐれも加減して優しく噛んでくださいね」とお話ししました

I さんは以前からパーキンソン病を患っており、年々歩行が難しくなりながらも遠く山の手から年に2回、時にはタクシーを
使ってメインテナンスに来院されていましたが、治療終了17年後の昨年の受診を最後に施設に入居されることになり、
大変残念なのですが当院でのメインテナンスを継続することが困難になってしまいました。
治療終了17年後、最後にお撮りしたレントゲン写真です。

治療終了17年後

今年5月に息子さんがメインテナンスで来院され、「母はお陰様で、歯も入れ歯も調子よく使えています」とのこと、
とても安心しました。長いメインテナンスの中で、上下義歯とも一度ずつ義歯の裏を貼り直してはいますが、下の前歯の
虫歯の治療以外は一箇所の再治療も歯の喪失もなく、64才から81才を I さんは過ごされました。

前回のブログでもお話ししたように、割れているから治療不可能ということでそのまま放置していたら、あるいは10年前の
時点で抜歯をしていたら、その後左側の歯にも負担がかかりトラブルの連鎖を引き起こした可能性は十分あると思います。

治療の難しい1本の歯の保存に努めることは、単にその歯を残すという価値のみならず、次の抜歯予備軍となる歯の
保存にも繋がります。

見栄えの良い、快適な、よく噛める義歯を長く維持することができたことで、I さんのかかりつけ歯科医として、
I さんのQOL(quality of life、生活の質)の向上に確実に貢献できたのではないかと思います。

開業当時に60代であった患者さんが、20年以上経って少しずつ通院できなくなってしまう状況はとても悲しいのですが、
お元気で通院していただけている間は、患者さんの最後のかかりつけ歯科医として責任を持ってメインテナンスし続け
たいと考えています
2018.10.03

神経を取っても痛みがなくならないと来院されたSさんの話(歯の破折、口腔内接着法)

 10月に入り、朝夕は秋の訪れが感じられる季節となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか、
なえぼ駅前歯科の大村です。
胆振東部地震からそろそろ1ヵ月になりますが、相変わらず余震が続いていますね。そしてそれに追い打ちをかける
ような台風。24号が過ぎ去ったかと思うと、週末には台風25号が沖縄に接近するとのこと。

7日(日)には札幌マラソンもあり、一昨日はジムで2時間以上ゆっくりと走りました(いや時々歩いていたかな、笑)。
無理せず1時間以上の有酸素運動がダイエット(前回のブログで糖尿病予備軍の仲間入りをしてしまったことを
ご報告したと思いますが )には良いとのことですので、何とか週3回位継続して走れると良いのにな~と
思っているところです。診療終了後には、腹筋背筋用のシットアップベンチとダンベルで少しずつ筋トレも始めました。
長続きするかな~ 、頑張りたいと思います。

今、「見て楽しい、歯的博物館」(わかば出版)という本を読んでいます。

この本は前半が江戸~明治時代の日本、そして後半は16~20世紀の西洋のそれぞれ歯科事情が多くの図入りで
詳しく著されています。
以前、日本歯科医師会雑誌で、江戸時代の入れ歯師の話や日本最古の入れ歯「仏姫(尼僧)の木の入れ歯」の話が
紹介されているのを興味を持って読んだことがあり、2015年にこの本が上梓されていることを知り今回購入しました。

昔の木の入れ歯

左:江戸時代の既婚女性(お歯黒)の入れ歯  右:室町時代の日本最古の入れ歯

本日は西洋編から耳寄りな話を一つ。
皆さんはアメリカ合衆国初代大統領であるジョージワシントンが入れ歯であったことはご存知でしょうか?

ジョージワシントンの肖像画と入れ歯

左:ジョージワシントンの肖像画  右:ジョージワシントンの入れ歯

左は一ドル紙幣にもなっているワシントンの肖像画ですが、この肖像画は彼が64才の時に描かれたもので、
当時ワシントンはすでに上下総義歯でした。
そういう目でよく見てみますと、確かに入れ歯が口から飛び出さないよう口元を緊張させている様子が伺えますよね(笑)。
右はワシントンの晩年の入れ歯で、歯はカバの牙や象牙で作られており、金の延べ板を打ち出した床に3枚の金の留め金
で固定されていました。
また上下の床部分がスプリングで繋がっているのは、今とは違っていてとてもおもしろいですね。
なかなかおもしろい本ですので、このブログでもまたその内容をご紹介させていただきます。

さて、本日は痛みがあって1ヵ月前に神経を取る処置を行ったが、未だに噛むと痛みがあるとのことで来院された
Sさんのお話をさせていただきます。

初診時のレントゲンを診させていただいたところ、根管治療は行われているものの、おそらく打診痛、咬合痛が
消えないことから根充(最終的なお薬を詰める治療)に至っていないと推測、まずは通法通り根管治療を行って
いきました。

初診時左下6

         初診時の状態

治療開始から4回目、根管治療終了時(根充後)の状態です。

根管治療終了時(根充後)

     根管治療終了時(根充後)

この状態から3ヵ月経過を見ましたが、噛んだ時の痛みは相変わらず消失しませんでした。
あらためて根管内をよく観察したところ、手前から奥にかけて破折線(歯の亀裂)を認めました(写真矢印)。
また拡大鏡にて更によく見てみると、手前から奥のみならず、外側と内側の間(イスムス)にも破折線を認めました。

左下6の破折の状態
                 破折線の状態

当初は根管治療の問題で痛みを生じていると考えていたのですがそうではなかったようでした。
現状をお話しし、痛みの原因は歯の破折によるものである可能性が高いこと、また歯を保存し症状を改善させるためには
接着保存治療が必要であることを伝えたところSさんは治療を希望されました。

拡大鏡を見ながら破折線を時間をかけて丁寧に追求し、根管内から追う必要があると判断したところまでは
すべて追いました。破折用超音波チップで破折線を追った後の状態です。

破折線除去、口腔内接着前

              破折線除去、口腔内接着前

ここからスーパーボンドを用いた破折線部の封鎖とi-TFCファイバーによるコア(土台)の作製を行っていきました。
口腔内接着法終了時のレントゲン写真です。

口腔内接着法+i-TFCファイバーコアセット後

      口腔内接着法終了時

下は治療終了2年6ヵ月後の現在の状態です。
Sさんは本日来院され、左下奥は調子が良いとのことでした 
歯根周囲の状態も良好です。

2年6ヵ月後の現在の状態

   2年6ヵ月後の現在の状態

破折歯の保存治療をよく勉強されていない先生が 「患者さんが望んだから無理に残す治療」であるとか、
「どうせ残しても長くは持たない」と主張されているのをたまに耳にしますが、私はそう思いません。

破折歯接着保存治療は世田谷区自由ヶ丘で開業されている眞坂信夫先生が1982年、歯根破折を起こした歯を
スーパーボンドで接着させたのが始まりで(この破折歯は患者さんが逝去されるまで18年間、口腔内でしっかり機能
しました)、私の母校である北海道大学歯学部歯周・歯内療法学教室(菅谷 勉先生)においても20年に渡り、
基礎的、臨床的研究を積み重ねた治療法なのです。
よく勉強し臨床を積み重ねないと語れない臨床実感というものがあります。

勿論、破折の状態により、処置を行っても歯周組織の回復が難しことが予測される場合は、保存治療自体をあきらめて
いただき、インプラント等の代替治療をご提案することもあります。
しかしながら「できるだけ歯を長く残す治療」と考えますと、こういう治療のオプションを持ちあわせておくことも
必要だと思います。

Sさんのこの歯も、このまま放置された状態が続くと破折は進行し、感染が広がると破折線周囲の骨に吸収が起こって、
歯ぐきが腫れるといよいよ抜歯せざるを得ない状態になると思います。

何より痛くて噛めないと言っておられたSさんに、今では調子よく噛めると言っていただけることが嬉しいですよね。
歯科医師冥利に尽きます

最後になりますが、次回の「なえぼほのぼのブログ」は、平成12年に当時63才で来院された I さんと平成10年に
当時33才で来院されたKさんの破折歯保存治療とその後の長期経過についてお話させていただきます。

1本の歯を残す、残せることで、その患者さんの口腔内、日常生活にも多大な貢献をもたらすことができるという
ケースです。ご期待ください

北海道の紅葉



















2018.09.16

予後の難しい歯を多く抱えたKさんの治療例

 胆振東部地震から10日余りが経ちその後も余震が続く今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか、
なえぼ駅前歯科の大村です。

今回の地震は札幌でも震度5強(東区元町は6弱)を記録し、私もこれまで経験したことのない大きな揺れでした。
幸い病院、自宅とも大きな被害はありませんでしたが、震源地の厚真町を中心に40名の方がお亡くなりになられました。
ご冥福をお祈りすると共に、被害に遭われた皆様の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

話は変わりますが、我々医療従事者は年に1回の健康診断が義務付けられており、今月初めにスタッフ全員で
慈昂会本部の福住内科クリニックに健診に行ってきました。スタッフは皆至って健康との結果だったようですが、
私は血液検査の結果HbA1Cが何と5.7を超えており、糖尿病予備軍の仲間入りをしていました 

糖尿病は戦後間もない頃からこの半世紀で、患者数がおよそ40倍以上に激増しており、日本人の40歳以上の
男性2人に1人は糖尿病か糖尿病予備軍と言われていますが(女性は3人に1人)、どこか他人事として捉えていました。

糖尿病は万病のもと、一旦罹ってしまうと生涯に渡って食事制限をし続けなければなりません。
やっぱり健康で長生きしたいし、歳を取ってもおいしいものは食べたい!ということで、「糖尿病男さん」という有難くない
ネーミングを妻から頂戴し 

1.腹八分目(時に六分目)、野菜中心
2.夜はできるだけ早く食べて寝る(いつも食事は10時過ぎになってしまうので)
3.休みの時だけでなく平日ももう少し走る(歩くでも良い)
4.夕食後、しっかり歯を磨いた後は間食をとらない!
  仕事で疲れる→運動しない、食べてしまう→ますます疲れる という負のスパイラルから抜け出す
5.体重をあと5~10kg減らしてメタボ解消!(このブログを始めた頃から言っているのですが

70kgを60kg前半、BMLを25未満に!   をいよいよ真剣に考えています。

今日も昼からゆっくり3時間ほど、豊平川の河川敷をジョギングしてきました。
10月7日は札幌マラソン(ハーフ出場)もあるので、それをまずは目標に(と言ってもあと3週間なのですが)
頑張りたいと思います。

ということで前置きが長くなりましたが、本日は先週メインテナンス来院されたKさんのお話をさせていただきます。
Kさんは年齢もまだまだ若く40代の男性なのですが、予後の難しい歯(治療困難で抜歯もしくは抜歯予備軍となり得る歯)、
即ち、歯根破折、大きな根尖病変(歯根吸収)、穿孔(パーホレーション)、重度歯周炎(根分岐部病変)、残存歯質が少ない
などの問題がある歯を多く抱えていました。

初診は平成28年10月、右上前歯が一昨日から腫れて痛みがあるとのことで来院されました。
当初はここだけの治療を希望されていました。
初診時の右上前歯のレントゲン写真です。

初診時右上2

太い金属ポストが装着されており、残存歯質が少なく歯根破折を起こしていました。破折線周囲の歯周ポケットは
ぐるりと根尖に至っており、陳旧例のため破折線部の接着保存治療を行ってもすでに周囲の歯根膜が壊死しており
回復が難しいケースと判断、やむなく抜歯させていただきました 

ブリッジで行う場合、3歯の負担を両隣接の2歯で支えることになりますが、(向かって)右隣の歯にも太い金属ポストが
装着されており、歯根破折の連鎖を防ぐため i-TFCファイバーコアをご提案したところ治療を希望されました。

初診時の全顎レントゲン写真です。

 初診時全顎レントゲン写真

左の奥歯ばかりで4ヵ所金属の詰め物が脱離していることから左側偏咀嚼傾向が伺われ、右上奥の欠損(右上7、5欠損)
を放置しているため右側ではしっかり噛めておらず、左側臼歯部に大きな負担がかかっていることが想像されました。
黄字(△)の6歯は前述した予後の難しい歯で、後ほど少し詳しくお話させていただきますが、様々な問題を抱えていました。
このような歯は、一旦手を付けられてもすぐに抜歯を宣告されてしまったり、消極的な経過観察(持たせるところまで
持たせる)の末抜歯されたり、あるいは不十分な治療ですぐにトラブル→抜歯宣告となったりすることが、残念ながら
往々にしてあります。
当院にはそのような患者さんがHPやこのブログをご覧になられ、セカンドオピニオンや歯の保存を希望して来院
されています。Kさんのお口の中にはそのような歯が6歯ありました。

初診時の口腔内写真です。

初診時口腔内写真

全体にプラークや歯石の付着も多く見られ、歯のみならず歯ぐきの治療(歯周病治療)も必要と思われました。
また咬合力に関しては、前述した左側偏咀嚼傾向と犬歯、前歯の咬耗状態から夜間のブラキシズムを(少し歯ぎしりが
あるのではないかと)疑いました。

歯周病治療を進めながら、予後の難しい歯の治療を進めていきました。
左上奥(左上6)の治療経過です。

左上奥(6)の治療経過

次に右上奥の治療経過です。

右上6の治療経過

この歯は普通は抜歯されている(もしくは消極的経過観察)と思われますが、歯周病、穿孔部、破折線部、フェルールの
すべての問題をひとつずつ丁寧に診査、診断し、適切に処置した結果、短期間ではありますが、おそらく破折に由来して
いたであろう口蓋根周囲の骨透過像の改善と骨の平坦化、歯周ポケットの改善を認めております。

次に右上4の治療経過です。

右上4の治療経過

右上4は歯根破折でしたが、根尖病変と破折リーマーの残存も認めましたので、再植時に両方の処置を行いました。

次は右下6、7の治療経過です。

右下奥(76)の治療経過

このあたりはできるだけ初診時の診査、診断を正確に行い、単に外科処置のテクニックだけでなく、治療方針、治療手順
を誤りなく見立てることが要求されます。

治療終了時のレントゲン写真と口腔内写真です。

治療終了時

治療終了時口腔内写真


右下奥の舌側の歯肉などはまだまだブラッシングに改善の余地があるものの、初診時の口腔内と比べると
患者さんのブラッシングに対する意欲、かける時間はかなり良くなっていると思います。

セラミックが装着されていた左上2は太い金属コアを除去せず歯根端切除術のみを行い、同じく左上1もひとまず
経過観察としました。
初診時抜歯となった右上2は右下3と咬合接触するガイド歯であったことが歯根破折を起こした原因の一つと考えており、
左上1、2よりも歯根破折のリスクが高い歯であったと考えています。
現在の左上2の状態です(歯根端切除後5ヵ月、治療終了時は同1ヵ月)。
根尖部の透過像はほぼ改善しています。

左上2の現在

夜間のナイトガードはKさんが治療を希望されたため、現在作製して使っていただいており、夜間ブラキシズムの診断も
兼ねて装着状況を経過観察中です。
また右上奥の残存歯はどちらも歯根破折(接着保存治療済)を伴っていたためブリッジにはせず、欠損している5部には
インプラントを提案中です。

仕事柄転勤の多いKさんですが、近い将来転勤があった場合でも転勤先の良いかかりつけ歯科医をご紹介し、
今回治療した歯をできるだけ長く維持していただきたいと思います。そしていずれ札幌に戻ってこられた時、当院をKさん
のアンカー(船の錨→最後のかかりつけ歯科医院)にしていただけるよう、これからもスタッフ一同、あらゆる面で日々
研鑽、努力する所存です。

Kさん、今後ともどうぞ末永くよろしくお願い致します 













2018.08.22

上下左右最後臼歯部遠心に歯周病による著しい骨吸収を認めた一例(歯周再生療法)

  お盆前から続く長雨ですっかり朝晩は肌寒さを感じるようになり、暑かった夏が早、懐かしく感じる
今日この頃です。皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。

今年のブログは近況やイベントの報告、日常の一コマが多く、あまり治療例のアップをしていませんでしたので、
これから年末にかけて少しずつ最近の症例を整理し、「へ~、そうなんだ~」とか、「こういう治療もできるんだ」と、
何か皆様の参考になるようなアップ記事を掲載していきたいと思います。

本日は左上奥の歯ぐきが腫れたため歯科医院を受診したところ抜歯と言われたとのことで、平成28年当院に来院
されたTさんのお話をさせていただきます。下は初診来院時のTさんのレントゲン写真です。 

平成28年初診時レントゲン写真

               平成28年初診時レントゲン写真

主訴である左上の最後方歯(◎)は歯周病が高度に進行しており、また元々親知らず(以下、智歯と記載)があったと
思われる隣接部で大きく虫歯も進行していました。精査したところ外側から奥側にかけてすべて根の先まで骨がない
状態でした。

初診時の左上7

           初診時の左上奥

全体的には軽度~中等度の歯周炎でしたが、左上奥以外にも左下奥、右上下奥(〇)のすべて奥側で、局所的に重度の
歯周炎に進行していました。

右上下、左下奥の初診時

話をお聞きしたところ、今から15年程前の20代後半に上下左右の智歯を抜歯して矯正治療を行ったのこと。
おそらく元々歯周病の罹患度(なりやすさ)がやや高いところに、智歯との間は磨くことが困難な状態になっていたため、
その部で特に歯周病が進行していたのではないかと思われました。

智歯を抜歯した後(矯正治療前)もしくは矯正治療後に歯周病治療を行えば良かったのですが、残念ながら歯周病に
罹患しているという現状説明も歯周病治療もなされないまま静かに進行し、無症状に15年が経過したのではないかと
想像されました

ダリア

左上奥は外側、内側に骨の支えがあって奥のみが根尖まで進行したのであれば再生療法で保存を試みたのですが、
囲みのある骨がなく再生できる見込みがなかったため私も残念ながら残せないこと、また今一番問題なのは
特に左上奥、右上下奥の歯であり、このまま放置しておくと数年のうちに左上奥のように根の先まで骨がなくなって
しまう可能性があることをお伝えしました。

数回歯周病治療に通院された後半年ほど未来院となり、その後左上奥が更に欠けてしまったとのことで再来された時の
左上奥の状態です。

再来時の左上奥

           再来時の左上奥

わずかな歯根を残してほとんど歯は脱落しており、レントゲンをご覧になられてさすがにTさんも保存は不可能と
観念されたようで、やむなく抜歯させていただきました。

左上奥、右上下奥の奥側は根尖もしくは根尖近くまでの骨吸収を認めており、この3ヵ所は通常の歯周外科処置では
深い歯周ポケットが残る可能性が高く、骨の再生も不十分になると思われました。
まだ40代のTさんが一生涯この歯を維持していくための最善の治療として、GTR法(再生療法)をご提案したところ、
Tさんは治療を希望されました。

初診来院から半年の未来院期間を経て再来された時に、左下奥の歯周炎は更に進行(根尖まで骨吸収)していたため
根管治療を行いました。

再来時(再生療法前)の左下奥

             再来時の左下奥

再生療法後8ヵ月~2年の現在のレントゲン写真です。

右上下、左下奥の現在

再生療法後の経過期間が一番短い左下奥だけはまだ十分な再生が得られていませんが、抜歯は回避することが
でき、今後は右上奥、右下奥同様、骨の再生状態を観察していく予定です。
初診時根尖までの骨吸収を認めていた右上奥は、歯髄診断を行ったところすでに失活していた(神経が死んでしまって
いた)ため根管治療を行った後、冠を装着しています。

萌出するスペースがなく十分に生えてこない(例えば横向きに生えている)智歯を、単に痛みがないからとか
抜歯するのはひとまず避けたいからという理由で放置されている患者さんは結構多いのですが、結果、Tさんのように
智歯の前方にある大切な歯が歯周病や虫歯になり、歯の寿命を縮めてしまうということが往々にしてありますので
注意が必要です。

但し、口腔内にすでに失活歯がある場合、失活歯は常に歯根破折のリスクを抱えていますので、割れが入ると突然
抜歯宣告されてしまいます。そういう場合の救済処置の一つとして智歯があれば歯牙移植が可能な場合もありますので、
私は年齢、口腔内全体(歯、歯周組織)の状態、智歯周囲の状態等を総合的に判断して、今抜歯した方が良いかどうか
を患者さんにお話しするようにしています。

Tさんの奥歯のように、局所的に根尖もしくは根尖近くまで重度垂直性に骨吸収してしまっている場合、骨欠損の状態
等により、エムドゲイン、GTR膜、自家骨等の移植骨を用いた再生療法が有効と考えており、当院では本当に必要と
思われる症例を選んでご提案するようにしています。

ひまわり

本日メインテナンスに来られたTさんから「再生されたところは再発や悪化がないというわけではないんですよね?」
とご質問をいただきました。
「そうなんです(笑)」
再生療法は根尖近くまで骨のなくなっていた歯周組織をより良好に治癒させ、メインテナンスできる歯周環境を整えた
ということであって、決してブラッシングやメインテナンスが不十分でも悪くなりにくいということではないんです。

歯周病治療に精通した歯科医院を選ぶことができれば、あとは健康な歯周組織を獲得し、長期に維持するための
鍵は実は患者さんご自身にあるのです。
Tさん、これからもスタッフ一同しっかりサポートしていきますので、末永くよろしくお願いしますネ


2018.08.13

インプラント治療を希望して来院されたSさんの治療例

 今日からお盆に入りましたがここ札幌は大雨となっています。
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
私も明日は道南の方へ墓参りに行きますが、皆様も安全運転で事故のないようお気をつけください。

本日は一昨年の暮れに、市内の歯科医院さんからのご紹介で当院に来院されたSさんのお話をさせて
いただきます。前回のブログでも書きましたが、Sさんは以前受けた歯科治療において怖い思いをされたとのことで、
30才くらいから10年以上お口の中に問題があってもずっと放置されていました。

下顎左右臼歯部はすでに歯が喪失あるいは虫歯により保存が困難な状態であるため、今回ご紹介下さった
歯科医院さんで当院でのインプラント治療を勧められたとのことでした。

Sさんの初診時のレントゲン写真です。

初診時レントゲン写真(改) 

右下奥(向かって左下奥)のブリッジの奥の歯はほとんどない状態で片持ち梁になっており、左下奥も虫歯で
残根状態でした(マルで囲んだ部分)。
また左上の歯(〇)もブリッジから外れて虫歯になっており、残存歯根長は8~9mmしか残っておらず厳しい状態
でした。
Sさんは入れ歯ではなく固定性のブリッジを希望されていましたが、右下奥は長く感染した状態で歯を放置して
いたため、インプラントを埋入するために必要な骨の高さも幅も不足していました。

まずはインプラント以外の歯の治療を進めていき、左上奥の残根は歯根長も8~9mmと保存の限界でしたが、
この歯を保存することでブリッジの支えを補強できると考え、矯正的挺出を行い保存に努めました。

左上4矯正的挺出

初診から7ヵ月後の状態です。保存予定の歯の治療はすべて終了しています。

 保存予定歯の治療終了時

ここからまずは右下奥にGBR(骨造成)、次いで左下奥の抜歯即時インプラント埋入を行っていきました。
右下奥はGBR後8ヵ月骨の造成を待ち、今月ようやくインプラントの埋入を行いました。

初診時、現在(治療途中)の口腔内写真と下顎左右臼歯部のインプラントの状態です。

初診時及び現在の口腔内

ここから3ヵ月待って右下奥に冠を装着するまでの間、右上下前歯のホワイトニングを行う予定です。
GBRにより右下奥に骨が造成される8ヵ月の待機期間を含め、初診から2年近くかかってはいますが、
初診時に比べると歯も歯ぐきもきれいになっているのがわかるかと思います。

医療系のお仕事をされているSさんですが、私の治療に全幅の信頼を寄せて下さっていますので、当たり前
のことではありますが、決して抜かりのないようひとつ一つの処置をよく考え、丁寧に積み重ねてきました。

特に経年的に残存歯がインプラントに置き換わっていくことのないよう、歯を守るためにインプラントをうまく活用
しようと考えると、インプラントの外科の技術は勿論、欠損歯列の見立て(補綴的な知識)や咬合力のコントロール、
歯根破折、歯周病の治療における知識、技術も持ち合わせておくべきで、まさに歯科医師としての総合力が
問われると考えています。

まだ40代のSさんがこれまでのようにお口の中にコンプレックスを持つことなく、人前でも大きく笑って会話が
でき、おいしものを無理なく何でも食べられるよう、今後10年、20年と長期維持を目指し、スタッフと一緒に
サポートしていきたいと思いますので、Sさん、今後も長くお付き合いくださいね。よろしくお願いします