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2016.05.01

歯の保存治療(穿孔)・・・長期保存は困難と思われたKさんの治療例

昨日、一昨日と全道各地では雪が降る肌寒い天気でしたが、今日は午前中お天気も良く
平年並みの穏やかな1日となりそうですね。5月に入りいよいよゴールデンウィークに突入しました。
当院も4月29日から5月5日まで1週間休診とさせていただきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか、
なえぼ駅前歯科の大村です。

5月5日の豊平川マラソンまで1週間を切りましたが、相変わらずの体形で (^^;走るよりは温泉、
マッサージで頚椎、腰椎のリハビリを行っている状態です。
まあ、ハーフマラソンでゴールの時間制限もないので、ゆっくり完走したいと思います。
今日は午後から豊平川の河川敷を走る予定です

現在車がなく(納車は6月とか・・・、トヨタさん3ヶ月待ちです )、
必然的に歩かざるを得ず健康には良いのですがやはり不便です。
連休中は娘の車をちょっと借りて(^^; 久しぶりに積丹まで家族とゆっくりドライブでもしながら、
温泉にのんびり浸かって、帰りは余市の燻香廊(けむかろう)で少しリッチにランチでも
食べて帰ってこようかな~と考えていますヽ(´∀`)ノ

本日は平成8年当院に来院され、現在まで20年、手稲からメインテナンス来院されている
Kさんのお話をさせていただきます。
初診時のKさんの主訴は3、4年前に治療した左下、右下が痛いでした。
特に左下奥の歯はじくじくする痛みと噛めない状態で、Kさん曰く、前医で冠を入れた時から
痛かったとのことでした。

レントゲンからは髄床底穿孔(もともと神経があった空洞の底の歯質に穴があいてしまった
状態)が疑われ、穿孔部周囲は感染し、骨吸収像を呈していました(レントゲン矢印部分)。

初診時レントゲン(矢印部分が穿孔部)

    初診時左下奥(矢印部分が穿孔部)

冠を外してみたところ穿孔は大きく、3~4年以上前の陳旧例であること、すでに打診痛、
咬合痛が出ていて骨吸収像もあること、樋状根で2根に分けることもできないことから、
正直予後は厳しいのではないかと考えました。

現在このような穿孔部の保存処置としては、MTAセメントもしくはスーパーボンドが良い
封鎖材料であることがわかっているのですが(どちらも残念ながら保険診療で認められて
はいません)、保険診療だからということで、穿孔=抜歯とされてしまうことが残念ながら
少なくないというのが日本の歯科医療の現状なのです。

20年前の当時、MTAセメントはまだこの世に出ておらず、またスーパーボンドはおそらく
(あくまで私の想像ですが(^^;))非常に生体親和性の良い材料であるということが当時は
まだよくわかっていなかったこと、8~10分の硬化待ち(その後クイックが出てきて硬化時間
は5~6分に短縮)の間に穿孔部歯肉が出血してくると封鎖が悪くなり(漏洩が起こり)、予後
は良くないと考えられていたことから(現在は最初の10秒くらいで確実に止血されていれば
漏洩は起こらないということがその後の研究でわかっています)、私が昔勉強した歯科専門誌
「こんな事故が起こったら・・・」(デンタルダイアモンド、平成元年発行)にもスーパーボンドで
封鎖とは記載されていませんでした。

20年前の当時は光照射型(特殊な光を照射すると瞬時に硬化するタイプ)のアイオノマー
セメントがベストな材料と私が所属している札幌臨床歯科研究会でも言われていましたので、
麻酔を行い、穿孔部の虫歯の除去、電メスによる肉芽の除去、止血をしっかり行った後、
光アイオノマーセメントで封鎖しました。

前述しましたように、陳旧例で樋状根の髄床底への大きな穿孔でしたので、当時予後は
難しいのではないかと考えていました。
下のレントゲン写真はそれぞれ治療終了時、初診から10年後、20年後の現在です。
穿孔部の治療時、長期保存は困難だと考えたKさんの左下奥の歯でしたが、19年間、一度も
痛みも腫れもなく現在まで良好に経過しています。

 左下奥の治療後の経過
一方、もう一つの主訴であった右下奥(矢印)は、しみる症状が完全には改善せず、治療終了後も
知覚過敏の処置を継続して行っていましたが、平成18年に強い痛みが出てきたため、やむなく神経を
取る処置を行いました。

しかしながらそれ以外は19年間再治療なく(左下奥のブリッジはそろそろ20年になります)、
初診から20年間、1本の抜歯もなく来月81歳を迎えられます 

治療終了後

          上が治療終了後、下が初診から20年後の現在

 初診から20年後の現在


先日東京の国立で開業されている日本で著名な下地 勲先生の講演を聴講しましたが、
下地先生はあらゆる手立てを用いて歯の保存に努めれば、ほとんどの歯は保存が可能、
もしくは不要な智歯を用いて移植を行えば、インプラントになるケースというのは決して多くは
ないはずと講演の中で述べておられましたが、私もこれまでの臨床経験から全くの同感です。

インプラントの予知性は確かに上がっていますし、私もインプラントを行うことはありますが、
まずはご自分の歯を残す、うまく活用する治療を長年実践しています。
できれば自分の歯を残したいと希望して来院される、あるいは他院で抜歯宣告されて何とか
ならないものかと来院される患者さんの思いに応えることこそが、私は歯科医としての本来の
仕事だと思っているからです。
それが私の歯科医師としての使命と考え、長年研鑽に努め臨床実績を積み上げてきました。

Kさんは数年前に脳梗塞を起こされ、幸いすぐに救急車で搬送され大事には至りませんでしたが、
年々苗穂駅の階段の昇り降りがきつく感じる年齢になっているのではないかなと心配しています。
20年間、お互いに歳は重ねましたが健康で長くお付き合いをさせていただいている、本当に
感謝の気持ちで一杯です。

かすみ草

自院に通われている患者さんの全身の健康は残念ながら診て差し上げることはできませんが、
口腔健康を通してささやかではありますが、患者さんの幸せに貢献できたらといつも思って
診療にあたっています。
Kさんこれからもお元気で、年に数回ではありますが、いつまでもお元気な姿を見せにメインテ
ナンスにご来院ください。楽しみにお待ちしております

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