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2019.05.07

咬合性外傷を伴う重度歯周炎に罹患していたNさんの治療例

 今日から連休明けの仕事始めですね。
連休後半は天気も良く絶好の行楽日和でしたが、皆様いかがお過ごしでしたでしょうか。
私も5月5日の豊平川マラソン、何とか (;^_^A ゴールしました。
まあ、ゴールしたと言っても15km過ぎから歩いてしまったので、これまでの自己最低記録を塗り替えてしまいましたが  
練習不足と歳にはやはり勝てません。無理せずゴールしました。
春の暖かい日差しの中、2時間半走ったり歩いたりして少し日焼けしただけで十分健康的でしたが、6月の千歳JALマラソン
に向けてもう少し走れるようにしたいと思います。

話は変わりますが、これまでもブログで度々書いている通り、当院では各月でランチ会を行っています。
今回4月はホテルマイステイズプレミア札幌パーク1階(中央区南9条西2丁目) にあるFarm To Table TERRAで行いました。
室内なのにアウトドアのようなスタイルの地産地消の自然派レストランとして1年前リニューアルされたTERRAは、
スタッフが以前から気になっていたお店だったようです。

店内は高い天井が吹き抜けになっており、広い窓からは自然光も差しています。また通路以外のところには土や石が
敷き詰められてその間を小さな川も流れており、開放感があって静かで落ち着いた森林浴気分を味わえるお店でした。

店内内観

                      店内内観

ランチメニューはメイン料理(10種類くらいから選べます)にサラダバーとドリンクバーがセットになっており(下はビーフの
コロダッチグリル玉ねぎソース)、これに食後のデザートを頼みました。

料理と店内の様子
オーガニックな料理は味も色合いもボリュームもとても良かったですし、こういう開放的な雰囲気を楽しめるお店もなかなか
ないと思いますので、皆様、お時間がある時にぜひ一度行ってみてください。
ちなみに次回6月のランチ会はお休みし、その代わり7月にスタッフ全員でトマム一泊の医局旅行に行くことになりました。
医局旅行の様子は追々またこのブログでご報告させていただきます  

さて本題の令和元年最初の「なえぼほのぼのブログ」の治療例は、奥歯が全体にグラグラする、歯ぐきが腫れるとのことで、
平成27年に歯周病治療を希望して来院されたNさん(50代、男性)のお話をさせていただきます。
Nさんは3年くらい前から歯のぐらつきを自覚するようになり、前医で1本また1本と抜歯され、このままではどんどん歯が
なくなっていくのではないかと危機感を持って来院されました。

また歯ぎしりや噛みしめの自覚があり、上下顎大臼歯部において垂直性骨吸収と根分岐部病変の進行が著しく、ブラキシズム
が歯周病の進行における増悪因子となっていることが想像されました。

下が初診時のレントゲン写真です(歯周病の進行が著しい大臼歯部のみ歯周ポケットの深さを記載)

初診時レントゲン写真

左上(向かって右上)の一番奥の歯(左上7)はすべて10mm以上と完全に根尖まで骨がなく保存は不可能な状態でした。
また右上奥、右下奥の歯も一部の歯根で根尖まで骨がありませんでしたが、まずは根管治療を先行させました。
歯周基本治療、根管治療終了時の状態です。

歯周基本治療終了時

ここから歯周外科処置を行っていきました。
左上奥は冠を外したところ、6 は失活(神経が死んでいる状態)しており、また5 は冠の中で虫歯が進行していたため
いずれも根管治療が必要となりました。

左上5、6の状態

右上奥、左上奥のブリッジセット前の歯周ポケットの状態とブリッジセット後の口腔内です。
プロービング値はすべて3mm以内に収まっています。

上顎左右臼歯部の歯周外科処置後

次に下顎大臼歯の治療経過ですが、右下奥(8)は近心根のみならず遠心根も根尖に至る歯周ポケットが改善されないため
抜歯させていただきました。その空いたスペースを利用して本来あった位置に7 を起こし(アップライト)、手前の歯も一歯ずつ
手前に送っていきました。
元々欠損していた6部のスペースを確保した後、同部にインプラントを埋入しました。7 はブリッジ支台としては骨支持が少なく、
インプラントによる支持の増員が必要と判断しました。

右下臼歯部の治療経過

最後に左下奥ですが、5、6 欠損で骨支持の少ない7、8 が大きく近心傾斜した状態で残りました。

 左下7、8の状態(歯牙移植前)

右下臼歯部のように7、8をアップライトさせつつ順次手前に送っていく矯正治療は、固定源もなく時間も非常にかかる上に
2歯とも骨支持が少なく予知性も低いことから現実的ではなく、最初から抜歯して5、6 部にインプラントも考えましたが、
インプラントは対合歯の加圧要素となり得ること、7、8 を有効利用できないかと考え、8 近心根を5 部に90℃回転させて
歯牙移植、抜根して空いたスペースを利用して7 を遠心にアップライト、アップライトさせることでできたスペースに可能なら
8 遠心根を歯牙移植できないかと考えました(最終的には3からの連結固定)。

CTで3次元的な骨の状態を確認した上で、8近心根をまず5 部に移植しました。
歯牙移植はこれまで50ケースくらいは行っており、20年を超えるケースも持っていますが、このケースは抜歯したところ
術前CTで残存骨量を確認していたにもかかわらず健全な歯根膜がないと感じられ、これまで術中にこういう話を患者さんに
した経験はないのですが、「この歯は思っていたより健全な歯根膜がなく、もしかしたら生着しない可能性もありますので
術後の経過をみていく必要があります」とNさんにお話しした上で、歯牙移植を終えました。

術直後と移植2ヵ月の状態です。嫌な予感は的中しました。やはり健全な歯根膜がほとんどなかったようで生着しませんでした
(術前の歯周ポケットは浅く根尖付近の付着はありましたが、あらためて術前CTを見直してみますと、歯根周囲の骨はやや
透過性を増しており健全な状態ではないようにも見えます)。
CT所見で8の遠心根は近心根より更に条件が悪かったため、結局7、8は有効利用することができず、残念ながら抜歯となり
5、6部にインプラント埋入となりました。

左下臼歯部の治療経過
治療終了時と現在の状態です。
初診時リーマー(根管治療の器具)が破折していた左上犬歯(3)の根尖病変は、その後悪化して症状が出たため
補綴処置後に歯根端切除術を行っています。
現在まだ根尖部に若干の透過像を認めますが、術後6ヵ月でかなり改善してきています。

治療終了時の口腔内写真①

治療終了時の口腔内写真②

現在のレントゲン写真

初診時と比べると歯肉の状態はかなり改善していますが、数ヵ所に5mmの歯周ポケットが残存しており、また舌側からの
口腔内写真をみますと歯頚部にうっすらプラークの付着も認めたため、引き続きブラッシングの徹底に努めているところです。
またナイトガードを使用していただくと共に、咬合力のコントロールに関しても引き続きアプローチしていく予定でいます。

Nさんのようなブラキシズムによると思われる咬合性外傷を伴う臼歯部の重度歯周炎は、咬合力のコントロールは勿論必要
なのですが、歯周病の原因はあくまでプラークであることから(咬合性外傷は修飾因子)、歯肉縁上、縁下のプラークコントロール
を長期に渡り医患協同で徹底していくことが何より大切です。

治療経過の中で、残念ながら下顎左右の親知らず(8)と左下7は保存、有効利用できず抜歯を余儀なくされましたが、残った
22歯の残存歯が今後長期に守られていくよう、私たち医療側は温かく、さりげなく、大きな責任を持って見守っていかなければ
なりません。10年後、20年後、当院にきて本当に良かったとNさんに言っていただけるよう、スタッフ一同、協力し合いながら
研鑽していきたいと思います















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