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2019.02.18

中等度~重度歯周炎に罹患していたYさんとの20年(後編)(歯根外部吸収)

 皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。

2月12日、競泳の池江璃花子選手が白血病であることを公表し、世界中に衝撃が走りました。私自身も東京オリンピック
を大いに期待され、健康を絵に書いたようなあの池江選手が白血病って・・・、と本当に驚きました。

些か身内の話になるのですが、今から50年前、充(たかし)伯父様(長兄)が41才の若さで、急性白血病で亡くなりました。
当時、東大理学部の助教授をしており、原子分子物理の研究で、東海村の原子力研究所や東大原子核研究所の大型装置を
使って実験を重ねていたそうです。現在、次兄の平(ひとし)伯父貴以下、父方の兄弟4人は皆健在で、年齢も85才を越えて
きましたので、当時、実験中の被爆であるとか、何かあったのではないかな~と、今なら助かっていたのではないか、そして
日本の物理学会に大きな業績を残されたのではないかと甥として大変残念な思いです。

50年前は不治の病と言われ手の施しようがなかった白血病ですが、その後医学は発達し、近年の急速な治療法の進歩
により、現在、若い世代の白血病は7割以上が治っているとの報告も聞きます。

俳優の渡辺謙さんも1989年、急性骨髄性白血病を発症し、再起はおろか生命も危ぶまれたことがありました。1年間の
闘病生活の後、治療を続けながら復帰され、定期的に入院治療を続けながら経過も良好に見えたのですが、5年後の
1994年に再発。しかしながら、再び俳優として復帰し、その後「ラストサムライ」(2003年)でハリウッドスターの仲間入り
をされ、現在、最初の発病から30年になりますが、お元気でご活躍されています。

池江選手もまずはしっかり治療に専念し、日本の最高の医療スタッフチームの元、一日も早く元気な姿を見せてくれること
を祈っております。そして病気を克服した暁には、やはり競泳選手として復帰し、オリンピックで活躍する姿を見せていただけ
たらな~と切に願っています。

さて本日は、「中等度~重度歯周炎に罹患していたYさんとの20年(後編)(歯根外部吸収)」ということで前回の続きを
お話しさせていただきます。

Yさんは今から20年前の1999年(当時49才)に初診来院され、歯根外部吸収を認めた右上奥の治療を行いました。
「将来的に外部吸収が進んでくると7番は保存できなくなりますが、下に8番がありますので、この歯をうまく利用することが
できます」とお伝えした上で、翌月ブリッジを装着しました。

1999年初診時のレントゲン写真

その後、2015年(65才)までの16年間、前回のブログでお話ししたとおり、その間、何度か歯周病の現状と治療の
必要性をお伝えしたのですが、歯周治療を行わないまま経過してしまい、奥歯でしっかり噛めなくなるまでに重症化して
しまいました。

2015年再来時レントゲン写真

右下最後臼歯(向かって左下の一番奥の歯)と左上最後臼歯は噛むと垂直的にかなり動揺しており、全体に9~10mmと
深い歯周ポケットを認めました。また左上の奥2歯はぐるっとⅢ度の根分岐部病変を認め、この3歯は保存が危ぶまれる
状態でした。

またYさんは関節リウマチの治療を受けており、主治医に照会したところ、できるだけ休薬は避けてほしいとの要請があり
ましたので、臼歯部は重度の歯周炎でしたが、歯周外科処置は行わず、歯周基本治療のみにて対応していこうと考えました。

16年前にセットした右上奥のブリッジは、49才から65才までの16年間維持されていましたが、7番の外部吸収は進み、
8番(親知らず)は写真にありますように外側に歯冠を出しておりました。

右上奥、ブリッジセット16年後

平成27年(2015年)9月から、歯周治療を開始しました。
歯周治療の成功とは、健康な歯周組織を長期に維持することだと考えていますので、そのための大切なポイントが
あります。
① 患者さんご自身による良好なプラークコントロール
   歯と歯の間、歯と歯ぐきの間のプラーク(歯垢)を日々きれいに除去すること
   私は特に「ブラッシング時間を長く」ということを必ず最初にお話ししています (おおよその目安は1日1回は15分以上)
   時間をかけて磨き込まれた歯ぐきは経年的に硬い抵抗性のある歯ぐきへと変化していきます
   磨き込まれた硬い歯ぐきはちょっとやそっとのプラークくらいではビクともしません
② 患者さんご自身によるメインテナンスの継続
   これも最初のモチベーション時に必ずお話しし、治療中の節目、メインテナンス中にも何度も繰り返し
   お話しします
   大切な話は最初にできるだけシンプルに伝える、大切な話は繰り返し伝えるということが重要だと
   考えているからです  
③ 医療側による歯肉縁下の起炎物質の徹底除去
  患者さんがどんなにブラッシングを頑張っても、またメインテナンスを継続しても、ここが徹底除去されないと
   メインテナンスに通いながら歯周病で歯がなくなっていくということになってしまいます(メインテナンスを継続
   したからここまで持ったというのは詭弁です)
④ 医療側による質の高いメインテナンス治療
  10年くらいは全く再治療なく経過する患者さんも少なくないのですが、何らかのご事情でメインテナンスの空白期が
  生じたり、ブラッシングレベルも皆ピカピカというわけではありませんので、経過の中で歯、歯周組織に悪化が見られた
  時(どこが悪化しやすいかという予測と悪化に早く気づくことが大切)、適切な対応によりリカバリーさせなければ
  なりません。そこに医療側のレベルの差がはっきり出ます。
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歯周病は歳を取ったらなるものではありませんし(白髪になったり、髪が薄くなったりするような加齢変化ではない)、
歳を取ったら歯はなくなっていくものでも決してありません。歯周病は治癒、安定、維持が可能な病気なのです。

1999年の初診来院から2015年までの経過の中で、何度か歯周治療の必要性をご説明してもなかなか歯周治療に
踏み切らなかったYさんでしたが、担当歯科衛生士 I さんの指導の下、まずは時間をかけたブラッシングに励まれ、
その後、I さんによる歯肉縁下の起炎物質(歯石、プラーク、感染セメント質)の除去がなされていったことで、
再来時、歯肉辺縁に見られた赤み(赤いところは歯ぐきに炎症の見られるところです)は少しずつ改善していきました。

2015年再来時の口腔内写真

                  2015年再来時の口腔内

あらためて口腔内写真を見てみますと、再来時、Yさんはまずまずのブラッシングであったことがわかります
(プラークはそれ程付いていません)。これまでの歯周治療におけるモチベーション(働きかけ)の効果があったのかも
しれません。しかしながら歯周病は進行し深い歯周ポケットが見られたのは、歯肉縁下の起炎物質が原因と思われます。

Yさんのような進行した歯周病、特に臼歯部の複雑な根分岐部内の徹底除去は、歯周基本治療のみでは困難であるため、
再評価後、確定処置として当院では歯周外科処置を行っています。
しかしながらYさんは前述したように歯周外科処置ができませんでしたので、より時間をかけた丁寧な歯周基本治療を
心掛け、8ヵ月後メインテナンスに移行しました。
2016年5月メインテナンス移行時には、まだ13歯に5~6mmの歯周ポケットが残存していました。

歯周病の進行が著しかった右下奥と左上奥、歯根外部吸収を起こしていた右上奥の治療経過です。

右下、左上奥の治療経過

右上奥の治療経過

右上奥の矯正的挺出(矯正力で引っぱる処置)は、固定源を同側の手前の歯に持っていくことも考えたのですが、
時間がかかりそうでしたので、対側にアンカースクリューを入れそこを固定源にして挺出させ、おおよそ2ヵ月で手前に少し
寄せながら歯軸を修正しました。その後、7ヵ月間固定を行った後、ブリッジとしました。

ブラケット除去時、歯根周囲の骨は心もとない状態に見えますが、1年8ヵ月後のレントゲンでわかりますように
歯根膜の存在するところまできれいに回復しています。

現在のレントゲン写真です。

2019年現在の状態

残念ながら口腔内写真が撮影されておらず 、次回3月来院時に撮らせていただいたらアップしたいと思います。

メインテナンスの経過の中で、適時、担当衛生士の I さんが歯肉縁下の起炎物質の徹底除去に努めた結果、Yさんの
ブラッシングと相俟って、現在左上奥に2ヵ所、5mmの歯周ポケットを認めるのみとなりました。
またⅢ度の根分岐部病変に罹患していた左上奥2歯は、抜根せず良好に維持されています。

world standard(世界水準、この言葉は私は嫌いなのですが  )において、上顎大臼歯部のⅢ度根分岐部病変は
抜歯してインプラントもしくは保存する場合においても、支えの少ない歯根の抜根(部分的に歯根を抜歯する処置)なのですが、
Yさんの場合は抜根せずそのままメインテナンスできる状態にまで改善しました(そもそも抜根する場合には、再度内科で
休薬しないと処置ができないのですが)。

その理由としては、① 根分岐部内の処置( I さんが行っています)が徹底されていること ②根分岐部における骨欠損
の形(水平的な骨欠損に近いこと、但しYさんの場合は9~10mmの歯周ポケットがありましたので、必ずしも水平的とは
言えないのですが) ③患者さんのブラッシングレベルとメインテナンスの頻度(質も関係) ④歯肉の質(線維性の厚い
歯肉は歯周基本治療に反応が悪く、歯周ポケットが浅くなりにくい)が考えられ、これらの条件が重なった結果と考えています。

1999年、右上奥の歯はかなり歯根外部吸収を起こしていましたので、その時点で抜歯し、矯正治療を提案される先生も
おられるかと思います(抜歯して終わりの場合がほとんどかな )。
しかしながらその後2015年まで16年間この歯が持ったこと、その間歯周治療はされなかったこと(もしかしたらかなり
歯周病が進行してしまっていたかも)、右上奥のブリッジは結果として65才からの装着となりましたので、ここからの15年、
20年維持できると考えますと、寿命を全うできる可能性も十分あると思います。

この歯は文字通り、持つところまで持たせる歯ではありましたが、Yさんの49才から65才までの16年間、機能してくれました
(結局、20年間で抜歯はこの歯だけです)。

今後もご自身の歯を大切にしながら、勿論お体具合にも十分留意され(歯の健康維持の前提として、お体の健康がしっかり
維持されなければなりませんし、「歯周病は万病の元」と言われるように、あらゆる病気との関連性が示唆されていますので、
歯の健康維持は全身の健康維持にも少なからず貢献するものと思っています)、今後も末永く健康な状態でメインテナンス
にご来院いただけることを願っております。

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