2018.10.29
破折歯の接着保存治療にインプラントを併用したケース( K さんの治療例)
10月も残すところわずかとなりましたが皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
この時期は紅葉が見どころで、先週は平岡樹芸センターにモミジを、昨日は北13条門から入った北大の銀杏並木を
見てきました。11月に入り紅葉が散り始めると、北海道も短い秋に終わりを告げ、初雪の便りと共に冬の到来となります。
もうすぐ長くて寒い冬ですね~(笑)。
本日は前回のブログでもお伝えした、左下奥の歯が割れているので治療の相談をしたいと、昨年来院されたKさんの
お話をさせていただきます。主訴である左下奥のレントゲン写真です。

初診時の左下奥
歯根は完全に割れて感染が進行しており、歯根周囲に骨吸収を起こしていました。右下、左下ともそれぞれ大臼歯2歯が
すでに喪失しており、通常奥歯は左右計8歯で噛む力を支えるところ、Kさんの場合は4歯で支えていましたので、
一番負担のかかりやすい最後臼歯で歯根破折を起こしたものと思われました。
まずは割れた歯の接着保存治療を行い、


接着再植後
破折歯周囲の骨が改善してきていることを確認した後その奥に1本、更に右下奥にも1本インプラントを追加しました。

右下奥、左下奥にインプラント埋入後
こうすることでこれまで奥歯は左右4歯で支えていたところ、6歯で支えることができるようになり(一番負担がかかる
最後臼歯はインプラント)、結果、歯根破折歯を含めた残存歯の負担は軽減されます。
ここまでの治療を終了後、あらためて全顎のレントゲン撮影と歯周組織検査を行ったところ、左上奥の小臼歯に
金属ポスト先端に至る7mmの深い歯周ポケットを認めました。

冠を外したところ、全体にフェルール(歯肉縁上の健全歯質)がなく、近心側(向かって左側)においては歯肉縁下
4mmに及ぶ深い歯の欠損とその下に破折線も認めました。

冠除去後の左上奥
そのためまずは矯正治療による歯の挺出を4mm行い、その後近心側のみ生物学的幅径を確保するため、2mm程度の
骨切除(歯冠長延長術)を行いました。部分的に骨切除を併用することで、できるだけ骨支持量が少なくならないように
しました。

術後(ファイバーコアセット済)の状態です。初診時と比較し、歯肉縁上に健全歯質がしっかり確保されています。

矯正的挺出+歯冠長延長術後の左上奥
またKさんの右上奥の大臼歯には重度の歯周病(すべてⅢ度の根分岐部病変)が認められました。

外側の根(頬側2根)と内側の根(口蓋根)の間で歯周病が進行しているだけでなく、外側の根の外側や根と根の間に
おいても骨支持が少ないことから、頬側2根の予後は不良ということで抜歯してインプラントを選択する先生もおられる
ことと思います。
しかしながらKさんはできるだけ長く歯を残していきたいというご希望がありましたので、少しでも付着の獲得と骨の再生
を期待して、歯周外科処置時に再生材料(エムドゲイン)を使用しました。頬側遠心根は根尖近くまで歯根が露出して
いましたので、歯周外科処置後に更に歯ぐきの退縮が進んで根尖が露出しないよう結合組織移植も併用しました。
術前と術後3ヵ月の状態です。

治療終了時の上下左右臼歯部のレントゲン写真です。

治療終了時の上下左右臼歯部
左上奥は矯正治療終了から2ヵ月半ですので、まだ根尖の引っぱり上げた部分(赤矢印)に骨ができていません。
右上奥も歯周外科処置後3ヵ月半ですので、ここから少しでも骨が再生されることを期待してメインテナンスを継続して
いきたいと考えています。
私も決してやみくもに歯を残そうとは考えておりませんし
、自分の中での歯の保存の限界は勿論あります。
HPやこのブログをご覧になって、一縷の希望を持って来院して下さった患者さんに「残念ですが保存は難しいです」と
お話しすることもたまにあります
しかしながら予後が難しいと思われる歯に対して、最善と考える治療を行い保存に努めますと、当初は長く持たないと
思われていた条件の厳しい歯であっても、5年、10年、15年と思った以上に長く持つということを経験しています。
治療が難しく、たぶん予後が悪かろうということで安易に抜歯してしまったり、その歯を本気で残すためにベストを
尽くさない治療では、本当の意味での保存の限界を知ることも、もっとこうしておけば良かったという反省から学んだ
ことを、次の患者さんに活かすこともできないと思います。
どういう治療をもって“患者さんのため”というかは議論が尽きませんが、患者さんの主訴に耳を傾け想いを汲み、
できるだけ患者さんの望む治療を行った上で、長期維持という結果を出せるよう、これからもスタッフと共に
「患者さんの望む歯科医療の実践」に取り組んでいきたいと思います。

平岡樹芸センターの紅葉(モミジ)の絨毯
次回からは最近治療を終了した重度歯周炎患者さんの治療例を何ケースか見ていただこうと考えています。
また侵襲性歯周炎、重度慢性歯周炎患者に対するPCR細菌検査、除菌療法に関しても、2000年から臨床に
取り入れてきた中で、現在当院ではどのように考え実践しているのか、少し踏み込んだお話しをさせていただきます
のでご期待ください
この時期は紅葉が見どころで、先週は平岡樹芸センターにモミジを、昨日は北13条門から入った北大の銀杏並木を
見てきました。11月に入り紅葉が散り始めると、北海道も短い秋に終わりを告げ、初雪の便りと共に冬の到来となります。
もうすぐ長くて寒い冬ですね~(笑)。
本日は前回のブログでもお伝えした、左下奥の歯が割れているので治療の相談をしたいと、昨年来院されたKさんの
お話をさせていただきます。主訴である左下奥のレントゲン写真です。

初診時の左下奥
歯根は完全に割れて感染が進行しており、歯根周囲に骨吸収を起こしていました。右下、左下ともそれぞれ大臼歯2歯が
すでに喪失しており、通常奥歯は左右計8歯で噛む力を支えるところ、Kさんの場合は4歯で支えていましたので、
一番負担のかかりやすい最後臼歯で歯根破折を起こしたものと思われました。
まずは割れた歯の接着保存治療を行い、


接着再植後
破折歯周囲の骨が改善してきていることを確認した後その奥に1本、更に右下奥にも1本インプラントを追加しました。

右下奥、左下奥にインプラント埋入後
こうすることでこれまで奥歯は左右4歯で支えていたところ、6歯で支えることができるようになり(一番負担がかかる
最後臼歯はインプラント)、結果、歯根破折歯を含めた残存歯の負担は軽減されます。
ここまでの治療を終了後、あらためて全顎のレントゲン撮影と歯周組織検査を行ったところ、左上奥の小臼歯に
金属ポスト先端に至る7mmの深い歯周ポケットを認めました。

冠を外したところ、全体にフェルール(歯肉縁上の健全歯質)がなく、近心側(向かって左側)においては歯肉縁下
4mmに及ぶ深い歯の欠損とその下に破折線も認めました。

冠除去後の左上奥
そのためまずは矯正治療による歯の挺出を4mm行い、その後近心側のみ生物学的幅径を確保するため、2mm程度の
骨切除(歯冠長延長術)を行いました。部分的に骨切除を併用することで、できるだけ骨支持量が少なくならないように
しました。

術後(ファイバーコアセット済)の状態です。初診時と比較し、歯肉縁上に健全歯質がしっかり確保されています。

矯正的挺出+歯冠長延長術後の左上奥
またKさんの右上奥の大臼歯には重度の歯周病(すべてⅢ度の根分岐部病変)が認められました。

外側の根(頬側2根)と内側の根(口蓋根)の間で歯周病が進行しているだけでなく、外側の根の外側や根と根の間に
おいても骨支持が少ないことから、頬側2根の予後は不良ということで抜歯してインプラントを選択する先生もおられる
ことと思います。
しかしながらKさんはできるだけ長く歯を残していきたいというご希望がありましたので、少しでも付着の獲得と骨の再生
を期待して、歯周外科処置時に再生材料(エムドゲイン)を使用しました。頬側遠心根は根尖近くまで歯根が露出して
いましたので、歯周外科処置後に更に歯ぐきの退縮が進んで根尖が露出しないよう結合組織移植も併用しました。
術前と術後3ヵ月の状態です。

治療終了時の上下左右臼歯部のレントゲン写真です。

治療終了時の上下左右臼歯部
左上奥は矯正治療終了から2ヵ月半ですので、まだ根尖の引っぱり上げた部分(赤矢印)に骨ができていません。
右上奥も歯周外科処置後3ヵ月半ですので、ここから少しでも骨が再生されることを期待してメインテナンスを継続して
いきたいと考えています。
私も決してやみくもに歯を残そうとは考えておりませんし

HPやこのブログをご覧になって、一縷の希望を持って来院して下さった患者さんに「残念ですが保存は難しいです」と
お話しすることもたまにあります

しかしながら予後が難しいと思われる歯に対して、最善と考える治療を行い保存に努めますと、当初は長く持たないと
思われていた条件の厳しい歯であっても、5年、10年、15年と思った以上に長く持つということを経験しています。
治療が難しく、たぶん予後が悪かろうということで安易に抜歯してしまったり、その歯を本気で残すためにベストを
尽くさない治療では、本当の意味での保存の限界を知ることも、もっとこうしておけば良かったという反省から学んだ
ことを、次の患者さんに活かすこともできないと思います。
どういう治療をもって“患者さんのため”というかは議論が尽きませんが、患者さんの主訴に耳を傾け想いを汲み、
できるだけ患者さんの望む治療を行った上で、長期維持という結果を出せるよう、これからもスタッフと共に
「患者さんの望む歯科医療の実践」に取り組んでいきたいと思います。

平岡樹芸センターの紅葉(モミジ)の絨毯
次回からは最近治療を終了した重度歯周炎患者さんの治療例を何ケースか見ていただこうと考えています。
また侵襲性歯周炎、重度慢性歯周炎患者に対するPCR細菌検査、除菌療法に関しても、2000年から臨床に
取り入れてきた中で、現在当院ではどのように考え実践しているのか、少し踏み込んだお話しをさせていただきます
のでご期待ください

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