2018.10.20
破折歯接着保存治療歯の10年経過症例Part2( K さんのケース)
今日は秋晴れの良い天気ですね。
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
もうご存知の方も多いと思いますが、苗穂駅が来月17日から300m程札幌側に移転します。
現在の苗穂駅舎は1935年(昭和10年)に建設されており、昭和の香りが漂う苗穂駅周辺の象徴とも言える
建造物でした。私が開業する前から駅移転の話はありましたので、ようやくという気持ちがある一方、
札幌駅の隣駅という恵まれた立地の中、昭和の風情が残された昔ながらの町並みは、それはそれで昭和男の私
からみれば趣のあるものでしたので一抹の寂しさも拭えません。
現苗穂駅も来年5月、平成から新元号への時代の流れと共に解体され姿を消すことになるようです。

秋晴れの苗穂駅
ちなみに当院も「なえぼ駅前歯科」ではなくなります(病院名は変わりませんが
)。
駅南口(北3東11)からは2丁、距離にして200m程離れてしまいますが(時速4km計算で徒歩3分)、
引き続きご愛顧の程、よろしくお願い申し上げます
さて本日は、平成10年に当時33才で来院されたKさんの破折歯接着保存治療のお話をさせていただきます。
Kさんの治療は、当院HP、破折歯接着保存例(治療例3)にも掲載されていますが、初診時のレントゲン写真と
口腔内写真の赤矢印部分に、金属ポスト先端に至るU字型の歯根破折を認めました。
また青矢印のところには、埋伏している犬歯とそれに接している歯根部に外部吸収(穿孔)を認めました。
青矢印の先には穿孔部から増殖した歯肉が見えています。


この2本のうちどちらかでも残せないとブリッジ自体ができなくなり、Kさんは33才という若さで義歯を装着しなければ
なりませんでした。
当時はインプラントをまだ行っていませんでしたが、仮に両歯を抜歯してインプラントにするにしても、上顎洞底までの
骨の高さがかなり不足していますので、右上奥にサイナースリフト(上顎洞底挙上術)による骨造成手術を行った後、
あらためて4本くらいのインプラントを埋入する手術を行わなければ、インプラントによるブリッジはできないケースです。
何とかうまくブリッジができないものかと考え、まずは埋伏している犬歯を抜歯し、その後、歯周外科処置にて
穿孔部の封鎖と破折部分の接着修復処置を行いました。両歯の保存処置には接着性、生体親和性、耐久性に優れた
スーパーボンドを使用しました。
初診から12年後の同部のレントゲン写真と口腔内写真です。


7年ぶりの再来で、さすがにブリッジは変色していましたが(保険の硬質レジンを使用)、破折線部は元々そこが
破折していたとは全くわからない程、深い歯周ポケットも生じることなく維持されていました。
Kさんは平成27年からしばらく来院されていませんが、破折歯の接着保存治療を行い保存に努めたことで、
33才から50才までの少なくとも17年間は右上を義歯にせず過ごすことができました。
平成10年の初診時、保存は不可能と切り捨てていたら、今頃もしかしたら義歯の鉤歯(バネがかかる歯)となる
右上奥歯や左上の前歯にも負担がかかって更なる抜歯を招いたかもしれません。
ところで、先日過去ブログ「破折リーマー(根管治療の器具)が問題となっていた2症例」
http://naebohonobono.blog.fc2.com/blog-entry-101.html に掲載した患者Yさんが7年ぶりに
来院されました。
嬉しかったな~。
破折リーマーを除去して保存に努めた歯は、処置後17年経過していますが無事でした。

当時20代だったYさんも40才になっていましたが、娘さんもすくすく成長され、あらためて母娘共々、プラーク
コントロールの大切さをお話させていただきました。今後は大切な娘さんの歯を虫歯にさせないよう、春、夏、冬
の休みごとに検診に来院されると共に、Yさんご自身も40代となり、これからのご自身の人生にとって大切な歯を
できるだけ守れるよう、検診にきていただけたらと思います。
Kさんもまた当院にご来院いただけることを心よりお待ちしています。
当院に来院される患者さんの歯が長期に渡って健康に維持されることで、口腔健康を通して患者さんの生活、
ひいては人生にささやかながら貢献できることを願って止みません
最後になりますが、次回のブログはつい先日治療終了となったKさんの治療例をアップ予定です。
Kさんは歯の破折を主訴に来院されました。
割れている歯に対して破折歯接着保存治療を行うと共に、歯を守るためにインプラントも行っています。
次回もぜひこの「なえぼほのぼのブログ」をご覧ください。

苗穂駅前 秋の一風景
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
もうご存知の方も多いと思いますが、苗穂駅が来月17日から300m程札幌側に移転します。
現在の苗穂駅舎は1935年(昭和10年)に建設されており、昭和の香りが漂う苗穂駅周辺の象徴とも言える
建造物でした。私が開業する前から駅移転の話はありましたので、ようやくという気持ちがある一方、
札幌駅の隣駅という恵まれた立地の中、昭和の風情が残された昔ながらの町並みは、それはそれで昭和男の私
からみれば趣のあるものでしたので一抹の寂しさも拭えません。
現苗穂駅も来年5月、平成から新元号への時代の流れと共に解体され姿を消すことになるようです。

秋晴れの苗穂駅
ちなみに当院も「なえぼ駅前歯科」ではなくなります(病院名は変わりませんが

駅南口(北3東11)からは2丁、距離にして200m程離れてしまいますが(時速4km計算で徒歩3分)、
引き続きご愛顧の程、よろしくお願い申し上げます

さて本日は、平成10年に当時33才で来院されたKさんの破折歯接着保存治療のお話をさせていただきます。
Kさんの治療は、当院HP、破折歯接着保存例(治療例3)にも掲載されていますが、初診時のレントゲン写真と
口腔内写真の赤矢印部分に、金属ポスト先端に至るU字型の歯根破折を認めました。
また青矢印のところには、埋伏している犬歯とそれに接している歯根部に外部吸収(穿孔)を認めました。
青矢印の先には穿孔部から増殖した歯肉が見えています。


この2本のうちどちらかでも残せないとブリッジ自体ができなくなり、Kさんは33才という若さで義歯を装着しなければ
なりませんでした。
当時はインプラントをまだ行っていませんでしたが、仮に両歯を抜歯してインプラントにするにしても、上顎洞底までの
骨の高さがかなり不足していますので、右上奥にサイナースリフト(上顎洞底挙上術)による骨造成手術を行った後、
あらためて4本くらいのインプラントを埋入する手術を行わなければ、インプラントによるブリッジはできないケースです。
何とかうまくブリッジができないものかと考え、まずは埋伏している犬歯を抜歯し、その後、歯周外科処置にて
穿孔部の封鎖と破折部分の接着修復処置を行いました。両歯の保存処置には接着性、生体親和性、耐久性に優れた
スーパーボンドを使用しました。
初診から12年後の同部のレントゲン写真と口腔内写真です。


7年ぶりの再来で、さすがにブリッジは変色していましたが(保険の硬質レジンを使用)、破折線部は元々そこが
破折していたとは全くわからない程、深い歯周ポケットも生じることなく維持されていました。
Kさんは平成27年からしばらく来院されていませんが、破折歯の接着保存治療を行い保存に努めたことで、
33才から50才までの少なくとも17年間は右上を義歯にせず過ごすことができました。
平成10年の初診時、保存は不可能と切り捨てていたら、今頃もしかしたら義歯の鉤歯(バネがかかる歯)となる
右上奥歯や左上の前歯にも負担がかかって更なる抜歯を招いたかもしれません。
ところで、先日過去ブログ「破折リーマー(根管治療の器具)が問題となっていた2症例」
http://naebohonobono.blog.fc2.com/blog-entry-101.html に掲載した患者Yさんが7年ぶりに
来院されました。
嬉しかったな~。
破折リーマーを除去して保存に努めた歯は、処置後17年経過していますが無事でした。

当時20代だったYさんも40才になっていましたが、娘さんもすくすく成長され、あらためて母娘共々、プラーク
コントロールの大切さをお話させていただきました。今後は大切な娘さんの歯を虫歯にさせないよう、春、夏、冬
の休みごとに検診に来院されると共に、Yさんご自身も40代となり、これからのご自身の人生にとって大切な歯を
できるだけ守れるよう、検診にきていただけたらと思います。
Kさんもまた当院にご来院いただけることを心よりお待ちしています。
当院に来院される患者さんの歯が長期に渡って健康に維持されることで、口腔健康を通して患者さんの生活、
ひいては人生にささやかながら貢献できることを願って止みません

最後になりますが、次回のブログはつい先日治療終了となったKさんの治療例をアップ予定です。
Kさんは歯の破折を主訴に来院されました。
割れている歯に対して破折歯接着保存治療を行うと共に、歯を守るためにインプラントも行っています。
次回もぜひこの「なえぼほのぼのブログ」をご覧ください。

苗穂駅前 秋の一風景
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はじめまして!歯根破折で検索し、こちらのHPにたどり着きました。
今まで見た歯科サイトの情報では、再植した破折接着歯は歯根膜の損傷が大きいため、一見成功したように見えても、その後徐々に歯根吸収が起き、10年もすれば自然脱落するものだとありました。
しかもそれは免疫力が再植歯を異物とみなし、排除する自然の働きなので防ぎようがないとも…。
ところが先生の症例では、10年で脱落どころか20年近く保っていらっしゃいます。
何か特殊な方法でもなさっていらっしゃるのでしょうか?
ちなみにこちらの素人考えとしては、歯周病治療で行われている歯根膜再生を再植歯にも行うことは出来ないのかな?と思いました。
今まで見た歯科サイトの情報では、再植した破折接着歯は歯根膜の損傷が大きいため、一見成功したように見えても、その後徐々に歯根吸収が起き、10年もすれば自然脱落するものだとありました。
しかもそれは免疫力が再植歯を異物とみなし、排除する自然の働きなので防ぎようがないとも…。
ところが先生の症例では、10年で脱落どころか20年近く保っていらっしゃいます。
何か特殊な方法でもなさっていらっしゃるのでしょうか?
ちなみにこちらの素人考えとしては、歯周病治療で行われている歯根膜再生を再植歯にも行うことは出来ないのかな?と思いました。
Posted by k at 2022.01.10 00:39 | 編集
kさんコメントありがとうございます。かなり専門的なご質問ですので、本来はevidence baseでお答えすべきと思うのですが、あくまで10年以上前から現在まで300~400症例を行った私の臨床実感としてお答えさせていただきますのでご了承ください(長文で失礼します)。5年生存率、10年生存率を上げるためには、①術前の診査、診断をできるだけ正確に行う。適応症を見極める。歯根膜のダメージ(損傷)が大きい陳旧例の場合は、術後に起こり得る問題点を最初に明示しておき(深い歯周ポケットが残存する可能性が高い等)、別な治療の選択肢も提示する②術前の準備(再植の場合はオペのシュミレーション)を作成し、それをスタッフミーティングで共有して細かな部分でのより良い方法等の意見を出してもらう。かなりのケースを共に経験し、破折歯の接着保存治療に精通しているスタッフの存在も大きい③最善と思う治療手順に沿って、歯根膜にできるだけダメージを与えないよう基本に忠実に丁寧に手早く行う。その際必ず歯根膜にはエムドゲインという再生材料を用いている④破折歯の治療は最善を尽くしつつ、破折が起きた原因を探りもっと根本のところにもアプローチする(咬合力のコントロール等)⑤補綴の設計、咬合の与え方、メインテナンスの質、悪化してきた時にリカバリーできる臨床力のどれも必要です。元々歯根膜のダメージが大きい歯の再植はkさんご指摘の通り、一般的にはアンキローシス(骨性癒着→歯根吸収)のリスクをよく言われるのですが、歯根吸収よりもむしろ歯周ポケットを作ることが多く歯根吸収はほとんど経験していません。あとは治療後の経過の中で悪化傾向が見られた時、これをどこまで回復させることができるか(その一法として歯周組織再生療法も応用している)、また適切なメインテナンスにより極力悪化させないようにできるか、どこまで術者が歯の保存にこだわり保存に努めるか(骨を失う前にインプラントや歯牙移植でリカバリーするという考えも当然ある)も歯の生存率に大きく関係してきます。何かこれと言った特殊な方法というものはありません。
Posted by Dr ポン太 at 2022.01.10 02:50 | 編集
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