2019.02.26
7本のインプラントにより咬合の再構築を行ったKさんのケース(前編)
3月まであともう少しですね。
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
最近札幌も春を感じさせる穏やかな日が多くなり雪解けが進んできました。春が待ち遠しい今日この頃です。
ところで先週21日の夜は、病院でいつものように仕事をしていたところ突然大きな揺れが~~
。
本当にびっくりしました。
震度4程度だったと思うのですが、札幌にきて40年、昨年の震度5弱を経験するまでは、 2003年の釧路沖で発生した
地震(M8.0)による震度4が過去最大でしたので、大きな揺れは本当に恐怖です。
今回は昨年9月に起きた北海道胆振東部地震(北海道で初めて震度7を記録)の余震とのことですが、もう半年近く経っている
のにまだ予断を許さないのでしょうかね~。
さて皆様、今、北海道胆振東部地震に関連してCCSが密かに話題になっていることをご存知でしょうか?
CCSって何?と思われる方もおられると思いますが、私も実は今回初めて知りました。
CCSとはCarbon dioxide Capture and Storageの略であり、二酸化炭素(CO2)の回収、貯留を意味しています。
即ち、CCSは工場や発電所などから発生するCO2を大気放散する前に回収し、地中貯留に適した地層まで運び、長期間に
わたり安定的に貯留する技術で、CO2の早期大規模削減が期待できる地球温暖化対策の切り札なのです(日本CCS調査
株式会社HPより)。
実は、今回の震源地の近くに苫小牧CCS(2016年4月から開始)があり、以前から一部の研究者の間では、苫小牧近くで
地震が起きる可能性が懸念されていたことを知りました。
米国スタンフォード大学でも2012年にCCSは地震発生につながる可能性が高いという論文を出しており、国内で最初の
実証実験場となった新潟県長岡市においても、圧入開始から1年を過ぎた2004年10月、新潟県中越地震(M6.8)が発生。
その後2007年7月にも新潟県中越沖地震(M6.8)が発生しており、震源地はいずれも長岡市の実験場から約20kmと
近い場所でした(圧入期間は2003年~2005年にかけての18ヵ月)。
苫小牧市においても圧入開始から2年5ヵ月で北海道胆振東部地震が発生し(震源地から30km)、その後中止していた
実験を2月19日から開始したばかりの21日に再び今回の地震ですので、ますます信憑性がありますよね。

ちなみにこれまで日本において、新潟県長岡市、秋田県湯沢市(旧雄勝町)、福島県いわき市、北海道苫小牧市、北九州市で
CCSの圧入実験が行われているようで、最後の北九州市以外はすべて地震が起きています。東北大震災の後、いわき市での
圧入が中止されたことはこれまでほとんど報道されておりません。その後、実験場は苫小牧市に移り、今回、一部の研究者の
予言通り、北海道胆振東部地震が起こりました。
北九州市でも現在本格事業が進行中とのこと、一部の噂で次の地震は北九州市と言われているとのことです。
もしかしたらCCSは日本のような地震国(地震が多い国ランキングで世界第二位)には不向きなのかもしれません。
勿論、科学的な調査も行われており、昨年の北海道胆振東部地震においても、日本CCS調査株式会社では「地震の震源は
貯留地点より水平距離で約31km離れた胆振地方中東部の深度37kmで発生しております(深さを考慮した直線距離で
約47km)。実際の二酸化炭素が圧入された地層と地震の震源が位置する地層とは連続性がなく、二酸化炭素の圧入による
影響が本地震の震源まで及んだとは考えられません」と発表していますが、実際のところどうなのでしょうか。
地球温暖化防止に向けて、このCCS調査株式会社の事業は経産省お墨付きの国家的プロジェクトですので、願わくば原発の
安全神話が間違いであったような轍は二度と踏まないでいただきたいものです。CCSと地震との関連性に関しては、今後の
続報が待たれるところです。
さて、話がようやく本題にきました(前置きが長くてすいません)。
今回は2016年11月、右下の前歯がグラグラして痛いとのことで、当院の患者さんからのご紹介で来院されたKさんの
治療経過を2回にわけてお話しさせていただきます。
Kさんの初診時のレントゲン写真と主訴であった右下犬歯の状態です。


適切な歯周治療がなされないまま隣接歯と固定されており、レントゲンをお撮りしたところすでに根尖までぐるりと
骨がなくなっていました
固定している隣接歯にまでその影響が波及しており、右下前歯(2番)も歯根長の3/4くらいまで骨吸収していました
(写真上のレントゲン参照)。
ひとまず固定を除去、グラグラの犬歯の歯冠部をカット(自然挺出)して、犬歯部分を人工歯にて補修しました。
Kさんには犬歯の現状を説明し、自然脱落してくる可能性が高いことをお伝えした上で、歯肉がかなり腫れていました
ので抗生剤の投薬を行いました。
次回来院時に撮影した口腔内の状態です。右下犬歯は予想した通り自然脱落していました。

歯肉の腫れが強く、プラークの付着も多く見られ、左上(向かって右上)の犬歯、小臼歯歯頚部に見られる楔状欠損(右上小臼歯
歯頚部にも見られます)、犬歯切縁部の咬耗、右下犬歯の自然脱落、左下5の歯根破折、左上大臼歯部の根分岐部病変の
状態を考えますと、プラークによる歯周病の進行に咬合力(咬合性外傷)がリスク因子として影響している口腔内と思われました。
左上下臼歯部の口腔内と左上大臼歯部のCTです。

左下5は歯根破折を起こしており(初診時のレントゲンで根尖に至る歯周ポケットを認める)、頬側歯肉の赤矢印部分に瘻孔
(膿の排出路)を認めました。

また初診時デンタルレントゲン写真で根分岐部病変が進行していた左上大臼歯部をCTで詳しく診たところ、ほとんど根の先端
部に骨支持が残っていないことがわかりました。
従って治療後の歯の残存状態は以下のレントゲンの状況が予想されました。

9歯の欠損が予想されましたがKさんは入れ歯を希望されませんでしたので、まずは残っているご自身の歯の歯周治療を
しっかり行った上で、9歯の欠損部分を7本のインプラントにより再構築していく治療計画を立てました(Kさんの場合は、
左下5の歯根破折歯を接着保存して6、7にインプラントではなく、抜歯して5、7にインプラントによるブリッジを考えました)。
これまで歯周治療のご経験がなく、ブラッシングもササっとしか磨いてこられなかったKさんですが、担当衛生士の働きかけ
により、ブラッシング時間も長くかけられるようになりました。
初診から4ヵ月後、歯周基本治療終了時の口腔内です。
初診時の写真と比較し、歯肉の炎症もプラークの付着もかなり改善してきております。

ここからようやく歯周外科処置とインプラント治療を行うこととしました。
この時点で左上下の奥歯はまだ抜歯処置を行っておらず、臼歯部の噛めるところを確保しながら、Kさんのお仕事の
スケジュールに合わせて綿密にインプラントの治療計画を立てていきました。自然脱落した右下犬歯部には骨がありません
でしたので、ここはまずGBRにて確実に骨造成を行った後、インプラントの埋入をと考えました(根分岐部病変がかなり
進行していた左上6、7部にも骨造成が必要でした)。
更にインプラントの埋入を予定していた右上7、6間に上顎洞瘻(骨の中央部に上顎洞と交通している骨欠損部を認める)が
あることがわかり、これも埋入時にはやっかいな存在となりました。

右上7、6欠損中央部に見られた上顎洞瘻
ちなみにこの上顎洞瘻ですが、私の親友で某大学歯科口腔外科教授のAくんの話では、元々Kさんに生まれつき存在していた
というより、同部の大臼歯を抜歯した際、上顎洞底の粘膜が引っ張られた可能性があるのではないかということでした。
単純抜歯でこういうことも起こり得るのか~と(おそらくKさんの右上大臼歯は左上のように歯根が長く、一部の歯根が上顎洞
粘膜と接していたのではないかと推測)あらためて思いました。
自院の患者さんの口腔外科的な専門性を要する治療等に関しては、何人かの口腔外科の専門医とタイアップしており、
診断や処置方針に悩む時、口腔内写真やレントゲン写真をメールに添えて相談することもあります。特にAくんの存在は大きく、
教授職で多忙にもかかわらず、何かと細かな相談をさせてもらっています(細かくこだわるのは、患者さんに対して自己のできる
ことは最善を尽くすというのが担当医としての責務だと考えているからです)。
ちなみに先週、堀ちえみさんが11時間に渡る舌ガン(ステージ4)のオペを無事終了したというニュースが流れました。
頚部リンパ節と舌の60%を切除し、大腿皮弁による再建手術を行ったとのこと、東大もしくは順天堂大学での手術という話も
ありますが、30年も診療をしておりますと稀に悪性腫瘍を疑う粘膜病変に遭遇することがあります(口腔癌は癌全体から
みると4%程度と少ないのですが)。
前癌病変としての舌の白板症、歯肉の紅板症(私が遭遇したケースは完全に癌化していました)、舌、硬口蓋、下顎歯肉の
扁平上皮癌、肺癌の顎骨転移。また前日飲みすぎたら翌日下あごが腫れたとのことで来院され、歯とは全く関係がなかった
ので顎下型ラヌーラ(ガマ腫)もしくは側頚嚢胞を疑って口腔外科を紹介したところ、悪性リンパ腫であったこともありました。
堀ちえみさんも夏頃、小さな口内炎を自覚し、9月にはかかりつけの歯科医院さんを受診したにもかかわらず、担当歯科医師は
口内炎を疑わず薬を出した挙句、なかなか治らないということでその後レーザー治療まで行い、結果、初発症状から半年、
舌ガンは放置されてしまいました。どうして口腔外科の専門病院をもっと早く紹介できなかったのか、その責任は重いと思い
ます。
また話がそれて長くなってしましました
今日はここまでとさせていただき、次回この続きをお話ししたいと思います。ご期待ください
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
最近札幌も春を感じさせる穏やかな日が多くなり雪解けが進んできました。春が待ち遠しい今日この頃です。
ところで先週21日の夜は、病院でいつものように仕事をしていたところ突然大きな揺れが~~

本当にびっくりしました。
震度4程度だったと思うのですが、札幌にきて40年、昨年の震度5弱を経験するまでは、 2003年の釧路沖で発生した
地震(M8.0)による震度4が過去最大でしたので、大きな揺れは本当に恐怖です。
今回は昨年9月に起きた北海道胆振東部地震(北海道で初めて震度7を記録)の余震とのことですが、もう半年近く経っている
のにまだ予断を許さないのでしょうかね~。
さて皆様、今、北海道胆振東部地震に関連してCCSが密かに話題になっていることをご存知でしょうか?
CCSって何?と思われる方もおられると思いますが、私も実は今回初めて知りました。
CCSとはCarbon dioxide Capture and Storageの略であり、二酸化炭素(CO2)の回収、貯留を意味しています。
即ち、CCSは工場や発電所などから発生するCO2を大気放散する前に回収し、地中貯留に適した地層まで運び、長期間に
わたり安定的に貯留する技術で、CO2の早期大規模削減が期待できる地球温暖化対策の切り札なのです(日本CCS調査
株式会社HPより)。
実は、今回の震源地の近くに苫小牧CCS(2016年4月から開始)があり、以前から一部の研究者の間では、苫小牧近くで
地震が起きる可能性が懸念されていたことを知りました。
米国スタンフォード大学でも2012年にCCSは地震発生につながる可能性が高いという論文を出しており、国内で最初の
実証実験場となった新潟県長岡市においても、圧入開始から1年を過ぎた2004年10月、新潟県中越地震(M6.8)が発生。
その後2007年7月にも新潟県中越沖地震(M6.8)が発生しており、震源地はいずれも長岡市の実験場から約20kmと
近い場所でした(圧入期間は2003年~2005年にかけての18ヵ月)。
苫小牧市においても圧入開始から2年5ヵ月で北海道胆振東部地震が発生し(震源地から30km)、その後中止していた
実験を2月19日から開始したばかりの21日に再び今回の地震ですので、ますます信憑性がありますよね。

ちなみにこれまで日本において、新潟県長岡市、秋田県湯沢市(旧雄勝町)、福島県いわき市、北海道苫小牧市、北九州市で
CCSの圧入実験が行われているようで、最後の北九州市以外はすべて地震が起きています。東北大震災の後、いわき市での
圧入が中止されたことはこれまでほとんど報道されておりません。その後、実験場は苫小牧市に移り、今回、一部の研究者の
予言通り、北海道胆振東部地震が起こりました。
北九州市でも現在本格事業が進行中とのこと、一部の噂で次の地震は北九州市と言われているとのことです。
もしかしたらCCSは日本のような地震国(地震が多い国ランキングで世界第二位)には不向きなのかもしれません。
勿論、科学的な調査も行われており、昨年の北海道胆振東部地震においても、日本CCS調査株式会社では「地震の震源は
貯留地点より水平距離で約31km離れた胆振地方中東部の深度37kmで発生しております(深さを考慮した直線距離で
約47km)。実際の二酸化炭素が圧入された地層と地震の震源が位置する地層とは連続性がなく、二酸化炭素の圧入による
影響が本地震の震源まで及んだとは考えられません」と発表していますが、実際のところどうなのでしょうか。
地球温暖化防止に向けて、このCCS調査株式会社の事業は経産省お墨付きの国家的プロジェクトですので、願わくば原発の
安全神話が間違いであったような轍は二度と踏まないでいただきたいものです。CCSと地震との関連性に関しては、今後の
続報が待たれるところです。
さて、話がようやく本題にきました(前置きが長くてすいません)。
今回は2016年11月、右下の前歯がグラグラして痛いとのことで、当院の患者さんからのご紹介で来院されたKさんの
治療経過を2回にわけてお話しさせていただきます。
Kさんの初診時のレントゲン写真と主訴であった右下犬歯の状態です。


適切な歯周治療がなされないまま隣接歯と固定されており、レントゲンをお撮りしたところすでに根尖までぐるりと
骨がなくなっていました

固定している隣接歯にまでその影響が波及しており、右下前歯(2番)も歯根長の3/4くらいまで骨吸収していました
(写真上のレントゲン参照)。
ひとまず固定を除去、グラグラの犬歯の歯冠部をカット(自然挺出)して、犬歯部分を人工歯にて補修しました。
Kさんには犬歯の現状を説明し、自然脱落してくる可能性が高いことをお伝えした上で、歯肉がかなり腫れていました
ので抗生剤の投薬を行いました。
次回来院時に撮影した口腔内の状態です。右下犬歯は予想した通り自然脱落していました。

歯肉の腫れが強く、プラークの付着も多く見られ、左上(向かって右上)の犬歯、小臼歯歯頚部に見られる楔状欠損(右上小臼歯
歯頚部にも見られます)、犬歯切縁部の咬耗、右下犬歯の自然脱落、左下5の歯根破折、左上大臼歯部の根分岐部病変の
状態を考えますと、プラークによる歯周病の進行に咬合力(咬合性外傷)がリスク因子として影響している口腔内と思われました。
左上下臼歯部の口腔内と左上大臼歯部のCTです。

左下5は歯根破折を起こしており(初診時のレントゲンで根尖に至る歯周ポケットを認める)、頬側歯肉の赤矢印部分に瘻孔
(膿の排出路)を認めました。

また初診時デンタルレントゲン写真で根分岐部病変が進行していた左上大臼歯部をCTで詳しく診たところ、ほとんど根の先端
部に骨支持が残っていないことがわかりました。
従って治療後の歯の残存状態は以下のレントゲンの状況が予想されました。

9歯の欠損が予想されましたがKさんは入れ歯を希望されませんでしたので、まずは残っているご自身の歯の歯周治療を
しっかり行った上で、9歯の欠損部分を7本のインプラントにより再構築していく治療計画を立てました(Kさんの場合は、
左下5の歯根破折歯を接着保存して6、7にインプラントではなく、抜歯して5、7にインプラントによるブリッジを考えました)。
これまで歯周治療のご経験がなく、ブラッシングもササっとしか磨いてこられなかったKさんですが、担当衛生士の働きかけ
により、ブラッシング時間も長くかけられるようになりました。
初診から4ヵ月後、歯周基本治療終了時の口腔内です。
初診時の写真と比較し、歯肉の炎症もプラークの付着もかなり改善してきております。

ここからようやく歯周外科処置とインプラント治療を行うこととしました。
この時点で左上下の奥歯はまだ抜歯処置を行っておらず、臼歯部の噛めるところを確保しながら、Kさんのお仕事の
スケジュールに合わせて綿密にインプラントの治療計画を立てていきました。自然脱落した右下犬歯部には骨がありません
でしたので、ここはまずGBRにて確実に骨造成を行った後、インプラントの埋入をと考えました(根分岐部病変がかなり
進行していた左上6、7部にも骨造成が必要でした)。
更にインプラントの埋入を予定していた右上7、6間に上顎洞瘻(骨の中央部に上顎洞と交通している骨欠損部を認める)が
あることがわかり、これも埋入時にはやっかいな存在となりました。

右上7、6欠損中央部に見られた上顎洞瘻
ちなみにこの上顎洞瘻ですが、私の親友で某大学歯科口腔外科教授のAくんの話では、元々Kさんに生まれつき存在していた
というより、同部の大臼歯を抜歯した際、上顎洞底の粘膜が引っ張られた可能性があるのではないかということでした。
単純抜歯でこういうことも起こり得るのか~と(おそらくKさんの右上大臼歯は左上のように歯根が長く、一部の歯根が上顎洞
粘膜と接していたのではないかと推測)あらためて思いました。
自院の患者さんの口腔外科的な専門性を要する治療等に関しては、何人かの口腔外科の専門医とタイアップしており、
診断や処置方針に悩む時、口腔内写真やレントゲン写真をメールに添えて相談することもあります。特にAくんの存在は大きく、
教授職で多忙にもかかわらず、何かと細かな相談をさせてもらっています(細かくこだわるのは、患者さんに対して自己のできる
ことは最善を尽くすというのが担当医としての責務だと考えているからです)。
ちなみに先週、堀ちえみさんが11時間に渡る舌ガン(ステージ4)のオペを無事終了したというニュースが流れました。
頚部リンパ節と舌の60%を切除し、大腿皮弁による再建手術を行ったとのこと、東大もしくは順天堂大学での手術という話も
ありますが、30年も診療をしておりますと稀に悪性腫瘍を疑う粘膜病変に遭遇することがあります(口腔癌は癌全体から
みると4%程度と少ないのですが)。
前癌病変としての舌の白板症、歯肉の紅板症(私が遭遇したケースは完全に癌化していました)、舌、硬口蓋、下顎歯肉の
扁平上皮癌、肺癌の顎骨転移。また前日飲みすぎたら翌日下あごが腫れたとのことで来院され、歯とは全く関係がなかった
ので顎下型ラヌーラ(ガマ腫)もしくは側頚嚢胞を疑って口腔外科を紹介したところ、悪性リンパ腫であったこともありました。
堀ちえみさんも夏頃、小さな口内炎を自覚し、9月にはかかりつけの歯科医院さんを受診したにもかかわらず、担当歯科医師は
口内炎を疑わず薬を出した挙句、なかなか治らないということでその後レーザー治療まで行い、結果、初発症状から半年、
舌ガンは放置されてしまいました。どうして口腔外科の専門病院をもっと早く紹介できなかったのか、その責任は重いと思い
ます。
また話がそれて長くなってしましました

今日はここまでとさせていただき、次回この続きをお話ししたいと思います。ご期待ください

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2019.02.18
中等度~重度歯周炎に罹患していたYさんとの20年(後編)(歯根外部吸収)
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
2月12日、競泳の池江璃花子選手が白血病であることを公表し、世界中に衝撃が走りました。私自身も東京オリンピック
を大いに期待され、健康を絵に書いたようなあの池江選手が白血病って・・・、と本当に驚きました。
些か身内の話になるのですが、今から50年前、充(たかし)伯父様(長兄)が41才の若さで、急性白血病で亡くなりました。
当時、東大理学部の助教授をしており、原子分子物理の研究で、東海村の原子力研究所や東大原子核研究所の大型装置を
使って実験を重ねていたそうです。現在、次兄の平(ひとし)伯父貴以下、父方の兄弟4人は皆健在で、年齢も85才を越えて
きましたので、当時、実験中の被爆であるとか、何かあったのではないかな~と、今なら助かっていたのではないか、そして
日本の物理学会に大きな業績を残されたのではないかと甥として大変残念な思いです。
50年前は不治の病と言われ手の施しようがなかった白血病ですが、その後医学は発達し、近年の急速な治療法の進歩
により、現在、若い世代の白血病は7割以上が治っているとの報告も聞きます。
俳優の渡辺謙さんも1989年、急性骨髄性白血病を発症し、再起はおろか生命も危ぶまれたことがありました。1年間の
闘病生活の後、治療を続けながら復帰され、定期的に入院治療を続けながら経過も良好に見えたのですが、5年後の
1994年に再発。しかしながら、再び俳優として復帰し、その後「ラストサムライ」(2003年)でハリウッドスターの仲間入り
をされ、現在、最初の発病から30年になりますが、お元気でご活躍されています。
池江選手もまずはしっかり治療に専念し、日本の最高の医療スタッフチームの元、一日も早く元気な姿を見せてくれること
を祈っております。そして病気を克服した暁には、やはり競泳選手として復帰し、オリンピックで活躍する姿を見せていただけ
たらな~と切に願っています。
さて本日は、「中等度~重度歯周炎に罹患していたYさんとの20年(後編)(歯根外部吸収)」ということで前回の続きを
お話しさせていただきます。
Yさんは今から20年前の1999年(当時49才)に初診来院され、歯根外部吸収を認めた右上奥の治療を行いました。
「将来的に外部吸収が進んでくると7番は保存できなくなりますが、下に8番がありますので、この歯をうまく利用することが
できます」とお伝えした上で、翌月ブリッジを装着しました。

その後、2015年(65才)までの16年間、前回のブログでお話ししたとおり、その間、何度か歯周病の現状と治療の
必要性をお伝えしたのですが、歯周治療を行わないまま経過してしまい、奥歯でしっかり噛めなくなるまでに重症化して
しまいました。

右下最後臼歯(向かって左下の一番奥の歯)と左上最後臼歯は噛むと垂直的にかなり動揺しており、全体に9~10mmと
深い歯周ポケットを認めました。また左上の奥2歯はぐるっとⅢ度の根分岐部病変を認め、この3歯は保存が危ぶまれる
状態でした。
またYさんは関節リウマチの治療を受けており、主治医に照会したところ、できるだけ休薬は避けてほしいとの要請があり
ましたので、臼歯部は重度の歯周炎でしたが、歯周外科処置は行わず、歯周基本治療のみにて対応していこうと考えました。
16年前にセットした右上奥のブリッジは、49才から65才までの16年間維持されていましたが、7番の外部吸収は進み、
8番(親知らず)は写真にありますように外側に歯冠を出しておりました。

平成27年(2015年)9月から、歯周治療を開始しました。
歯周治療の成功とは、健康な歯周組織を長期に維持することだと考えていますので、そのための大切なポイントが
あります。
① 患者さんご自身による良好なプラークコントロール
歯と歯の間、歯と歯ぐきの間のプラーク(歯垢)を日々きれいに除去すること
私は特に「ブラッシング時間を長く」ということを必ず最初にお話ししています (おおよその目安は1日1回は15分以上)
時間をかけて磨き込まれた歯ぐきは経年的に硬い抵抗性のある歯ぐきへと変化していきます
磨き込まれた硬い歯ぐきはちょっとやそっとのプラークくらいではビクともしません
② 患者さんご自身によるメインテナンスの継続
これも最初のモチベーション時に必ずお話しし、治療中の節目、メインテナンス中にも何度も繰り返し
お話しします
大切な話は最初にできるだけシンプルに伝える、大切な話は繰り返し伝えるということが重要だと
考えているからです
③ 医療側による歯肉縁下の起炎物質の徹底除去
患者さんがどんなにブラッシングを頑張っても、またメインテナンスを継続しても、ここが徹底除去されないと
メインテナンスに通いながら歯周病で歯がなくなっていくということになってしまいます(メインテナンスを継続
したからここまで持ったというのは詭弁です)
④ 医療側による質の高いメインテナンス治療
10年くらいは全く再治療なく経過する患者さんも少なくないのですが、何らかのご事情でメインテナンスの空白期が
生じたり、ブラッシングレベルも皆ピカピカというわけではありませんので、経過の中で歯、歯周組織に悪化が見られた
時(どこが悪化しやすいかという予測と悪化に早く気づくことが大切)、適切な対応によりリカバリーさせなければ
なりません。そこに医療側のレベルの差がはっきり出ます。

歯周病は歳を取ったらなるものではありませんし(白髪になったり、髪が薄くなったりするような加齢変化ではない)、
歳を取ったら歯はなくなっていくものでも決してありません。歯周病は治癒、安定、維持が可能な病気なのです。
1999年の初診来院から2015年までの経過の中で、何度か歯周治療の必要性をご説明してもなかなか歯周治療に
踏み切らなかったYさんでしたが、担当歯科衛生士 I さんの指導の下、まずは時間をかけたブラッシングに励まれ、
その後、I さんによる歯肉縁下の起炎物質(歯石、プラーク、感染セメント質)の除去がなされていったことで、
再来時、歯肉辺縁に見られた赤み(赤いところは歯ぐきに炎症の見られるところです)は少しずつ改善していきました。

2015年再来時の口腔内
あらためて口腔内写真を見てみますと、再来時、Yさんはまずまずのブラッシングであったことがわかります
(プラークはそれ程付いていません)。これまでの歯周治療におけるモチベーション(働きかけ)の効果があったのかも
しれません。しかしながら歯周病は進行し深い歯周ポケットが見られたのは、歯肉縁下の起炎物質が原因と思われます。
Yさんのような進行した歯周病、特に臼歯部の複雑な根分岐部内の徹底除去は、歯周基本治療のみでは困難であるため、
再評価後、確定処置として当院では歯周外科処置を行っています。
しかしながらYさんは前述したように歯周外科処置ができませんでしたので、より時間をかけた丁寧な歯周基本治療を
心掛け、8ヵ月後メインテナンスに移行しました。
2016年5月メインテナンス移行時には、まだ13歯に5~6mmの歯周ポケットが残存していました。
歯周病の進行が著しかった右下奥と左上奥、歯根外部吸収を起こしていた右上奥の治療経過です。


右上奥の矯正的挺出(矯正力で引っぱる処置)は、固定源を同側の手前の歯に持っていくことも考えたのですが、
時間がかかりそうでしたので、対側にアンカースクリューを入れそこを固定源にして挺出させ、おおよそ2ヵ月で手前に少し
寄せながら歯軸を修正しました。その後、7ヵ月間固定を行った後、ブリッジとしました。
ブラケット除去時、歯根周囲の骨は心もとない状態に見えますが、1年8ヵ月後のレントゲンでわかりますように
歯根膜の存在するところまできれいに回復しています。
現在のレントゲン写真です。

残念ながら口腔内写真が撮影されておらず
、次回3月来院時に撮らせていただいたらアップしたいと思います。
メインテナンスの経過の中で、適時、担当衛生士の I さんが歯肉縁下の起炎物質の徹底除去に努めた結果、Yさんの
ブラッシングと相俟って、現在左上奥に2ヵ所、5mmの歯周ポケットを認めるのみとなりました。
またⅢ度の根分岐部病変に罹患していた左上奥2歯は、抜根せず良好に維持されています。
world standard(世界水準、この言葉は私は嫌いなのですが
)において、上顎大臼歯部のⅢ度根分岐部病変は
抜歯してインプラントもしくは保存する場合においても、支えの少ない歯根の抜根(部分的に歯根を抜歯する処置)なのですが、
Yさんの場合は抜根せずそのままメインテナンスできる状態にまで改善しました(そもそも抜根する場合には、再度内科で
休薬しないと処置ができないのですが)。
その理由としては、① 根分岐部内の処置( I さんが行っています)が徹底されていること ②根分岐部における骨欠損
の形(水平的な骨欠損に近いこと、但しYさんの場合は9~10mmの歯周ポケットがありましたので、必ずしも水平的とは
言えないのですが) ③患者さんのブラッシングレベルとメインテナンスの頻度(質も関係) ④歯肉の質(線維性の厚い
歯肉は歯周基本治療に反応が悪く、歯周ポケットが浅くなりにくい)が考えられ、これらの条件が重なった結果と考えています。
1999年、右上奥の歯はかなり歯根外部吸収を起こしていましたので、その時点で抜歯し、矯正治療を提案される先生も
おられるかと思います(抜歯して終わりの場合がほとんどかな
)。
しかしながらその後2015年まで16年間この歯が持ったこと、その間歯周治療はされなかったこと(もしかしたらかなり
歯周病が進行してしまっていたかも)、右上奥のブリッジは結果として65才からの装着となりましたので、ここからの15年、
20年維持できると考えますと、寿命を全うできる可能性も十分あると思います。
この歯は文字通り、持つところまで持たせる歯ではありましたが、Yさんの49才から65才までの16年間、機能してくれました
(結局、20年間で抜歯はこの歯だけです)。
今後もご自身の歯を大切にしながら、勿論お体具合にも十分留意され(歯の健康維持の前提として、お体の健康がしっかり
維持されなければなりませんし、「歯周病は万病の元」と言われるように、あらゆる病気との関連性が示唆されていますので、
歯の健康維持は全身の健康維持にも少なからず貢献するものと思っています)、今後も末永く健康な状態でメインテナンス
にご来院いただけることを願っております。

2月12日、競泳の池江璃花子選手が白血病であることを公表し、世界中に衝撃が走りました。私自身も東京オリンピック
を大いに期待され、健康を絵に書いたようなあの池江選手が白血病って・・・、と本当に驚きました。
些か身内の話になるのですが、今から50年前、充(たかし)伯父様(長兄)が41才の若さで、急性白血病で亡くなりました。
当時、東大理学部の助教授をしており、原子分子物理の研究で、東海村の原子力研究所や東大原子核研究所の大型装置を
使って実験を重ねていたそうです。現在、次兄の平(ひとし)伯父貴以下、父方の兄弟4人は皆健在で、年齢も85才を越えて
きましたので、当時、実験中の被爆であるとか、何かあったのではないかな~と、今なら助かっていたのではないか、そして
日本の物理学会に大きな業績を残されたのではないかと甥として大変残念な思いです。
50年前は不治の病と言われ手の施しようがなかった白血病ですが、その後医学は発達し、近年の急速な治療法の進歩
により、現在、若い世代の白血病は7割以上が治っているとの報告も聞きます。
俳優の渡辺謙さんも1989年、急性骨髄性白血病を発症し、再起はおろか生命も危ぶまれたことがありました。1年間の
闘病生活の後、治療を続けながら復帰され、定期的に入院治療を続けながら経過も良好に見えたのですが、5年後の
1994年に再発。しかしながら、再び俳優として復帰し、その後「ラストサムライ」(2003年)でハリウッドスターの仲間入り
をされ、現在、最初の発病から30年になりますが、お元気でご活躍されています。
池江選手もまずはしっかり治療に専念し、日本の最高の医療スタッフチームの元、一日も早く元気な姿を見せてくれること
を祈っております。そして病気を克服した暁には、やはり競泳選手として復帰し、オリンピックで活躍する姿を見せていただけ
たらな~と切に願っています。
さて本日は、「中等度~重度歯周炎に罹患していたYさんとの20年(後編)(歯根外部吸収)」ということで前回の続きを
お話しさせていただきます。
Yさんは今から20年前の1999年(当時49才)に初診来院され、歯根外部吸収を認めた右上奥の治療を行いました。
「将来的に外部吸収が進んでくると7番は保存できなくなりますが、下に8番がありますので、この歯をうまく利用することが
できます」とお伝えした上で、翌月ブリッジを装着しました。

その後、2015年(65才)までの16年間、前回のブログでお話ししたとおり、その間、何度か歯周病の現状と治療の
必要性をお伝えしたのですが、歯周治療を行わないまま経過してしまい、奥歯でしっかり噛めなくなるまでに重症化して
しまいました。

右下最後臼歯(向かって左下の一番奥の歯)と左上最後臼歯は噛むと垂直的にかなり動揺しており、全体に9~10mmと
深い歯周ポケットを認めました。また左上の奥2歯はぐるっとⅢ度の根分岐部病変を認め、この3歯は保存が危ぶまれる
状態でした。
またYさんは関節リウマチの治療を受けており、主治医に照会したところ、できるだけ休薬は避けてほしいとの要請があり
ましたので、臼歯部は重度の歯周炎でしたが、歯周外科処置は行わず、歯周基本治療のみにて対応していこうと考えました。
16年前にセットした右上奥のブリッジは、49才から65才までの16年間維持されていましたが、7番の外部吸収は進み、
8番(親知らず)は写真にありますように外側に歯冠を出しておりました。

平成27年(2015年)9月から、歯周治療を開始しました。
歯周治療の成功とは、健康な歯周組織を長期に維持することだと考えていますので、そのための大切なポイントが
あります。
① 患者さんご自身による良好なプラークコントロール
歯と歯の間、歯と歯ぐきの間のプラーク(歯垢)を日々きれいに除去すること
私は特に「ブラッシング時間を長く」ということを必ず最初にお話ししています (おおよその目安は1日1回は15分以上)
時間をかけて磨き込まれた歯ぐきは経年的に硬い抵抗性のある歯ぐきへと変化していきます
磨き込まれた硬い歯ぐきはちょっとやそっとのプラークくらいではビクともしません
② 患者さんご自身によるメインテナンスの継続
これも最初のモチベーション時に必ずお話しし、治療中の節目、メインテナンス中にも何度も繰り返し
お話しします
大切な話は最初にできるだけシンプルに伝える、大切な話は繰り返し伝えるということが重要だと
考えているからです
③ 医療側による歯肉縁下の起炎物質の徹底除去
患者さんがどんなにブラッシングを頑張っても、またメインテナンスを継続しても、ここが徹底除去されないと
メインテナンスに通いながら歯周病で歯がなくなっていくということになってしまいます(メインテナンスを継続
したからここまで持ったというのは詭弁です)
④ 医療側による質の高いメインテナンス治療
10年くらいは全く再治療なく経過する患者さんも少なくないのですが、何らかのご事情でメインテナンスの空白期が
生じたり、ブラッシングレベルも皆ピカピカというわけではありませんので、経過の中で歯、歯周組織に悪化が見られた
時(どこが悪化しやすいかという予測と悪化に早く気づくことが大切)、適切な対応によりリカバリーさせなければ
なりません。そこに医療側のレベルの差がはっきり出ます。

歯周病は歳を取ったらなるものではありませんし(白髪になったり、髪が薄くなったりするような加齢変化ではない)、
歳を取ったら歯はなくなっていくものでも決してありません。歯周病は治癒、安定、維持が可能な病気なのです。
1999年の初診来院から2015年までの経過の中で、何度か歯周治療の必要性をご説明してもなかなか歯周治療に
踏み切らなかったYさんでしたが、担当歯科衛生士 I さんの指導の下、まずは時間をかけたブラッシングに励まれ、
その後、I さんによる歯肉縁下の起炎物質(歯石、プラーク、感染セメント質)の除去がなされていったことで、
再来時、歯肉辺縁に見られた赤み(赤いところは歯ぐきに炎症の見られるところです)は少しずつ改善していきました。

2015年再来時の口腔内
あらためて口腔内写真を見てみますと、再来時、Yさんはまずまずのブラッシングであったことがわかります
(プラークはそれ程付いていません)。これまでの歯周治療におけるモチベーション(働きかけ)の効果があったのかも
しれません。しかしながら歯周病は進行し深い歯周ポケットが見られたのは、歯肉縁下の起炎物質が原因と思われます。
Yさんのような進行した歯周病、特に臼歯部の複雑な根分岐部内の徹底除去は、歯周基本治療のみでは困難であるため、
再評価後、確定処置として当院では歯周外科処置を行っています。
しかしながらYさんは前述したように歯周外科処置ができませんでしたので、より時間をかけた丁寧な歯周基本治療を
心掛け、8ヵ月後メインテナンスに移行しました。
2016年5月メインテナンス移行時には、まだ13歯に5~6mmの歯周ポケットが残存していました。
歯周病の進行が著しかった右下奥と左上奥、歯根外部吸収を起こしていた右上奥の治療経過です。


右上奥の矯正的挺出(矯正力で引っぱる処置)は、固定源を同側の手前の歯に持っていくことも考えたのですが、
時間がかかりそうでしたので、対側にアンカースクリューを入れそこを固定源にして挺出させ、おおよそ2ヵ月で手前に少し
寄せながら歯軸を修正しました。その後、7ヵ月間固定を行った後、ブリッジとしました。
ブラケット除去時、歯根周囲の骨は心もとない状態に見えますが、1年8ヵ月後のレントゲンでわかりますように
歯根膜の存在するところまできれいに回復しています。
現在のレントゲン写真です。

残念ながら口腔内写真が撮影されておらず

メインテナンスの経過の中で、適時、担当衛生士の I さんが歯肉縁下の起炎物質の徹底除去に努めた結果、Yさんの
ブラッシングと相俟って、現在左上奥に2ヵ所、5mmの歯周ポケットを認めるのみとなりました。
またⅢ度の根分岐部病変に罹患していた左上奥2歯は、抜根せず良好に維持されています。
world standard(世界水準、この言葉は私は嫌いなのですが

抜歯してインプラントもしくは保存する場合においても、支えの少ない歯根の抜根(部分的に歯根を抜歯する処置)なのですが、
Yさんの場合は抜根せずそのままメインテナンスできる状態にまで改善しました(そもそも抜根する場合には、再度内科で
休薬しないと処置ができないのですが)。
その理由としては、① 根分岐部内の処置( I さんが行っています)が徹底されていること ②根分岐部における骨欠損
の形(水平的な骨欠損に近いこと、但しYさんの場合は9~10mmの歯周ポケットがありましたので、必ずしも水平的とは
言えないのですが) ③患者さんのブラッシングレベルとメインテナンスの頻度(質も関係) ④歯肉の質(線維性の厚い
歯肉は歯周基本治療に反応が悪く、歯周ポケットが浅くなりにくい)が考えられ、これらの条件が重なった結果と考えています。
1999年、右上奥の歯はかなり歯根外部吸収を起こしていましたので、その時点で抜歯し、矯正治療を提案される先生も
おられるかと思います(抜歯して終わりの場合がほとんどかな

しかしながらその後2015年まで16年間この歯が持ったこと、その間歯周治療はされなかったこと(もしかしたらかなり
歯周病が進行してしまっていたかも)、右上奥のブリッジは結果として65才からの装着となりましたので、ここからの15年、
20年維持できると考えますと、寿命を全うできる可能性も十分あると思います。
この歯は文字通り、持つところまで持たせる歯ではありましたが、Yさんの49才から65才までの16年間、機能してくれました
(結局、20年間で抜歯はこの歯だけです)。
今後もご自身の歯を大切にしながら、勿論お体具合にも十分留意され(歯の健康維持の前提として、お体の健康がしっかり
維持されなければなりませんし、「歯周病は万病の元」と言われるように、あらゆる病気との関連性が示唆されていますので、
歯の健康維持は全身の健康維持にも少なからず貢献するものと思っています)、今後も末永く健康な状態でメインテナンス
にご来院いただけることを願っております。

2019.02.11
中等度~重度歯周炎に罹患していたYさんとの20年(前編)(歯根外部吸収)
こんにちは、毎日寒いですね、なえぼ駅前歯科の大村です。
本日は三連休の最終日、朝からニュースでやっていましたが、最強寒波により関東の至る所で雪が降っており、
交通機関にも障害が出ているようです。
皆さん、くれぐれも滑ってけがをしないよう、足元には細心の注意を払って外出してくださいネ
北海道でも先日9日の早朝、十勝(足寄郡)の陸別町で-31.8℃を記録しましたし、札幌も8日には1日中-10℃を
下回るという40年ぶりの寒さとなっており、さっぽろ雪まつりで海外や本州から訪れた観光客も、きっと北海道の寒さを
実感されているのではないかと思います。本日いよいよ最終日。
昨日は、先日6/2(日)に開催される千歳JAL国際マラソンハーフにエントリーしましたので、早速スポーツジムにて
最近さぼっていたランニング&筋トレを行いました。
50才まではあまり衰えを感じなかった筋力も、50才を過ぎてから少しずつ衰えを感じるようになりました。
昔は10kgの米袋も左右の肩にそれぞれひょいひょいっと持ち上げて運んだものでしたが、最近は10kgでも重く感じる
ようになりました。年始には23才になる三男と久しぶりに腕相撲をしたところはじめて負けてしまいました
(尤も私は左利きですが)。
やはり常日頃から、ストレッチをする、筋トレをする、階段の上り下りをする(平地にくらべると登れなくなってきました~
)、
そしてジムや外で走ることを心掛けないと、これから10年以上先、健康な70才を迎えられないな~と思います。
今年は(今年こそ?)体をしっかり絞って走り込み、40代の頃のようにハーフを2時間くらいで走れるようにしたいと思います。
さて本日お話させていただく患者Yさん(初診時49才、女性)は、今から20年前、右上奥のブリッジが外れたとのことで
来院されました。
初診時のレントゲン写真です。

右上奥の歯(7番)の下から親知らず(8番)が頭を出しそうになっており、7番の遠心頬側根の根尖(赤矢印)はすでに外部
吸収による歯根吸収を生じていました。
「将来的に外部吸収が進んでくると7番は保存できなくなりますが、下に8番がありますので、この歯をうまく利用することが
できます」とお伝えした上で、翌月ブリッジを装着しました。その時はここだけの治療を希望されていましたので、歯肉に
腫脹を認めた左上臼歯部だけレントゲン写真を撮影し、歯周病の現状を伝えました。
それから2年後。

今度は左上の前歯が取れたとのことで来院、取れたのは2回目とのこと。根管内には虫歯を認め、金属ポストの適合も
ルーズでしたので再製を勧めました。
またその際、歯周ポケットの深い左右下奥のレントゲン写真も撮影し、再び歯周病の現状を説明しましたが、自覚症状も
なかったため上の前歯の治療のみで治療は終了してしまいました。
その後はしばらく来院がありませんでしたが、2010年、前回来院から10年ぶりに左上奥の歯ぐきが腫れて痛いとの
ことで来院されました。

全顎レントゲン撮影を行ったところ、臼歯部を中心に中等度以上の歯周炎を認めましたので、現状と歯周治療の
必要性をお伝えしましたが、その時も1回のみでの来院で中断となってしまいました。
そこから更に5年後の2015年の来院時には、奥歯でしっかりものが噛めなくなるまでに歯周病は進行しており、
ご自身の歯の将来に不安を感じて歯周治療を希望されました。
下が再来時のレントゲン写真と歯周ポケット検査7mm以上(歯周病が重度)の部位です。

初診から16年が経過し、49才であったYさんは65才となり、歯周病もかなり進行していました。
右下最後臼歯(向かって左下の一番奥の歯)と左上最後臼歯は噛むと垂直的にかなり動揺しており、全体に9~10mm
と深い歯周ポケットを認めました。また左上の奥2歯はぐるっとⅢ度の根分岐部病変を認め、この3歯は保存が危ぶまれる
状態でした。
またYさんは関節リウマチの治療を受けており、主治医に照会したところ、できるだけ休薬は避けてほしいとの要請が
ありましたので、臼歯部は重度の歯周炎でしたが、歯周外科処置は行わず、歯周基本治療のみにて対応していこうと
考えました。
16年前にセットした右上奥のブリッジは、49才から65才までの16年間維持されていましたが、7番の外部吸収は進み、
8番(親知らず)は写真にありますように挺出し、外側に歯が出てきておりました。

さてその後どのように治療が行われ、初診から20年後の現在、Yさんの口腔内はどのようになっているのか。
この続きはまた次回にさせていただきたいと思います。
本日の札幌は久しぶりに穏やかな冬晴れの天気ですので、これから午後はぶらっ~と出かけようと思っています
(いつも仕事に追われているので
、仕事が溜まっていないのは久し振りかな~)。
あ、今日は北海道歯科医師会館で北海道歯科産業さんのデンタルショーがある日でした
常日頃お世話になっている営業の I さんも1日仕事で出ていると言っていたので、まずは顔を出さなければ(笑)。
本日は三連休の最終日、朝からニュースでやっていましたが、最強寒波により関東の至る所で雪が降っており、
交通機関にも障害が出ているようです。
皆さん、くれぐれも滑ってけがをしないよう、足元には細心の注意を払って外出してくださいネ

北海道でも先日9日の早朝、十勝(足寄郡)の陸別町で-31.8℃を記録しましたし、札幌も8日には1日中-10℃を
下回るという40年ぶりの寒さとなっており、さっぽろ雪まつりで海外や本州から訪れた観光客も、きっと北海道の寒さを
実感されているのではないかと思います。本日いよいよ最終日。
昨日は、先日6/2(日)に開催される千歳JAL国際マラソンハーフにエントリーしましたので、早速スポーツジムにて
最近さぼっていたランニング&筋トレを行いました。
50才まではあまり衰えを感じなかった筋力も、50才を過ぎてから少しずつ衰えを感じるようになりました。
昔は10kgの米袋も左右の肩にそれぞれひょいひょいっと持ち上げて運んだものでしたが、最近は10kgでも重く感じる
ようになりました。年始には23才になる三男と久しぶりに腕相撲をしたところはじめて負けてしまいました

(尤も私は左利きですが)。
やはり常日頃から、ストレッチをする、筋トレをする、階段の上り下りをする(平地にくらべると登れなくなってきました~

そしてジムや外で走ることを心掛けないと、これから10年以上先、健康な70才を迎えられないな~と思います。
今年は(今年こそ?)体をしっかり絞って走り込み、40代の頃のようにハーフを2時間くらいで走れるようにしたいと思います。
さて本日お話させていただく患者Yさん(初診時49才、女性)は、今から20年前、右上奥のブリッジが外れたとのことで
来院されました。
初診時のレントゲン写真です。

右上奥の歯(7番)の下から親知らず(8番)が頭を出しそうになっており、7番の遠心頬側根の根尖(赤矢印)はすでに外部
吸収による歯根吸収を生じていました。
「将来的に外部吸収が進んでくると7番は保存できなくなりますが、下に8番がありますので、この歯をうまく利用することが
できます」とお伝えした上で、翌月ブリッジを装着しました。その時はここだけの治療を希望されていましたので、歯肉に
腫脹を認めた左上臼歯部だけレントゲン写真を撮影し、歯周病の現状を伝えました。
それから2年後。

今度は左上の前歯が取れたとのことで来院、取れたのは2回目とのこと。根管内には虫歯を認め、金属ポストの適合も
ルーズでしたので再製を勧めました。
またその際、歯周ポケットの深い左右下奥のレントゲン写真も撮影し、再び歯周病の現状を説明しましたが、自覚症状も
なかったため上の前歯の治療のみで治療は終了してしまいました。
その後はしばらく来院がありませんでしたが、2010年、前回来院から10年ぶりに左上奥の歯ぐきが腫れて痛いとの
ことで来院されました。

全顎レントゲン撮影を行ったところ、臼歯部を中心に中等度以上の歯周炎を認めましたので、現状と歯周治療の
必要性をお伝えしましたが、その時も1回のみでの来院で中断となってしまいました。
そこから更に5年後の2015年の来院時には、奥歯でしっかりものが噛めなくなるまでに歯周病は進行しており、
ご自身の歯の将来に不安を感じて歯周治療を希望されました。
下が再来時のレントゲン写真と歯周ポケット検査7mm以上(歯周病が重度)の部位です。

初診から16年が経過し、49才であったYさんは65才となり、歯周病もかなり進行していました。
右下最後臼歯(向かって左下の一番奥の歯)と左上最後臼歯は噛むと垂直的にかなり動揺しており、全体に9~10mm
と深い歯周ポケットを認めました。また左上の奥2歯はぐるっとⅢ度の根分岐部病変を認め、この3歯は保存が危ぶまれる
状態でした。
またYさんは関節リウマチの治療を受けており、主治医に照会したところ、できるだけ休薬は避けてほしいとの要請が
ありましたので、臼歯部は重度の歯周炎でしたが、歯周外科処置は行わず、歯周基本治療のみにて対応していこうと
考えました。
16年前にセットした右上奥のブリッジは、49才から65才までの16年間維持されていましたが、7番の外部吸収は進み、
8番(親知らず)は写真にありますように挺出し、外側に歯が出てきておりました。

さてその後どのように治療が行われ、初診から20年後の現在、Yさんの口腔内はどのようになっているのか。
この続きはまた次回にさせていただきたいと思います。
本日の札幌は久しぶりに穏やかな冬晴れの天気ですので、これから午後はぶらっ~と出かけようと思っています
(いつも仕事に追われているので

あ、今日は北海道歯科医師会館で北海道歯科産業さんのデンタルショーがある日でした

常日頃お世話になっている営業の I さんも1日仕事で出ていると言っていたので、まずは顔を出さなければ(笑)。
2019.02.07
歯周治療を希望して来院されたNさんとの10年
毎日本当に雪が降りますね。
皆様いかがお過ごしですか、なえぼ駅前歯科の大村です。
今週4日(月)からさっぽろ雪まつりが開催されていますが、今年は記念すべき第70回ということで、1950年の第1回
(当時第1回とは言いませんでした)、地元の中、高校生が雪像を大通公園に設置したことをきっかけとして始まった
ということがニュースでも紹介されていました。
1955年から自衛隊が参加して大規模な雪像作りとなり、1960年くらいからは本州の観光客も増えて、札幌の雪まつりは
日本の雪まつりへと発展していったそうです(さっぽろ雪まつり公式サイト「さっぽろ雪まつりの歴史」から一部引用)。
私が生まれたのもちょうどこの頃で、自衛官であった父(東京出身)が富士学校からの最初の赴任地として北海道を希望
した理由の一つが「雪まつりの雪像を作りたかったから」??というのを聞いたこともあり、当時札幌の雪まつりで雪像を
作るというのは、本州の自衛官にとっては憧れであったようです(ちなみに父は札幌には赴任できず名寄となり(笑)、
私は名寄で出生しました)。

大坂なおみ選手の雪像
話は変わりますが、先日、今年初めての「ランチ会」を行いました。
今回の場所は手堅く?、JRタワー35階のスカイレストラン「丹頂」で、和食の二段弁当をいただいてきました~。
以前にもこのブログで度々ご紹介していますが、当院では2ヵ月に1回「ランチ会」を行っており、当日は朝9:30から
2時間だけ診療を行った後、皆で食事に出かけ、病院に帰ってからは17:00までお休みタイムとしています
(尤も私はこの時間、普段から溜まりがちな仕事を一気にやっていますが、笑)。
恒例となった自撮り写真(前回はスタッフの I さんが自前の自撮り棒を持参していました、笑)、お品書きと実際に
いただいた料理です。

現在糖質オフを心掛けている私ですが、ヘルシーなメニューにもかかわらず、お代わり自由な牛蒡の炊き込みご飯を
追加で食べてしまいました
次回は4月の予定で、今度はどのようなお店を探してくるのか密かに楽しみにしています。
今年は(近場でも良いので)社員旅行に行きたいな~とスタッフのFさんが言っておりますので(笑)、6月22日(土)、23(日)の
日本臨床歯周病学会年次大会(於札幌コンベンションセンター)後の反省会も兼ねて
、計画できたらと思っているところです。
さて本日は歯ぐきが弱く、歯周病治療を希望とのことで、2009年1月に来院されたNさんのお話をさせていただきます。
これまで通院していた歯科医院もあったそうですが、娘婿さんの「ここがお勧め」という当院の評判を聞いて来たとのことでした。
Nさんの初診時のレントゲンと口腔内写真です。


口腔内はプラークの付着もほとんどなく、1日2回、1回15分くらいブラッシングを行っているとのことでしたが、
右上、左上、左下の奥歯はかなり歯周病が進行しており、右下奥も延長ブリッジの支台歯である奥の歯(5番)に垂直性の
骨吸収を認めました。
右上、左上、左下奥の初診時と治療終了時の状態です。

右下奥の延長ブリッジは5番にかかる負担が大きいと判断し、6部はインプラントで対応しました。
また前歯部は右下1番が唇側に出ていて、右上2①(失活歯)を突き上げていましたので、 矯正治療により前歯部のバランス
を整え、歯間部の隙間を閉鎖させました。
初診から10年後(治療終了から9年後)の現在です。



補綴処置は一部初診時のままのところもありますが、再治療なく経過しています。
初診時歯周病が重度であった右上、左上、左下の奥歯は、77才という年齢によるブラッシングレベルの低下や唾液の量、
質の変化により、初診時と比べるとややプラークの付着を認めますが、概ねメインテナンスを継続されたことで、現在は
健康な歯周組織を維持しています。
メインテナンス期間中の9年間には、体調が不良の時期やそれに伴いブラッシング時間が短くなったり、メインテナンスの
空白期もあって歯周病が悪化した時期もあり、最終的には再度歯周外科処置も行い歯肉縁下のプラークコントロールの
徹底に努めました。
矯正治療を行った前歯部は1年程リテーナーを装着していましたが、現在少し後戻りが見られます。
前回のメインテナンス時、初診から10年問題なく経過していることをお話ししたところ、思いがけずNさんから「先生の
ところに来て良かった。歯がしっかり残っているのが嬉しい」とお褒めの言葉をいただきましたが、私の方こそいろいろ
大変な時期にずっと私を信頼して通ってくださり、本当に感謝しております。
ご旅行が大変お好きなNさんですので、旅先での四季折々の美しい景色を眺めながら、地元の美味しい食材をご自分の
歯でしっかり食べ歩いていただき、いつまでもお元気に来院して下さることを願っております。
Nさんの治療は一見すると地味な治療で、歯周治療も臼歯部はⅢ度の根分岐部病変を抱えてはいたものの、普通に歯周
外科処置にて対応したケースですが、予後の難しい歯を保存して10年トラブルなく維持(まだ治療終了から10年経っては
いませんが
) というのは私のまず最初の目標でもあります。
そこから先、15年、20年という長期の維持は、単に見立てや治療技術だけでなく、治療終了後の炎症と力の適切な
コントロールの継続(そこには患者さん自身の個体差も勿論あると思います)、そしてその継続は医患双方が健康で
互いの信頼関係が続いていかないと成立しません。
最終的にはそこに歯科医療の本質があり、やりがいがあって、「患者さんと長くかかわる歯科医療の実践」というのは
私の最終目標と言えるかもしれませんし、究極の目標は親子二代で診るということになるのかもしれません
最後はとりとめのない話になってしまいましたが、次回は引き続き、中等度~重度の歯周炎患者さんのケースをお話
させていただく予定ですので、またよろしくお付き合いください。
皆様いかがお過ごしですか、なえぼ駅前歯科の大村です。
今週4日(月)からさっぽろ雪まつりが開催されていますが、今年は記念すべき第70回ということで、1950年の第1回
(当時第1回とは言いませんでした)、地元の中、高校生が雪像を大通公園に設置したことをきっかけとして始まった
ということがニュースでも紹介されていました。
1955年から自衛隊が参加して大規模な雪像作りとなり、1960年くらいからは本州の観光客も増えて、札幌の雪まつりは
日本の雪まつりへと発展していったそうです(さっぽろ雪まつり公式サイト「さっぽろ雪まつりの歴史」から一部引用)。
私が生まれたのもちょうどこの頃で、自衛官であった父(東京出身)が富士学校からの最初の赴任地として北海道を希望
した理由の一つが「雪まつりの雪像を作りたかったから」??というのを聞いたこともあり、当時札幌の雪まつりで雪像を
作るというのは、本州の自衛官にとっては憧れであったようです(ちなみに父は札幌には赴任できず名寄となり(笑)、
私は名寄で出生しました)。

大坂なおみ選手の雪像
話は変わりますが、先日、今年初めての「ランチ会」を行いました。
今回の場所は手堅く?、JRタワー35階のスカイレストラン「丹頂」で、和食の二段弁当をいただいてきました~。
以前にもこのブログで度々ご紹介していますが、当院では2ヵ月に1回「ランチ会」を行っており、当日は朝9:30から
2時間だけ診療を行った後、皆で食事に出かけ、病院に帰ってからは17:00までお休みタイムとしています
(尤も私はこの時間、普段から溜まりがちな仕事を一気にやっていますが、笑)。
恒例となった自撮り写真(前回はスタッフの I さんが自前の自撮り棒を持参していました、笑)、お品書きと実際に
いただいた料理です。

現在糖質オフを心掛けている私ですが、ヘルシーなメニューにもかかわらず、お代わり自由な牛蒡の炊き込みご飯を
追加で食べてしまいました

今年は(近場でも良いので)社員旅行に行きたいな~とスタッフのFさんが言っておりますので(笑)、6月22日(土)、23(日)の
日本臨床歯周病学会年次大会(於札幌コンベンションセンター)後の反省会も兼ねて

さて本日は歯ぐきが弱く、歯周病治療を希望とのことで、2009年1月に来院されたNさんのお話をさせていただきます。
これまで通院していた歯科医院もあったそうですが、娘婿さんの「ここがお勧め」という当院の評判を聞いて来たとのことでした。
Nさんの初診時のレントゲンと口腔内写真です。


口腔内はプラークの付着もほとんどなく、1日2回、1回15分くらいブラッシングを行っているとのことでしたが、
右上、左上、左下の奥歯はかなり歯周病が進行しており、右下奥も延長ブリッジの支台歯である奥の歯(5番)に垂直性の
骨吸収を認めました。
右上、左上、左下奥の初診時と治療終了時の状態です。

右下奥の延長ブリッジは5番にかかる負担が大きいと判断し、6部はインプラントで対応しました。
また前歯部は右下1番が唇側に出ていて、右上2①(失活歯)を突き上げていましたので、 矯正治療により前歯部のバランス
を整え、歯間部の隙間を閉鎖させました。
初診から10年後(治療終了から9年後)の現在です。



補綴処置は一部初診時のままのところもありますが、再治療なく経過しています。
初診時歯周病が重度であった右上、左上、左下の奥歯は、77才という年齢によるブラッシングレベルの低下や唾液の量、
質の変化により、初診時と比べるとややプラークの付着を認めますが、概ねメインテナンスを継続されたことで、現在は
健康な歯周組織を維持しています。
メインテナンス期間中の9年間には、体調が不良の時期やそれに伴いブラッシング時間が短くなったり、メインテナンスの
空白期もあって歯周病が悪化した時期もあり、最終的には再度歯周外科処置も行い歯肉縁下のプラークコントロールの
徹底に努めました。
矯正治療を行った前歯部は1年程リテーナーを装着していましたが、現在少し後戻りが見られます。
前回のメインテナンス時、初診から10年問題なく経過していることをお話ししたところ、思いがけずNさんから「先生の
ところに来て良かった。歯がしっかり残っているのが嬉しい」とお褒めの言葉をいただきましたが、私の方こそいろいろ
大変な時期にずっと私を信頼して通ってくださり、本当に感謝しております。
ご旅行が大変お好きなNさんですので、旅先での四季折々の美しい景色を眺めながら、地元の美味しい食材をご自分の
歯でしっかり食べ歩いていただき、いつまでもお元気に来院して下さることを願っております。
Nさんの治療は一見すると地味な治療で、歯周治療も臼歯部はⅢ度の根分岐部病変を抱えてはいたものの、普通に歯周
外科処置にて対応したケースですが、予後の難しい歯を保存して10年トラブルなく維持(まだ治療終了から10年経っては
いませんが

そこから先、15年、20年という長期の維持は、単に見立てや治療技術だけでなく、治療終了後の炎症と力の適切な
コントロールの継続(そこには患者さん自身の個体差も勿論あると思います)、そしてその継続は医患双方が健康で
互いの信頼関係が続いていかないと成立しません。
最終的にはそこに歯科医療の本質があり、やりがいがあって、「患者さんと長くかかわる歯科医療の実践」というのは
私の最終目標と言えるかもしれませんし、究極の目標は親子二代で診るということになるのかもしれません

最後はとりとめのない話になってしまいましたが、次回は引き続き、中等度~重度の歯周炎患者さんのケースをお話
させていただく予定ですので、またよろしくお付き合いください。
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