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2018.11.06

歯周病治療におけるPCR細菌検査と除菌療法 Part1

  皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
今年も残すところあと2ヵ月弱、1年間全力で診療に取り組んできましたが、昨年同様、今年も充実した1年を過ごすことが
できたのは、ひとえに常日頃、私を献身的に支えてくれるスタッフのお陰と本当に感謝しています。
 
本日、今年最後のランチ会を南3条西9丁目にあるフレンチビストロのお店  ヴァンセット ケイ(Vingt-Sept.K)
http://www.vingtseptk.com/)で行いました。

ヴァンセット ケイ

皆の笑顔は私の喜びでもありますので、これからも健康管理には気をつけつつ、「スタッフの満足なくして患者満足は
あり得ない」を院長として肝に命じながら、共に成長していけたらと思っています。

早速ですが、今日は前回のブログでも予告した、歯周病治療におけるPCR細菌検査と除菌療法のお話をさせていただきます。
すでにご存知の方も多いと思いますが、歯周病は歯と歯肉の境目(歯肉溝)に付着したプラーク(歯垢)中の細菌が原因です。
プラーク中には700種類と言われる細菌が存在していますが、その中でも10~20種類の歯周病原性の強い細菌の存在が
明らかになっており、一般的に歯周病治療は「歯肉縁上、縁下のプラークコントロール」をいかに徹底できるかが成功の鍵と
なります。

しかしながら、多くの歯周炎患者(ほとんどの患者さんは40才くらいから徐々に進行していく慢性歯周炎)の中には、全身的
には健康であるにもかかわらず、10代、20代から歯周炎を発症し急速に進行していく、いわゆる侵襲性歯周炎と思われる
患者さんがおられます。

歯周病の分類

侵襲性歯周炎患者の特徴として、家族内集積が見られることが多く、歯周病原性の高いAa菌、Pq菌による感染(細菌学的
要因)や宿主の防御機構の低下、免疫応答の異常(遺伝的要因)、あるいはその両者の複合が指摘されています。


歯周病は細菌と宿主の相互作用により発症する多因子性疾患


             歯周病は細菌と宿主の相互作用により発症する多因子性疾患


このようなごく一部の特殊な歯周炎患者に対しては、プラーク細菌の量をコントロールするのみならず(わずかなプラーク
の付着でも問題となり得る可能性があるため)、質のコントロール、即ち細菌叢を変える(歯周病原性の強いプラーク細菌を
除菌する)ことで、より良い歯周組織の治癒と長期維持が可能になるのではないかと考え、日本の一般臨床医が歯周病原性
細菌のPCR細菌検査を初めて行えるようになった(BML社に委託できるようになった)2000年当初から、当院では主に
侵襲性歯周炎と思われる患者さんに対し、細菌検査と除菌療法を行ってきました。

今日ご紹介する患者さんは平成18年当時、42才のSさんと、同じく平成14年当時、36才のWさんで、お二人とも10年近い
未来院を経て当院に再来院されました。

当時、Sさんは侵襲性歯周炎、Wさんは慢性歯周炎と考えており、Sさんの方が罹患度も高く、進行性もあると考えていました。
同年代の男性、喫煙者、歯周病治療(歯周動的治療)は一旦終了していること、未来院期間中のプラークコントロールは
不十分という共通する条件が多いにもかかわらず、その後の経過は大きく違っています。

それは何故なのか?
侵襲性歯周炎のSさんの病態(原因や発症機序)はどのように考えられるか(歯周病原性の強い細菌の感染が原因?体質?)、
30代以降の侵襲性歯周炎と慢性重度歯周炎の線引きは難しいという話は、次回Part2でさせていただきます 


患者Sさんの初診時
           患者 Sさんの初診時  ×は保存困難なため抜歯、△は部分的に抜根


Sさんは歯周基本治療を終了(概ね歯周動的治療も終了)したあたりで、職場が苗穂から移動となり来院が途絶えました。
初診時の年齢と罹患度の高さから侵襲性歯周炎と考えていましたので、PCR細菌検査を行ったところ、予想していたAa菌、
Pg菌共に感染していることが判明したため、来院が途絶える直前に、アモキシシリン+メトロニダゾールにて除菌療法を
行っていました。

しかしながら、服用中に確か吐き気か下痢の症状が出たとのことでお電話をいただき、結局そのまま?来院が途絶えて
しまったため、最後まで飲み切られたかどうか定かではありませんでした(1週間連続投与を行い、その間、歯周ポケット内
のMIC90(90%の最小発育阻止濃度)を維持することが必須ですので、途中で服用し忘れてしまったり、自己判断で中止
してしまうと効果が発揮できなくなります)。

患者Sさんの10年後の再来時


10年後に突然、前歯が取れたとのお電話があり、驚きと嬉しさの反面、「ああ、やっぱりかなり歯周病が進行してしまった
んだな~」と想像(上の前歯は歯周病の進行で自然脱落したと考えた)。
しかしながら再来時のレントゲンを10年前(初診時)のレントゲンとよく比較しながら診てみると、上顎前歯部と右下
智歯は歯周病ではなくう蝕の進行により保存困難となっており(上顎前歯部は嚢胞も大きくなっていた)、他のすべての
歯の歯周病は・・・!!

その後、2年8ヵ月経過した現在の状態は次回のPart2でご覧いただきます 

一方、Wさんの方ですが、下は平成14年に全顎治療を終了した時のレントゲン写真です。

患者Wさんの治療終了時

当時Wさんは36才でしたので、歯周病に対する罹患度は高く、赤矢印の部位には5~6mmの歯周ポケットも残存して
いたため、引き続き注意しながらメインテナンスしていこうと考えていましたが、何回かメインテナンス来院された後、未来院
となりました。

患者Wさんの再来時(H22年)


8年ぶり、44才時のWさんのレントゲン写真です。36才当時の罹患度から想像していたより歯周病はかなり進行していました。
またそれ程欠損がない(3歯欠損、27歯残存)にもかかわらず、全体に垂直性の骨吸収像を示しており、噛みしめ等の
ブラキシズム、喫煙、仕事のストレスがリスク因子となっているのではないかと考えました。

再来時口腔内写真(H22.4)

再度歯周病治療のモチベーション、ブラッシング指導を行い、全顎を6回に分けて、私自身が浸麻、スケーリング・ルートプレー
ニングを行いました。しかしながら元々痛みにとても弱いWさんは、このあたりで一度お休みしたいということになってしまい、
結局そのまま中断となってしまいました。

そこから更に6年後、H28年にWさんから再びご予約のお電話がありました。

患者Wさんの再来時(H28年)

6年の間、道東に転勤となり、転勤先で5本(×の部位)の抜歯処置を受けたとのことでした・・・

当初は慢性歯周炎と診断していたWさんの14年間の経過における歯周病の進行の速さ、またあらためて問診をお取りすると
実は家族内集積があること、Sさんとの経過の違いなど、歯周病を専門に行っている歯科医師にとっては興味深いものが
あります。

痛みにとても弱く、ご自分の歯に対するあきらめも相俟って、再来院後も治療に積極的になれない状態が2年近く続きました。
その間、Wさんの気持ちに寄り添いながら応急処置にて対応してきましたが、右上奥歯の2本が相次いで自然脱落
今年8月からようやく少しずつ歯周病治療を再開しており、先日WさんもPCR細菌検査を行いました。

さて、ここまで話がかなり長くなってしまいました。
専門的過ぎる話に最後までお付き合いいただきありがとうございます 
この続きは次回のPart2であらためてお話しさせていただくこととし、本日はここまでとさせていただきます。




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Posted at 16:55 | 歯周治療 | COM(0) | TB(0) |