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2016.11.23

第23回「ヨクナール・ミーティング」に参加して

 21日(月)、22日(火)を休診にさせていただき、20日(日)~22日(火)の3日間、湘南国際村センターで、
第23回「ヨクナール・ミーティング」(歯科の勉強会)に参加してきました、なえぼ駅前歯科院長の大村です。

この「ヨクナール」というのは、フランスの精神科医、エミールクーエの「自己暗示」という著作中の
「日々に、あらゆる面で、私はますます良くなっていく(ヨクナール)」という暗示の言葉から取っています。

この勉強会は私がまだ勤務医時代の1994年(今から22年前)、洞爺湖エイペックスにて第1回が行われ、
その後、北海道、東京、長野(愛知)で2年ごとに持ち回りで、途切れることなく毎年開催されています。
これまで北海道では小樽、美瑛、富良野において開催されており、昨年富良野で開催された時の様子は
この「なえぼほのぼのブログ」でもお伝えしました。

朝9:00から夜は12:00過ぎまでずっと勉強会なのですが(^^;、2日目の午後だけはレクリエーションがあり、
今回は貸切バスで鎌倉駅に行き、そこから江ノ電に乗って由比ガ浜へ。由比ガ浜から歩いて長谷寺へ行き、
更に歩いて大仏を見学した後、お迎えバスに乗車して鶴岡八幡宮で下車。そこで1時間程自由行動となり、
夕方バスで湘南国際センターまで戻るというスケジュールでした。

あいにく天気が悪く、長谷寺で雨が降ってきたため、急遽バスに乗車し、大仏はスルーして鶴岡八幡宮
となりました。自由時間は小町通りでお土産を買い、八幡さまにお参りしました。
私の先祖のお墓が「鎌倉霊園」にあるためこの辺は幾度となく行ってはいるのですが、かれこれ8年ぶり
くらいでしたので、翌日勉強会終了後に午後からお墓参りを済ませ、天気が良かったので(日中は20℃を
超える暖かさでした)あらためて大仏を見てきました(*´∀`*)

今回、ヨクナール・ミーティングのメインテーマは「歯科医療は生活に出会えたか」でした。
他には「ブラキシズムとペリオ」「歯科技工士と歯科医師とのコミュニケーション」というセッションもあり、
多くの歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士の発表がありました。

さて、皆さんはどこか体の調子が悪くなってお医者さんにかかった時、検査を行い、診査、診断をして
もらった後は、その病気に対して薬が処方されると思います。しかしながら病気になった根本的な原因に
おいて、例えばその患者さんの生活習慣やストレス、食生活などが関与していると想像される場合でも、
患者さんの生活に関わる具体的なアドバイスはほとんどなく、そのことに深く踏み込んだアプローチ、
患者さんと共に根本的な解決の糸口を探り支援してくれる医師(医院)はほとんどないのではないでしょうか。

歯科においても同様で、口腔内、歯が大きく損なわれている患者さんというのは、どこかに治療技術だけでは
対応しきれないその患者さん特有の問題点が隠されていることが往々にしてあります。
そのため単に歯を治療するというアプローチだけではなく、もっと多角的なアプローチをしなければ、
いったん獲得したと思われた口腔健康も再び時間の経過と共に崩れ、結果更に歯を失うことになります。

その原因は見立てのしっかりしている歯科医師であれば概ね想像はつくものですが、実際に実行するのは
患者さん自身ということも多く、医療面接を通してまずは患者さんにそのことに気づいてもらう、そして良くしたい
という気持ちを持ってもらい、我々医療側が支援を行っていくというプロセスが必要になります。

口は食事の入口であり、体はその人の食事で作られています。即ち、食事は体の健康を大きく左右します。
例えば、食生活指導を通じて患者さんの生活に関わることで、また生活習慣、生活背景における原因についても、
患者さんとのコミュニケーションを図り相互理解を深めることで、歯科は患者さんの口腔健康だけでなく、肉体的、
精神的な全身の健康においても貢献できると思います。

昨今の歯科界においては、低評価でルール上の縛りが多い歯科保険制度の中、保険診療で実際どこまで
対応できるのかという大きな問題がある一方、自費、自由診療においては短期的に患者満足度の高い審美、
インプラントなどの技術偏重傾向があると感じています。

今回、「歯科医療が患者さんの生活に届きますように」という医療側の思い、また不条理な歯科保険制度の中
困難なことが多くても、「私たちは自分の持ち場で患者さんに本当に必要なことを諦めずに続けていくことが
大切である」ということを改めて思い出させてくれた勉強会でした。

明日からはまた診療が始まります。患者さんと真摯に向き合いながら患者さんの健康を願い、歯科医師として
貢献できることを精一杯頑張っていこうと思います。

 鎌倉大仏



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Posted at 16:56 | イベント | COM(0) | TB(0) |
2016.11.14

意図的再植術により抜歯を回避したYさんのケース

 10月に降った雪もすっかり溶け、今日は日中10℃くらいまで気温も上がるとのこと、
気持ちの良い週明けを迎えましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか、
なえぼ駅前歯科の大村です。
今週末の19日(土)にはいよいよ市民フォーラム「その歯、抜かないで」~割れた歯を救う
接着保存術~ が開催されます。

市民フォーラム告知(パンフレット)

これまでもこのブログで何度かお伝えしてきましたが、「割れた歯は抜歯」というのが
従来、歯科の常識とされてきました。しかしながら、我々PDM札幌のメンバーは、割れた歯も
救う手立てがある(破折歯接着保存治療)ということを一人でも多くの方に知っていただこうと、
2014年からこの市民フォーラムを始めました。

今回、11月の道新、読売においてもこの市民フォーラムは紹介されており、
更に東京の歯科医師からもぜひ聴講したいとのことで問い合わせがあり、
当日参加される予定です。この治療法を行える歯科医院は限られていますので、
ぜひこの機会にご自身の歯の万一の備えとして、あるいはご家族、ご友人が
歯が割れて困った時のために聴きに来ていただければと思います。

さて本日は、歯根に大きな根尖病変を有しているが、通常の根管治療では治せない
下顎大臼歯に矯正的挺出後、パワーエレベーター(インプラテックス社)を用いて
意図的再植術(一度抜歯を行い、口腔外で根の先の感染部を除去して元に戻す方法)
を行ったYさんのケースをご覧いただこうと思います。

Yさんは来院時、右下奥が噛むと痛いとのことでしたので、レントゲンで状態を確認させて
いただいたところ、右下奥(2本とも)に根尖病変を認めました(図1)

図1
                  図1

(矢印で示した黒い部分は感染により歯根周囲の骨が溶けてなくなっている状態)。
Yさんの話ではかなり以前に行った根管治療ということでしたが、根尖付近の根管内に
腐敗産物、感染歯質が取り残されていることが原因でこのように病変を生じていました。

一番奥の歯(親知らず)の遠心根(向かって左側の歯の左の根)は根の先まで開けて
何とかきれいにすることができましたが、近心根(右の根)は根管の途中がすでに閉鎖していて
全く先端部分に到達できず、一つ手前の歯に至っては2つの根とも途中で閉鎖しており、
先端の腐敗産物、感染歯質をきれいに取り除けず゚(゚´Д`゚)゚、最早根管治療で改善させることは
困難な状態でした。

こういう場合抜歯を避ける最終手段として、意図的再植術という外科処置での対応となりますが、
この歯は骨植が非常に良く、更に歯根も異常に長く(日本人の平均歯根長は11mm前後なのですが、
この歯は何と17mmもありました)、そのまま抜歯、再植を行うことは却って歯の寿命を縮めてしまうと
考えました。

そのため術前処置として、矯正的挺出(矯正力をかけて歯を引っ張っておくと、抜歯が容易になり、
抜歯による歯根膜へのダメージを少なくできる)を行い、術中は抜歯の際の、歯根膜の損傷による
将来的なトラブル(置換性吸収)をできるだけ避けることを主な目的として、エムドゲイン(再生材料)
の使用をご提案しました。

しかしながらYさんは保険給付内の保存治療で経過を見たいと希望されたため、ひとまずブリッジを
装着して治療を終了しました(図2)。

図2
                          図2

それからしばらくして歯ぐきが腫れたとのことで再び来院されました。
再度術前矯正を伴った意図的再植術をご提案したところ、今度は治療を希望されたため
処置を進めていきました(図3、矯正的挺出終了時、歯ぐきが腫れている)

図3
                 図3

抜歯、再植当日は、通常の再植用鉗子(再植、移植用の抜歯器具)に加えて、インプラテックス社で
取り扱っている「パワーエレベーター」という特殊な道具も用いて抜歯を行いました。
矯正力をかけたのでわずかに動揺もあったのですが、それでもなかなか抜歯されず 
歯根膜を傷つけないよう、何と30分以上もかかって、ようやく抜歯されました v(=^0^=)v

少々不謹慎なのですが、臨床経験30年の私でも抜けてきた瞬間は、まさによゐこ濱口の
「獲ったど~!」という心境で、

game_ph1.jpg

それくらい大物の大臼歯でした(^^;

根の先端部に付着してきた大きな嚢胞(赤丸で囲んだ部分)を除去、根尖の感染部分をカットし、
スーパーボンドという接着材で逆根充を行って、再び元に戻しました(図4)。

図4

                          図4

歯ぐきの腫れは処置後速やかに消失し、処置後4ヶ月と短い経過ながら、再初診時に比べると
明らかに骨が改善されてきているのがわかるかと思います(図5、図6)。

図5.
                図5

図6.
                                       図6

1本の歯を残すために全力を尽くし(最善と思う治療をご提案し)、結果を出す。
「保険診療だから」ということは決して失敗の言い訳にはならないと思いますので、
結果を出せる治療をご提案し、大切な1本の歯を守るため患者さんとよく話し合う
ということが大切であると私は考えています。
今回処置したYさんの右下奥が長くトラブルなく維持されていくことを願って止みません。

最後になりますが、前回のブログでも触れました日本歯科評論「臨床の行方」に掲載させて
いただいた「患者さんの望む歯科医療の実践」のまとめを一部抜粋し、本日の締めとさせて
いただきます。

「どういう治療をもって“患者さんのため”というかは議論が尽きないが、
患者さんの望むのは「歯を残す・守る」治療だということは、たしかである。
真のかかりつけ歯科医として「先生のおかげで歯が残っています」と患者さん
の信頼を得て、共に年齢を重ねていけたら幸せな歯科医師人生だと思う」

ダリア(感謝)





2016.11.03

近況報告 ~眞坂信夫先生出版記念パーティーに出席して~

今日は霙混じりの寒い日ですね。
札幌もいよいよ冬の到来、季節柄、体調を崩される方も多いと思いますが、
皆様いかがお過ごしでしょうか。
大変ご無沙汰しております(^^; 、なえぼ駅前歯科の大村です。

なかなかブログを更新できずにいたため、旬の話題から時間が経ってしまいましたが、
まずは「日ハムファイターズ、日本一おめでとうございま~す(ノ^∀^)ノ☆パチパチパチ」
私も実は札幌ドームで行われたクライマックスシリーズ、ソフトバンクとの第5戦(10/16)、
リーグ優勝を決めた試合を息子、娘と三人で観戦しました(*´∀`*)
私自身は前回いつ行ったか記憶が定かでないくらい(子供たち二人は初めて)
久しぶりの野球観戦でしたが、9回クローザーで出てきた大谷選手の165キロ日本新記録
連発も生で見てしまいました~。

また日本一を決めた広島との第6戦は、PDM札幌主催の「カウンセリングセミナー」を受講後、
札幌駅のラーメン店「桑名」でメンバーと共に、中田選手の押し出しフォアボールからレアード
選手の満塁ホームラン、そして谷本選手の締めで「栗山監督」「武田勝」の胴上げまで、おいしい
ところは全部見ていました~。

栗山監督の采配は勿論ですが、人心術というかあの気配り、心配りは私と同じ歳ながら
本当に素晴らしい方だと思いますし、医院の経営者としても多くの学びがあります。
白井コーチ、吉井コーチも復帰し、コーチ陣も更に厚みを増し、選手も個々が自分の役割を良く
理解し、日々鍛錬し、試合で結果を出している様は、同じプロとして私も頑張らねばという気持ちに
させてくれます。

話は変わりますが、10/23(日)、明治記念館にて行われた、眞坂信夫先生の著書「 i-TFC根築
1回法による歯根破折歯診断と治療 」の出版並びにメンテナンスフロア増設の記念パーティーに
出席してきました。

200名以上の出席者のうち半数近くが患者さんで、いろいろな方のスピーチが披露されましたが、
どのスピーチも「自分がこういうスピーチをいただけたら本当に幸せだな~」と思えるような話ばかりで、
御年77才になられる眞坂先生を私の20年後の大きな目標として、こういう歯科医師人生を歩みたいと
思わせる記念パーティーでした。30年以上メインテナンス来院されている患者さんが320名おられる
とのこと、やはり日本の歯科界の黄金期を代表する歯科医師だな~とあらためて感じました。

次の5年間の目標として、PDM21(Professional Dental Management 21 century)の活動、
即ち、「高質な治療はやり直しが少なく歯も失わないため、結果として無駄な医療費を減らし、
認知症の患者を減らし、公的医療費の抑制に大きく貢献することをデータで実証し、それを広く
国民に公開することで、現行の歯科保険制度を変える基盤を作る」活動に力を入れたいと
宣言されていました。その衰えない歯科界に対する思い、情熱に私もあらためて勇気と元気を
いただきました。

前日は札幌で5年間、一緒に歯科の勉強をしていたSさんと久しぶりに再会し、ご飯を食べながら
近況報告、家族のこと、勉強のことなど、楽しくお話ししました。
2年前からは歯周病治療で有名な東京の歯科医院に勤務し、先日はアメリカのサンディエゴでも症例
発表を行うなど、札幌で学んだ知識、技術が今活かされていることを嬉しく思いました。
こういう横のつながりも大切にしたいと思います。

昨日は久しぶりにスタッフと昼食会、JRタワー35階のランチバイキングに行ってきました(*´∀`*)
常日頃、なえぼ駅前歯科、不肖な私をしっかり支えてくれるスタッフにはもうただただ感謝の気持ちです。
今までいろいろ行ったホテルのランチバイキングの中では、料理の内容、高級感、落ち着いた雰囲気
(混み合っていない)、眺望など、あらゆる点で一番良かったです。
おいしいものを食べた後は、午後から夕方まで医院内の掃除を全員で行いました。そして19時に診療を
終えた後は、食べた分を消化するためスポーツジムへ。しっかり汗を流して少しでも痩せなければ (^^;

一昨日はスタッフと一緒に、福住にある慈昂会本部に健康診断に行き、血液検査を除く(血液検査の
結果は後日)すべての検査で異常なしとのこと。但し体重はあと5kg痩せるようにとのお達しで(^^; 
今日もこのブログを書き終えたらジムのランニングマシーンで走る予定です。眞坂先生のように
患者さんに愛され、長く現役で居られるよう、技術の研鑽と体調の管理に励まねばと思うところです。

さて今日はすでに話が長くなってしまいましたので、恒例の患者さんの治療例は次回近日中に
アップすることにします(^^;。 ケースとしては、大きな根尖病変を有しているが、根尖付近は完全に
閉鎖しており通常の根管治療ではどうしても改善することのできない下顎大臼歯(その上歯根長も17mm
と異常に長い (;_;) )に対し、術前に矯正的挺出を行い、術中はパワーエレベーター(インプラテックス)を
用いて意図的再植を行ったYさんのケースをご覧いただこうと思います。

最後にもう二つ(^^; (くどくてスイマセン)
一つは、今月11月号の日本歯科評論(日本のメジャーな歯科専門誌)の巻頭「臨床の行方」に
2ページのコラムですが、原稿の依頼を受けて執筆しました。今年1月から始まった新企画で、
私も毎月楽しく拝読していましたが、今回思いがけずお声を掛けていただきました。

これまでは歯科の各専門分野の指導的な立場におられる、著名な開業医の先生が執筆されて
おり、主に次世代の歯科医師に向けてのメッセージという趣旨内容でした。
私はあくまで読者と同じ市井の一開業医という目線で、「患者さんの望む歯科医療の実践」
~患者さんの歯を残す・守る治療~という話をさせていただきました。
その内容についても少し触れさせていただきます。

そして二つ目は、患者さんの歯を残す治療としての「破折歯接着保存治療」を広く市民の皆様に
知っていただこうと、我々PDM札幌が2014年から年に2回定期的に開催している市民フォーラム
「その歯、抜かないで!」が11月19日(土)14:00~16:00(札幌エルプラザ)で行われますので
(詳しくは「PDM札幌HP」をご覧ください)、その宣伝もあらためてさせてください。

それでは本日はここまでとさせていただきます。
次回もまた「なえぼほのぼのブログ」をよろしくお願いします(*´∀`*)




Posted at 17:22 | 日常 | COM(0) | TB(0) |