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2015.07.12

1本の歯をできるだけ抜かずに維持していくことへの想い Part2(歯の破折)

 今日も朝から快晴の良い天気ですね、これから暑い夏の到来に向け体調管理など
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
先週の日曜日、豊平川市民マラソンに参加してきました。

とは言っても前回のブログでもお伝えしましたように、頚椎ヘルニアが未だ治らず 
2ヶ月ほとんど走っていない状況での強行出場でしたので、折り返して最初のスタート地点である
南12条まで20kmを走って無理せずリタイアしました。
残念ですが健康のために走っているマラソンで、更に頚椎ヘルニアを悪化させては本末転倒ですので (^^;

この豊平川市民マラソンは豊平川河川敷を折り返しながらひたすら走り続けるというタフなマラソン
大会なのですが、多くのボランティアの方の支えにより今年めでたく10回目を迎えました イベントだよ。クラッカー_m

今回第10回を記念して、第1回から連続出場をされている選手に記念品の贈呈が行われました。
またゲストランナーとして出場のリレハンメル複合団体金メダリスト阿部雅司選手から、「初めて
サブスリーになった時の感激は、オリンピックで金メダルを取った時以上でした!」など、ユニークな
スピーチと本物の金メダルも間近に見ることができました。

阿部雅司選手と金メダル

8月末の北海道マラソンでは少しでも長く走っていたいので、一日も早く頚椎ヘルニアを治して
本格的に?走らねばと思っている今日この頃です。

本日は1本の歯をできるだけ抜かずに維持していくことへの想い Part2ということで、
「インプラントは嫌、できるだけ自分の歯を残したい」と初診時強く希望され、計5歯の歯根
破折歯のうち4歯を接着保存したMさんのお話をさせていただきます。

Mさんが当院に来院されたのは3年前で、主訴は上の前歯が割れていると言われたとのこと、
グラグラしている、何とか抜かずに治療ができないかというご相談でした。
診察させていただいたところ、右上犬歯、左上前歯はどちらも歯が割れていました。
また右下奥、左下奥でも歯の割れ(破折)が認められ、更に土台部分ではずれて大きく虫歯に
なっており保存が難しい歯や大きな根尖病変のある歯もありました。

破折歯を含む保存の難しい歯を複数含んだブリッジの長期予後に関しては、当然ですが
リスクはあります。しかしながら抜歯をしてシンプルにしたらリスクはなくなるというものではなく、
むしろ欠損(歯のないところ)を更に進行させることでそのつけは両隣在歯の負担増となり、
抜歯、トラブルの連鎖、欠損の進行を生じます。

歯、ブリッジを長期に維持するための最善の方法、長期保証とメインテナンス継続の重要性
などをMさんと良く話し合った上で治療を開始しました。

主訴であった上の前歯ですが、右上犬歯、右上前歯、左上前歯の順に治療の経過をご覧ください。

 右上犬歯の治療経過

初診時グラグラしていた右上ブリッジは、犬歯の一部が割れてくっついたまま外れていました。
くっついてきた歯には当然歯根膜はありませんので、Mさんに状況を説明したところ
「こんなことなら外してもらわなければよかった」と落胆されました・・・。
説明は理解できても気持ちは整理できない、正直な気持ちの発露だったのだと思います。
後日接着させるととても喜んで下さいました。歯根膜のないところは深い歯周ポケットを
残しますので、管理できるところまで矯正治療で挺出することにしました。

右上前歯の治療経過

左上前歯の治療経過

左上前歯の歯根面は土台の金属が溶出し黒変していました。また歯肉にも一部メタルタトゥーを
認めました。しかしながら黒変している歯根面には健全な歯根膜が付着していましたので、
処置に支障はありませんでした。

次に右下奥歯ですが、最後臼歯の親知らずは割れているだけでなく感染も虫歯も大きく進行しており
結局自然に抜けて抜歯となりました。また土台部分ではずれて大きく虫歯になっていた小臼歯は矯正
治療により挺出させることで保存することができました。

右下智歯

右下小臼歯の治療経過

最後に左下奥歯の治療経過と治療終了時の状態です。

左下奥歯の治療経過

左下奥歯は手前の歯が虫歯により2根に分離しており、且つそれぞれの歯根に割れが入っておりました。
また一番奥の歯(向かって右側の歯)の根尖部には根尖病変がありましたが、どちらも治療終了時には
改善しています。

治療終了時の状態です(矢印部分が破折歯接着保存治療、矯正治療を行った歯)。

 治療終了時

今回破折歯接着再植を行った4歯は、いずれも接着治療前には破折線に沿って深い歯周ポケットを
認めましたが、現在はすべての歯周ポケットにおいて浅く改善しています。
破折線に沿った部分は術後に再付着はしないと考えていますので、メインテナンスの経過の中で
歯周ポケットが深くならないよう、より丁寧なブラッシングとメインテナンスの継続が必要です。

また破折歯を含む失活歯(神経を取った歯)はすべてi-TFCファイバーコア(+根築1回法)を用い、
破折歯はすべてブリッジの中間支台とし、更に矯正的挺出、再植処置による外科的挺出により
フェルール(歯肉縁上の歯質)を確保することで再破折防止に努めました。

さてMさんの口腔内にはなぜ複数歯に歯根破折を生じていたのでしょうか?
失活歯の経年的な劣化や残存歯質の脆弱性、太い金属コアという問題はあるものの、歯にかかる
咬合力の量と質いう問題、即ち、咀嚼の強さや噛み方、硬固物咀嚼、夜間、日中のブラキシズム
(歯ぎしり、くいしばり)などの何が問題となっているのか、歯や補綴物に過度な負担がかからないよう
注意をしながら観察していく必要があります(咬合力のコントロールに関しては、なえぼほのぼの
ブログの「歯の寿命を左右する噛む力について」をご覧ください)。 

医患協同で注意深くメインテナンスを継続した結果、10年、歯も補綴物も維持された時、
Mさんと「あの時抜歯にならずに本当に良かったね」と喜びを分かち合えることを楽しみに
かかりつけ医としてしっかりメインテナンスしていきたいと思います。
Mさん、今後とも末長くお付き合いください 

アサガオ











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