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2014.10.30

初診時重度の歯周病であった患者Sさんとの14年

  ここ数日急に寒くなってきましたね、なえぼ駅前歯科の大村です。
冬の寒さと暗さは苦手ですので、もう少しだけ小春日和が続いてくれないかな~と
思っている今日この頃です(笑)。

本日は患者Sさんのお話をさせていただきます。
Sさんは平成12年に来院され全顎的にかなり重度の歯周病でした。
当時50代半ばであったSさんですが、血圧が高くおタバコも1日30~40本吸われており、
その影響がお口の中にも如実に出ている状況でした。

初診時正面観
               初診時正面観

初診時レントゲン写真
                    初診時レントゲン写真

できるだけご自分の歯を残したいというご希望をお持ちでしたので、保存できるかどうか見通しの
立たない上顎の多数歯は自然挺出という治療方法で対処しました。

上顎自然挺出時
          上顎自然挺出時

治療中に自然に抜けた歯、あるいは根の先まで完全に骨がなくどうしても残せなかった歯も
ありましたが、3年近くかけて治療を終了しました。

治療終了時 レントゲン写真
                      治療終了時レントゲン写真

治療終了時の歯を支えている骨のラインが初診時のレントゲン写真と比べて明瞭で全体に
平坦化(上顎)しており、仕上がりの良いメインテナンスしやすい歯周組織になっています。

その後11年間のメインテナンス期間中、仕事が多忙を極め来院が1年中断した時期がありました。
もともと歯周病になりやすく進行しやすいSさんのプラークコントロールが甘くなってしまった結果、
再来時に左上奥の歯が1歯残せない状態になってしまったことは、メインテナンスし続けられなかった
私の大きな反省点、教訓となりました。

しかしながら直近の3~4年は定期的なメインテナンスに来院されており、その後は良好に維持
されています。

現在正面観
 現在正面観(初診から14年後)

初診時、現在比較(右下奥)

初診時の写真と比べると歯肉が薄いピンク色に変わっていることがわかると思います。
歯周病は糖尿病、ガン、脳・心筋梗塞、肺炎などあらゆる全身疾患と関連性があると言われて
おり(なえぼほのぼのブログ「本当は怖い歯周病」をご一読下さい)、Sさんの口腔健康のみならず
全身の健康にも少なからず貢献できたかなと嬉しく思っています。

歯科の専門誌である「歯界展望」という月刊誌に「天然歯を守る」という連載企画があります。
この企画は歯を残すことにこだわる全国の有名歯科医師でつなぐリレー企画になっており、
昨年1月の連載開始当初から毎月私も楽しみに読ませていただいておりましたが、
今回歯界展望編集部からお声を掛けていただき、今月号に患者Sさんの14年間の治療経過と
「歯を残す」-私の想いが掲載されました。

歯界展望 天然歯を守る

「歯を残す」-私の想い

来院当時50代半ばであったSさんは70才となり、40才であった私もいつの間にか来院当時の
Sさんの年齢に近づいてきました。
開業して18年、長期に来院して下さっている患者さんは私の大きな財産であります。
今後も「患者さんの長期的な口腔健康に貢献できる歯科医院」として、患者さんの幸せに
ささやかながら貢献できるよう努力していきたいと思います 


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Posted at 08:24 | 歯周治療 | COM(0) | TB(0) |
2014.10.24

自由診療を終了されたTさんのお話(i-TFCファイバーコア)

  最近寒くなってきましたね。
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。

7月にアップして以来、3ヶ月ぶりの更新になってしまいました 
先日の19日絶好の紅葉日和に、大学でサッカーをやっている次男の試合を
見に奈井江に行ってきました。
今月に入って頚椎ばかりか腰椎まで(ヘルニア)やってしまい、無理を押して
奈井江まで車で観戦に行ったのですが、札幌に戻ってきてからセカンドバックが
ないことに気づきました 
そう、奈井江のサッカー場に忘れてきてしまったのです 
歳のせい?仕事疲れ?本当に有り得ないことです・・・。
結局見つけた方が届けて下さり(ありがとうございました 8757043.gif
その日は奈井江町役場まで再度往復してしまいました 

話は変わりますが(笑)、9月には私が所属するPDM札幌主催で、破折歯の保存治療に
関する市民フォーラムと歯科医師向けにシンポジウムを行いました。
100名の歯科医師、スタッフの参加と賛同企業様が11社協賛して下さり大成功でした。
「北海道を破折歯接着保存治療の先進地に」という想いで、一人でも多くの患者さんの
歯を抜かずに残せるよう、また一人でも多くの歯科医師に破折歯を救う治療があることを
知ってもらえるよう、今後もこういう活動を継続していきたいと考えています。

聴講者の質問に答える私

                  聴講者の質問に答える私

明日、明後日は当学会(日本臨床歯周病学会)と北大、医療大の合同研修会が北大
歯学部大講堂で行われます。
我々歯科医師は患者さんの大切な歯、口腔健康を守るプロとして、患者さんのために
しっかり研鑽する必要があると思っています。

また来月11月には北大同窓会千歳支部の定例会に呼んでいただき、破折歯の治療に
関してお話しさせていただくことになっており、その後の懇親会と宿泊を(笑)楽しみに
しています。
いろいろ体に無理はかかっていますが  充実した日々を送っています。

秋の北大歯学部周辺

          秋の北大歯学部周辺

今日は先日治療を終了しましたTさんのお話をさせていただきます。
Tさんは札幌市内の歯科医院さんからの紹介で、交通の利便性が良く、歯周病治療など
歯科治療全般に精通した医院をということでご紹介いただきました。
動揺の大きい歯があり歯周病のご心配と全体的にも見てほしい、最善の治療を提案して
ほしいとのご希望がありました。

Tさんは60才代の女性ですが、臼歯部にはインプラントが入っており、残存歯特に
失活歯(神経を取っている歯)において根が短く、歯質も少なく脆弱な歯が何本もあり、
これから先20年以上ご自分の歯を持たせていくには非常に心許ない口腔内の現状
でした。

元々は反対咬合であったため前歯部でのガイドがないことによる小臼歯部の動揺、
歯周病の悪化。更に臼歯部は左側が5番までの咬合(短縮歯列)であるため、
右側臼歯部、特に2根しか残っていない右上大臼歯部に負担がかかってトラブルに
なることが想像されました。

すべて自由診療ではありましたが、歯周病治療に加えて下顎前歯部アライナー矯正
による被蓋の改善、失活歯にはすべて歯根破折防止を考えi-TFCファイバーコアを装着、
また一部のインプラント部を除く全顎的な冠、ブリッジの再製作を行いました。
当初はできるだけ短期間でとおっしゃられていましたが、結局1年半かけて
治療終了となりました。

*歯根が短く歯質も脆弱な右上前歯、右上奥歯、右下奥歯(レントゲン写真において
  すべて向かって左側) の特に3歯に関しては、i-TFCファイバーコアによる根充(根管充填)
  と支台築造(土台)が 一体となった根築1回法を 行っています(白い芯棒としてレントゲン
  に写っている部分)。

治療終了時 正面観
                 
                治療終了時正面観

治療終了時レントゲン写真(矢印部分が根築1回法)

              治療終了時レントゲン写真 (矢印部分が根築1回法)

時間はかかりましたが、これからの先のTさんの人生、歯に煩わされることなく見た目も自然で、
何でもおいしいものを食べることができることを願って一生懸命治療を行いました。
今後のメインテナンスの継続も非常に大切ですので、これからも末永くお付き合い下さい