2018.02.19
移植床の①骨幅が足りない②骨の高さがないアドバンス歯牙移植2症例
こんにちは、なえぼ駅前歯科の大村です。
平昌オリンピック、日本人選手活躍していますね~~。
一昨日は羽生、宇野両選手の金銀ダブル受賞!感動しました。
羽生選手の渾身の演技、最後のスピン堪えました~~。
宇野選手も最初の4回転ループこそ転倒しましたが、その後はしっかり決めてハビエル選手を逆転。
「すべての選手の演技を見ていて頭の中で勝ち負けの点数を計算していた」という宇野選手のコメント
には驚きで、勝つ選手はやはりハートが強く、ものが違うな~と感じました。
羽生選手の「人生をスケートに賭けてきて本当に良かった」というコメントには、思わずうるっときて
しまいました。本当におめでとうございます!(昨日は小平選手も金メダルを獲得しました~
)
今年は今のところこまめにブログを更新していますが
、先日ある先生から「歯牙移植を考えている
患者さんが来院されたのだけど、移植予定のところに骨がない(下顎の頬側に骨がない)が歯牙
移植の骨造成は可能ですか?」と質問を受けました。
移植できる歯があっても、移植予定の部位(移植床)に骨がないと、移植ができないかあるいは
行っても良好な予後が望めないのですが、様々なテクニックを駆使することで歯牙移植は可能と
なります。
と言うことで、前回のブログアップからまだ間もないのですが(この調子がいつまで続くか心配ですが
)、
本日は当院の治療例を見ていただきながら、歯牙移植アドバンス編のお話をさせていただきます。
移植床の骨が不足している場合の歯牙移植は、以下①~④の方法が可能です。
①頬側に骨が不足していても前後の歯の頬側に骨があり、ボーンハウジング内に収まる
(両隣接歯の頬側の骨を結んだ枠の中に納まる)のであれば、GTR膜+骨移植を併用しての
歯牙移植が可能。移植歯には歯根膜が存在するので却って骨の再生は得られやすい
②移植歯がやや大きいなどの理由で、ボーンハウジング内に収まりにくい場合は、移植歯の
抜歯時、頬側の骨を付けたまま抜歯して移植する方法(生木骨折移植)も、ピエゾ(超音波
切削器具)を用いて行うことが可能
③上顎臼歯部は骨の高さが足りない場合、上顎洞粘膜を挙上(ソケットリフト)させることで移植が
可能
④上顎の場合は下顎と比べて骨が硬くないため、骨にスプリット(切れ目)を入れそこから骨幅を
広げていく方法も可能
①、③、④はすでに症例数をこなしており、②も適応症例で且つその治療が最善であり、
また患者さんが治療を希望されれば行う準備は整っています(これまでは明らかに骨幅が足りない
場合、可能であれば分割してそれぞれ移植(あるいは条件の良い方のみ移植)という治療法を
選択したこともありましたが、むしろ移植ではなくインプラントをご提案していました)。
ということで本日は、
第一症例:骨の幅がない(頬側に骨がない)ケースの再生療法併用症例
第二症例:骨の高さがないケースのソケットリフト併用症例 をご覧いただきたいと思います。
(第一症例)
初診時50代の女性の方で、左下奥2本(×の歯)は虫歯と歯の破折で保存は困難な状態でした。
真ん中の歯も虫歯の進行が著しく、5本ブリッジ(支えは3歯)で対応したとしても負担のかかる
この歯の予後は厳しいと思われました。またブリッジで対応する場合、健全な犬歯と大臼歯を
削って被せる治療になります。
そこで真ん中の歯はブリッジとせず単冠で、向かって左は抜歯後、GBR(骨造成)を併用した
インプラント、そして向かって右の大臼歯部は抜歯後、左上智歯(親知らず)を移植しようと
考えました。

しかしながら移植床部は元々感染が大きく、頬側に骨がない状態で(下の左下図、赤線の
ところが頬側の足りない骨部)、2根に分岐している左上智歯を移植すると分岐部は骨内に
収まらず、移植後根分岐部病変を有する歯となってしまいます。

そこで移植時、頬側の骨再生も併せて行うことを計画しました。

初診から5年後(移植4年後)、現在の左下奥です。
向かって左側はインプラント、真ん中はi-TFCファイバーコアとスーパーボンドを用いた
根築1回法、そして右側は左上智歯が移植されています。2根に分岐した移植歯の根分岐部
にはしっかりと骨が再生されています。
(第二症例)
このケースは矯正専門医からの依頼で、矯正治療により抜歯予定の右下奥を後継永久歯が
先天性に欠如している左上奥に移植できないかとのことでした。
永久歯の根未完成歯は適切な時期に歯牙移植を行うと、歯髄(歯の神経)は生きたまま歯冠
修復することなく天然歯として一生涯維持していくことも可能です。しかしながら根未完成な
右下永久歯の歯根長は9~10mmある一方、左上の移植床(乳歯抜歯後の移植予定部位)の
骨はCTで確認すると2mmしかありませんでした。

その場合、ソケットリフト(上顎洞粘膜を挙上する方法)を併用した歯牙移植を行うことで移植を
成功させることが可能です。

移植を依頼された先生のご要望にお応えすると共に、何より患者さんのお母さんがとても喜んで
くださったことは本当に嬉しく歯科医師冥利に尽きます。
歯科医師として「歯を救う、活かす」ための高度な外科治療の経験と実績を積んでいくことは、
時としてプレッシャーやストレスになることもあるかもしれませんが、うちでしかできない
患者さんにとって最善と思われる治療の引き出しを多く持ち、結果を出して喜んでいただける
ことが、この仕事に賭けて頑張れる何よりの原動力であることは間違いありません。
このブログをご覧になられて、もしセカンドオピニオンを希望される方がおられましたら、
ぜひ一度当院にご来院ください。ご希望をよく伺った上で、私の見立てで最善と思う治療の
お話をさせていただきます
平昌オリンピック、日本人選手活躍していますね~~。
一昨日は羽生、宇野両選手の金銀ダブル受賞!感動しました。
羽生選手の渾身の演技、最後のスピン堪えました~~。
宇野選手も最初の4回転ループこそ転倒しましたが、その後はしっかり決めてハビエル選手を逆転。
「すべての選手の演技を見ていて頭の中で勝ち負けの点数を計算していた」という宇野選手のコメント
には驚きで、勝つ選手はやはりハートが強く、ものが違うな~と感じました。
羽生選手の「人生をスケートに賭けてきて本当に良かった」というコメントには、思わずうるっときて
しまいました。本当におめでとうございます!(昨日は小平選手も金メダルを獲得しました~

今年は今のところこまめにブログを更新していますが

患者さんが来院されたのだけど、移植予定のところに骨がない(下顎の頬側に骨がない)が歯牙
移植の骨造成は可能ですか?」と質問を受けました。
移植できる歯があっても、移植予定の部位(移植床)に骨がないと、移植ができないかあるいは
行っても良好な予後が望めないのですが、様々なテクニックを駆使することで歯牙移植は可能と
なります。
と言うことで、前回のブログアップからまだ間もないのですが(この調子がいつまで続くか心配ですが

本日は当院の治療例を見ていただきながら、歯牙移植アドバンス編のお話をさせていただきます。
移植床の骨が不足している場合の歯牙移植は、以下①~④の方法が可能です。
①頬側に骨が不足していても前後の歯の頬側に骨があり、ボーンハウジング内に収まる
(両隣接歯の頬側の骨を結んだ枠の中に納まる)のであれば、GTR膜+骨移植を併用しての
歯牙移植が可能。移植歯には歯根膜が存在するので却って骨の再生は得られやすい
②移植歯がやや大きいなどの理由で、ボーンハウジング内に収まりにくい場合は、移植歯の
抜歯時、頬側の骨を付けたまま抜歯して移植する方法(生木骨折移植)も、ピエゾ(超音波
切削器具)を用いて行うことが可能
③上顎臼歯部は骨の高さが足りない場合、上顎洞粘膜を挙上(ソケットリフト)させることで移植が
可能
④上顎の場合は下顎と比べて骨が硬くないため、骨にスプリット(切れ目)を入れそこから骨幅を
広げていく方法も可能
①、③、④はすでに症例数をこなしており、②も適応症例で且つその治療が最善であり、
また患者さんが治療を希望されれば行う準備は整っています(これまでは明らかに骨幅が足りない
場合、可能であれば分割してそれぞれ移植(あるいは条件の良い方のみ移植)という治療法を
選択したこともありましたが、むしろ移植ではなくインプラントをご提案していました)。
ということで本日は、
第一症例:骨の幅がない(頬側に骨がない)ケースの再生療法併用症例
第二症例:骨の高さがないケースのソケットリフト併用症例 をご覧いただきたいと思います。
(第一症例)
初診時50代の女性の方で、左下奥2本(×の歯)は虫歯と歯の破折で保存は困難な状態でした。
真ん中の歯も虫歯の進行が著しく、5本ブリッジ(支えは3歯)で対応したとしても負担のかかる
この歯の予後は厳しいと思われました。またブリッジで対応する場合、健全な犬歯と大臼歯を
削って被せる治療になります。
そこで真ん中の歯はブリッジとせず単冠で、向かって左は抜歯後、GBR(骨造成)を併用した
インプラント、そして向かって右の大臼歯部は抜歯後、左上智歯(親知らず)を移植しようと
考えました。

しかしながら移植床部は元々感染が大きく、頬側に骨がない状態で(下の左下図、赤線の
ところが頬側の足りない骨部)、2根に分岐している左上智歯を移植すると分岐部は骨内に
収まらず、移植後根分岐部病変を有する歯となってしまいます。

そこで移植時、頬側の骨再生も併せて行うことを計画しました。

初診から5年後(移植4年後)、現在の左下奥です。
向かって左側はインプラント、真ん中はi-TFCファイバーコアとスーパーボンドを用いた
根築1回法、そして右側は左上智歯が移植されています。2根に分岐した移植歯の根分岐部
にはしっかりと骨が再生されています。
(第二症例)
このケースは矯正専門医からの依頼で、矯正治療により抜歯予定の右下奥を後継永久歯が
先天性に欠如している左上奥に移植できないかとのことでした。
永久歯の根未完成歯は適切な時期に歯牙移植を行うと、歯髄(歯の神経)は生きたまま歯冠
修復することなく天然歯として一生涯維持していくことも可能です。しかしながら根未完成な
右下永久歯の歯根長は9~10mmある一方、左上の移植床(乳歯抜歯後の移植予定部位)の
骨はCTで確認すると2mmしかありませんでした。

その場合、ソケットリフト(上顎洞粘膜を挙上する方法)を併用した歯牙移植を行うことで移植を
成功させることが可能です。

移植を依頼された先生のご要望にお応えすると共に、何より患者さんのお母さんがとても喜んで
くださったことは本当に嬉しく歯科医師冥利に尽きます。
歯科医師として「歯を救う、活かす」ための高度な外科治療の経験と実績を積んでいくことは、
時としてプレッシャーやストレスになることもあるかもしれませんが、うちでしかできない
患者さんにとって最善と思われる治療の引き出しを多く持ち、結果を出して喜んでいただける
ことが、この仕事に賭けて頑張れる何よりの原動力であることは間違いありません。
このブログをご覧になられて、もしセカンドオピニオンを希望される方がおられましたら、
ぜひ一度当院にご来院ください。ご希望をよく伺った上で、私の見立てで最善と思う治療の
お話をさせていただきます

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2017.01.20
歯の移植、再植、破折歯接着保存、矯正、インプラント(スプリットクレスト)を用いたNさんのケース
毎日寒い日が続きますね(*´∀`*)
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
昨年は多くの方にご来院いただき、またいつも献身的に私をサポートしてくれるスタッフにも
助けられ、大変充実した一年を過ごすことができました。今年も当院に来院される患者様の
歯を1本でも多く守り、救うことができるよう研鑽に努めてまいりますので、どうぞよろしく
お願い致します。
さて今年最初のブログは、昨年当院に来院されたNさんのお話をさせていただきます。
Nさんは札幌から車で2時間弱の遠方から、当院HPをご覧になられて来院されました。
主訴は右下奥と左下奥の治療を希望とのことでした。
歯はできるだけ抜かずにブリッジでの治療を希望されていましたが、奥歯はすでに歯の
ないところも多く、また残っている歯も歯根破折や著しい虫歯、不適切な根管治療、
歯周病など、多くの問題を抱えていました。
図1.はNさんの初診時の右下、左下奥のレントゲンと口腔内写真です。

口腔内(歯)の正確な現状把握、1歯ごとの診査、診断、処置方針と治療全体の見立ては
非常に大切で、いろいろなケースに対応できる多くの治療の引き出しを持ちつつ、その患者さん
にとってどのような治療が最善で、且つ患者さんの望む治療なのかを決める歯科医師としての
力量とバランス感覚が大いに問われるところです。
歯根破折を起こしている右下犬歯(向かって左側の3の歯)は感染も大きく保存は不可能な
状態で、上顎に移植のドナーとなり得る智歯がありましたが、3部の骨幅が狭いため同部には
収まりませんでした。
また右下小臼歯(向かって左側の5の歯)は歯周病もしくは歯根破折によると思われる骨の
吸収像があり、診断と処置方針が難しい状態でした。
図2は初診から4ヶ月後、右下にブリッジが装着された状態です。
何とかうまく処置を完了することができました。

図2 右下ブリッジ装着時
次に左下ですが、左下大臼歯(向かって右側の7の歯)は歯根の1/2まで虫歯が進行しており
保存は難しい状態でしたが、矯正治療により歯を上に引っ張り上げることで保存することができました。

虫歯を除去、矯正治療前の状態
また左下小臼歯(向かって右側の5の歯)は根尖病変を有していましたが、根管治療の器具が
根管内に折れ込んでいるため根管治療が難しい状態で、更に歯が割れており
この歯は意図的再植術という外科処置で対応しました。
図3は術中、術後の写真です。

図3 意図的再植術の術中(左:根尖と破折線の
感染部を除去、sealing後)、術後レントゲン(右)
図4は初診から4ヶ月後、左下にブリッジが装着された状態です。

図4 左下ブリッジ装着時
意図的再植後、2ヶ月足らずでブリッジを装着しているため、まだ左下小臼歯根尖には骨吸収像を
認めますが、確実に原因を除去しておりますので必ず改善治癒してくるものと考えています。
右下は5番目までの2本の奥歯、左下は8番目までの5本の奥歯がブリッジにより回復されましたが、
当然のことながら噛みやすい側は左側に偏りますので、できるだけ左右均等に噛むことができて
負担が平均的に分散されるよう、右下6番目の位置にここに至ってようやくインプラントを埋入しました。
同部の骨幅は非常に狭く3mmしかないため、3.7mm(長さ10mm)のインプラントをうまく埋入
できるよう、スプリットクレストという骨を切って広げる方法により6mmまで骨幅を広げました。
下顎大臼歯部で骨密度が高く、幅も3mmと狭いうえに下顎管までの距離が12mmしかないため
難易度の高いケースでしたが、無事問題なく埋入することができました。
図5は術前のCTと術後のデンタルレントゲン写真です。


スプリット(切れ目)が骨頂部(クレスト)とインプラントの前後に縦に入っているのがわかるかと思います。
初診から5ヶ月経過し、もうすぐインプラントに冠が装着されるとようやく自由診療が終了となります。
歯の移植、再植(破折リーマー除去、逆根充と破折歯接着修復)、矯正的挺出(著しい虫歯に罹患
した歯の救済処置)、インプラント(スプリットクレスト)を駆使し、何とかNさんが初診時に望んだ
治療を完了することができました。
今後は長いメインテナンス治療が始まります。長くトラブルなくメインテナンス出来てこそ、ようやく
治療の成功と言えますので、ここからが新たなスタートだと考え、末永くお付き合い下さいますよう
よろしくお願いします
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
昨年は多くの方にご来院いただき、またいつも献身的に私をサポートしてくれるスタッフにも
助けられ、大変充実した一年を過ごすことができました。今年も当院に来院される患者様の
歯を1本でも多く守り、救うことができるよう研鑽に努めてまいりますので、どうぞよろしく
お願い致します。
さて今年最初のブログは、昨年当院に来院されたNさんのお話をさせていただきます。
Nさんは札幌から車で2時間弱の遠方から、当院HPをご覧になられて来院されました。
主訴は右下奥と左下奥の治療を希望とのことでした。
歯はできるだけ抜かずにブリッジでの治療を希望されていましたが、奥歯はすでに歯の
ないところも多く、また残っている歯も歯根破折や著しい虫歯、不適切な根管治療、
歯周病など、多くの問題を抱えていました。
図1.はNさんの初診時の右下、左下奥のレントゲンと口腔内写真です。

口腔内(歯)の正確な現状把握、1歯ごとの診査、診断、処置方針と治療全体の見立ては
非常に大切で、いろいろなケースに対応できる多くの治療の引き出しを持ちつつ、その患者さん
にとってどのような治療が最善で、且つ患者さんの望む治療なのかを決める歯科医師としての
力量とバランス感覚が大いに問われるところです。
歯根破折を起こしている右下犬歯(向かって左側の3の歯)は感染も大きく保存は不可能な
状態で、上顎に移植のドナーとなり得る智歯がありましたが、3部の骨幅が狭いため同部には
収まりませんでした。
また右下小臼歯(向かって左側の5の歯)は歯周病もしくは歯根破折によると思われる骨の
吸収像があり、診断と処置方針が難しい状態でした。
図2は初診から4ヶ月後、右下にブリッジが装着された状態です。
何とかうまく処置を完了することができました。

図2 右下ブリッジ装着時
次に左下ですが、左下大臼歯(向かって右側の7の歯)は歯根の1/2まで虫歯が進行しており
保存は難しい状態でしたが、矯正治療により歯を上に引っ張り上げることで保存することができました。

虫歯を除去、矯正治療前の状態
また左下小臼歯(向かって右側の5の歯)は根尖病変を有していましたが、根管治療の器具が
根管内に折れ込んでいるため根管治療が難しい状態で、更に歯が割れており

この歯は意図的再植術という外科処置で対応しました。
図3は術中、術後の写真です。

図3 意図的再植術の術中(左:根尖と破折線の
感染部を除去、sealing後)、術後レントゲン(右)
図4は初診から4ヶ月後、左下にブリッジが装着された状態です。

図4 左下ブリッジ装着時
意図的再植後、2ヶ月足らずでブリッジを装着しているため、まだ左下小臼歯根尖には骨吸収像を
認めますが、確実に原因を除去しておりますので必ず改善治癒してくるものと考えています。
右下は5番目までの2本の奥歯、左下は8番目までの5本の奥歯がブリッジにより回復されましたが、
当然のことながら噛みやすい側は左側に偏りますので、できるだけ左右均等に噛むことができて
負担が平均的に分散されるよう、右下6番目の位置にここに至ってようやくインプラントを埋入しました。
同部の骨幅は非常に狭く3mmしかないため、3.7mm(長さ10mm)のインプラントをうまく埋入
できるよう、スプリットクレストという骨を切って広げる方法により6mmまで骨幅を広げました。
下顎大臼歯部で骨密度が高く、幅も3mmと狭いうえに下顎管までの距離が12mmしかないため
難易度の高いケースでしたが、無事問題なく埋入することができました。
図5は術前のCTと術後のデンタルレントゲン写真です。


スプリット(切れ目)が骨頂部(クレスト)とインプラントの前後に縦に入っているのがわかるかと思います。
初診から5ヶ月経過し、もうすぐインプラントに冠が装着されるとようやく自由診療が終了となります。
歯の移植、再植(破折リーマー除去、逆根充と破折歯接着修復)、矯正的挺出(著しい虫歯に罹患
した歯の救済処置)、インプラント(スプリットクレスト)を駆使し、何とかNさんが初診時に望んだ
治療を完了することができました。
今後は長いメインテナンス治療が始まります。長くトラブルなくメインテナンス出来てこそ、ようやく
治療の成功と言えますので、ここからが新たなスタートだと考え、末永くお付き合い下さいますよう
よろしくお願いします

2016.11.14
意図的再植術により抜歯を回避したYさんのケース
10月に降った雪もすっかり溶け、今日は日中10℃くらいまで気温も上がるとのこと、
気持ちの良い週明けを迎えましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか、
なえぼ駅前歯科の大村です。
今週末の19日(土)にはいよいよ市民フォーラム「その歯、抜かないで」~割れた歯を救う
接着保存術~ が開催されます。

これまでもこのブログで何度かお伝えしてきましたが、「割れた歯は抜歯」というのが
従来、歯科の常識とされてきました。しかしながら、我々PDM札幌のメンバーは、割れた歯も
救う手立てがある(破折歯接着保存治療)ということを一人でも多くの方に知っていただこうと、
2014年からこの市民フォーラムを始めました。
今回、11月の道新、読売においてもこの市民フォーラムは紹介されており、
更に東京の歯科医師からもぜひ聴講したいとのことで問い合わせがあり、
当日参加される予定です。この治療法を行える歯科医院は限られていますので、
ぜひこの機会にご自身の歯の万一の備えとして、あるいはご家族、ご友人が
歯が割れて困った時のために聴きに来ていただければと思います。
さて本日は、歯根に大きな根尖病変を有しているが、通常の根管治療では治せない
下顎大臼歯に矯正的挺出後、パワーエレベーター(インプラテックス社)を用いて
意図的再植術(一度抜歯を行い、口腔外で根の先の感染部を除去して元に戻す方法)
を行ったYさんのケースをご覧いただこうと思います。
Yさんは来院時、右下奥が噛むと痛いとのことでしたので、レントゲンで状態を確認させて
いただいたところ、右下奥(2本とも)に根尖病変を認めました(図1)

図1
(矢印で示した黒い部分は感染により歯根周囲の骨が溶けてなくなっている状態)。
Yさんの話ではかなり以前に行った根管治療ということでしたが、根尖付近の根管内に
腐敗産物、感染歯質が取り残されていることが原因でこのように病変を生じていました。
一番奥の歯(親知らず)の遠心根(向かって左側の歯の左の根)は根の先まで開けて
何とかきれいにすることができましたが、近心根(右の根)は根管の途中がすでに閉鎖していて
全く先端部分に到達できず、一つ手前の歯に至っては2つの根とも途中で閉鎖しており、
先端の腐敗産物、感染歯質をきれいに取り除けず゚(゚´Д`゚)゚、最早根管治療で改善させることは
困難な状態でした。
こういう場合抜歯を避ける最終手段として、意図的再植術という外科処置での対応となりますが、
この歯は骨植が非常に良く、更に歯根も異常に長く(日本人の平均歯根長は11mm前後なのですが、
この歯は何と17mmもありました)、そのまま抜歯、再植を行うことは却って歯の寿命を縮めてしまうと
考えました。
そのため術前処置として、矯正的挺出(矯正力をかけて歯を引っ張っておくと、抜歯が容易になり、
抜歯による歯根膜へのダメージを少なくできる)を行い、術中は抜歯の際の、歯根膜の損傷による
将来的なトラブル(置換性吸収)をできるだけ避けることを主な目的として、エムドゲイン(再生材料)
の使用をご提案しました。
しかしながらYさんは保険給付内の保存治療で経過を見たいと希望されたため、ひとまずブリッジを
装着して治療を終了しました(図2)。

図2
それからしばらくして歯ぐきが腫れたとのことで再び来院されました。
再度術前矯正を伴った意図的再植術をご提案したところ、今度は治療を希望されたため
処置を進めていきました(図3、矯正的挺出終了時、歯ぐきが腫れている)

図3
抜歯、再植当日は、通常の再植用鉗子(再植、移植用の抜歯器具)に加えて、インプラテックス社で
取り扱っている「パワーエレベーター」という特殊な道具も用いて抜歯を行いました。
矯正力をかけたのでわずかに動揺もあったのですが、それでもなかなか抜歯されず
歯根膜を傷つけないよう、何と30分以上もかかって、ようやく抜歯されました v(=^0^=)v
少々不謹慎なのですが、臨床経験30年の私でも抜けてきた瞬間は、まさによゐこ濱口の
「獲ったど~!」という心境で、

それくらい大物の大臼歯でした(^^;
根の先端部に付着してきた大きな嚢胞(赤丸で囲んだ部分)を除去、根尖の感染部分をカットし、
スーパーボンドという接着材で逆根充を行って、再び元に戻しました(図4)。

図4
歯ぐきの腫れは処置後速やかに消失し、処置後4ヶ月と短い経過ながら、再初診時に比べると
明らかに骨が改善されてきているのがわかるかと思います(図5、図6)。

図5

図6
1本の歯を残すために全力を尽くし(最善と思う治療をご提案し)、結果を出す。
「保険診療だから」ということは決して失敗の言い訳にはならないと思いますので、
結果を出せる治療をご提案し、大切な1本の歯を守るため患者さんとよく話し合う
ということが大切であると私は考えています。
今回処置したYさんの右下奥が長くトラブルなく維持されていくことを願って止みません。
最後になりますが、前回のブログでも触れました日本歯科評論「臨床の行方」に掲載させて
いただいた「患者さんの望む歯科医療の実践」のまとめを一部抜粋し、本日の締めとさせて
いただきます。
「どういう治療をもって“患者さんのため”というかは議論が尽きないが、
患者さんの望むのは「歯を残す・守る」治療だということは、たしかである。
真のかかりつけ歯科医として「先生のおかげで歯が残っています」と患者さん
の信頼を得て、共に年齢を重ねていけたら幸せな歯科医師人生だと思う」

気持ちの良い週明けを迎えましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか、
なえぼ駅前歯科の大村です。
今週末の19日(土)にはいよいよ市民フォーラム「その歯、抜かないで」~割れた歯を救う
接着保存術~ が開催されます。

これまでもこのブログで何度かお伝えしてきましたが、「割れた歯は抜歯」というのが
従来、歯科の常識とされてきました。しかしながら、我々PDM札幌のメンバーは、割れた歯も
救う手立てがある(破折歯接着保存治療)ということを一人でも多くの方に知っていただこうと、
2014年からこの市民フォーラムを始めました。
今回、11月の道新、読売においてもこの市民フォーラムは紹介されており、
更に東京の歯科医師からもぜひ聴講したいとのことで問い合わせがあり、
当日参加される予定です。この治療法を行える歯科医院は限られていますので、
ぜひこの機会にご自身の歯の万一の備えとして、あるいはご家族、ご友人が
歯が割れて困った時のために聴きに来ていただければと思います。
さて本日は、歯根に大きな根尖病変を有しているが、通常の根管治療では治せない
下顎大臼歯に矯正的挺出後、パワーエレベーター(インプラテックス社)を用いて
意図的再植術(一度抜歯を行い、口腔外で根の先の感染部を除去して元に戻す方法)
を行ったYさんのケースをご覧いただこうと思います。
Yさんは来院時、右下奥が噛むと痛いとのことでしたので、レントゲンで状態を確認させて
いただいたところ、右下奥(2本とも)に根尖病変を認めました(図1)

図1
(矢印で示した黒い部分は感染により歯根周囲の骨が溶けてなくなっている状態)。
Yさんの話ではかなり以前に行った根管治療ということでしたが、根尖付近の根管内に
腐敗産物、感染歯質が取り残されていることが原因でこのように病変を生じていました。
一番奥の歯(親知らず)の遠心根(向かって左側の歯の左の根)は根の先まで開けて
何とかきれいにすることができましたが、近心根(右の根)は根管の途中がすでに閉鎖していて
全く先端部分に到達できず、一つ手前の歯に至っては2つの根とも途中で閉鎖しており、
先端の腐敗産物、感染歯質をきれいに取り除けず゚(゚´Д`゚)゚、最早根管治療で改善させることは
困難な状態でした。
こういう場合抜歯を避ける最終手段として、意図的再植術という外科処置での対応となりますが、
この歯は骨植が非常に良く、更に歯根も異常に長く(日本人の平均歯根長は11mm前後なのですが、
この歯は何と17mmもありました)、そのまま抜歯、再植を行うことは却って歯の寿命を縮めてしまうと
考えました。
そのため術前処置として、矯正的挺出(矯正力をかけて歯を引っ張っておくと、抜歯が容易になり、
抜歯による歯根膜へのダメージを少なくできる)を行い、術中は抜歯の際の、歯根膜の損傷による
将来的なトラブル(置換性吸収)をできるだけ避けることを主な目的として、エムドゲイン(再生材料)
の使用をご提案しました。
しかしながらYさんは保険給付内の保存治療で経過を見たいと希望されたため、ひとまずブリッジを
装着して治療を終了しました(図2)。

図2
それからしばらくして歯ぐきが腫れたとのことで再び来院されました。
再度術前矯正を伴った意図的再植術をご提案したところ、今度は治療を希望されたため
処置を進めていきました(図3、矯正的挺出終了時、歯ぐきが腫れている)

図3
抜歯、再植当日は、通常の再植用鉗子(再植、移植用の抜歯器具)に加えて、インプラテックス社で
取り扱っている「パワーエレベーター」という特殊な道具も用いて抜歯を行いました。
矯正力をかけたのでわずかに動揺もあったのですが、それでもなかなか抜歯されず

歯根膜を傷つけないよう、何と30分以上もかかって、ようやく抜歯されました v(=^0^=)v
少々不謹慎なのですが、臨床経験30年の私でも抜けてきた瞬間は、まさによゐこ濱口の
「獲ったど~!」という心境で、

それくらい大物の大臼歯でした(^^;
根の先端部に付着してきた大きな嚢胞(赤丸で囲んだ部分)を除去、根尖の感染部分をカットし、
スーパーボンドという接着材で逆根充を行って、再び元に戻しました(図4)。

図4
歯ぐきの腫れは処置後速やかに消失し、処置後4ヶ月と短い経過ながら、再初診時に比べると
明らかに骨が改善されてきているのがわかるかと思います(図5、図6)。

図5

図6
1本の歯を残すために全力を尽くし(最善と思う治療をご提案し)、結果を出す。
「保険診療だから」ということは決して失敗の言い訳にはならないと思いますので、
結果を出せる治療をご提案し、大切な1本の歯を守るため患者さんとよく話し合う
ということが大切であると私は考えています。
今回処置したYさんの右下奥が長くトラブルなく維持されていくことを願って止みません。
最後になりますが、前回のブログでも触れました日本歯科評論「臨床の行方」に掲載させて
いただいた「患者さんの望む歯科医療の実践」のまとめを一部抜粋し、本日の締めとさせて
いただきます。
「どういう治療をもって“患者さんのため”というかは議論が尽きないが、
患者さんの望むのは「歯を残す・守る」治療だということは、たしかである。
真のかかりつけ歯科医として「先生のおかげで歯が残っています」と患者さん
の信頼を得て、共に年齢を重ねていけたら幸せな歯科医師人生だと思う」

2015.02.01
歯牙再植、歯牙移植、インプラントで対応したHさんのケース
毎日雪、雪、
で大変ですね、なえぼ駅前歯科の大村です。
道幅が狭く道路事情も悪く、運転にも細心の注意が必要です。
何を隠そう私も、今朝発寒の「おかめや」にパンを買いに行こうと(*´∀`*)
自宅を出た途端、轍にはまって身動きがとれなくなり
牽引してもらいました・・・。
年末年始は思いもよらないいろいろな事が降りかかってきましたが、
私自身は「泰然自若」です。
今年もこれまで同様、当院に来て下さった患者さんの歯を1本でも多く残せるよう、
長年培ってきた臨床経験、技術、知識を活かし、スタッフ共々、患者さんのために
研鑽努力していきたいと思います。
今年もよろしくお願いします( ´▽`)
今年初めてのブログということで、今回は平成24年に来院され、現在は治療を終了し
メインテナンスに入っているHさん(50代前半、女性)のお話をさせていただきます。
Hさんは左下奥の歯肉の腫れを主訴に、当院HPをご覧になられて来院されました。
初診時、治療に対するご希望の一つとして、まずは最善の治療を提案してほしいという
希望がありました。
初診時、治療終了時のレントゲン写真と口腔内写真です。
治療終了時、すべての歯周ポケットは3mm以内と歯周組織は健康です。

初診時レントゲン写真の矢印部分は特に問題があったところです。


Hさんにご提案した治療は、
① 保存が困難な右上前歯の保存治療(歯牙再植)(*)
初診時口蓋側歯肉に腫脹を認め、前医では持たせるだけ持たせましょうと言われたとのことでした。

② 歯のない欠損部分に対しては、上顎左右の智歯(親知らず)を有効利用
下の左右奥歯への歯牙移植(○)
下の写真は右下奥に歯牙移植を行った時のもの

* 左下奥(レントゲン上では向かって右下奥の○部)への歯牙移植は、移植側の骨の高さも幅も足りず、
2根に分岐したドナー歯の根分岐部が骨縁上に露出したため、自家骨、骨補填材を用い分岐部を
完全に閉鎖しています(術後の歯周ポケットは全周3mm以下)。
③ ②で対応できない 左下小臼歯部(向かって右下)欠損部分に対しては、インプラント( ↑)
としました。
①~③の治療方法を選択することの利点は
1.ブリッジを避けることで両隣接歯に負担をかけずに済む
2.ブリッジを避けることで天然歯を削らずに温存することができる(ブリッジで行うと
健全な天然歯を6歯も削る治療になってしまう)
3.歯根膜を有するご自身の歯を移植のドナー歯として有効活用することでインプラント(人工物)の
本数を少なくすることができる
ということがあげられます。
Hさんは今後長期に渡りご自分の歯を失わない最善の治療をというご希望もあり、自由診療にて
治療を行いました。
治療にかかる初期投資は確かにかかってはいますが、この先20年、30年と大切に使っていかなければ
ならないご自分の歯です。
20年、30年とメインテナンスしていった結果、歯を失わず入れ歯にもならず、生涯に渡りご自分の歯で
しっかり噛める生活を送ることができれば、最初にかけた費用は決して高くないのではないかな~と思う
のです
それくらい歯は人が健康に生きていく上でとても大切なものであり、その治療は皆さんが思っている
以上に難しく、生涯ご自身の歯を維持していくには質の高い歯科医療が必要だからです。

現在日本人の平均残存歯は、残念ながら26本(45才)→23本(55才)→18本(65才)
→10本(75才)と、再治療を繰り返しながら年齢と共にどんどん歯はなくなっています。
気づけば自分以外の周りの友人は皆入れ歯という話は、当院に長くメインテナンスに来られている
患者さんから何度もお聞きしています。
スウェーデンなどの歯科医療の先進国では、80才で平均25本の歯が残存しているにも
かかわらず、日本の現状はこうなのです。
40代、50代は歯を失っていく年代です。
できれば歯を失っていく前に信頼できる先生の下で、上記の日本人のデータが示すように
安い保険診療でできる治療には当然限界がありますので(今回、Hさんの治療で行った歯牙再植、
歯牙移植、インプラント、ファイバーコア、アライナー矯正治療はすべて保険給付外治療です)、
ある程度必要な初期投資は覚悟して、十分ご相談、ご納得の上で、ご自分の歯の治療を
しっかり行ってください。
そしてこれは大事なことですが、歯周治療に精通した歯科医院にてその後のメインテナンスを
継続して下さい。そうすればそう簡単に再治療も抜歯になることもないはずです。
皆様の大切な歯を生涯に渡ってしっかり守ってくれる優秀な歯科医師、スタッフのいる歯科医院に、
皆様が巡り会えますことを祈念いたします。
尚、当院ではセカンドオピニオンも行っていますので、お気軽に相談していただければと
思います。その患者さんにとってどういう治療が最善なのか、患者さんの身になって一緒に
考えたいといつも思っています

で大変ですね、なえぼ駅前歯科の大村です。
道幅が狭く道路事情も悪く、運転にも細心の注意が必要です。
何を隠そう私も、今朝発寒の「おかめや」にパンを買いに行こうと(*´∀`*)
自宅を出た途端、轍にはまって身動きがとれなくなり

牽引してもらいました・・・。
年末年始は思いもよらないいろいろな事が降りかかってきましたが、
私自身は「泰然自若」です。
今年もこれまで同様、当院に来て下さった患者さんの歯を1本でも多く残せるよう、
長年培ってきた臨床経験、技術、知識を活かし、スタッフ共々、患者さんのために
研鑽努力していきたいと思います。
今年もよろしくお願いします( ´▽`)
今年初めてのブログということで、今回は平成24年に来院され、現在は治療を終了し
メインテナンスに入っているHさん(50代前半、女性)のお話をさせていただきます。
Hさんは左下奥の歯肉の腫れを主訴に、当院HPをご覧になられて来院されました。
初診時、治療に対するご希望の一つとして、まずは最善の治療を提案してほしいという
希望がありました。
初診時、治療終了時のレントゲン写真と口腔内写真です。
治療終了時、すべての歯周ポケットは3mm以内と歯周組織は健康です。

初診時レントゲン写真の矢印部分は特に問題があったところです。


Hさんにご提案した治療は、
① 保存が困難な右上前歯の保存治療(歯牙再植)(*)
初診時口蓋側歯肉に腫脹を認め、前医では持たせるだけ持たせましょうと言われたとのことでした。

② 歯のない欠損部分に対しては、上顎左右の智歯(親知らず)を有効利用
下の左右奥歯への歯牙移植(○)
下の写真は右下奥に歯牙移植を行った時のもの

* 左下奥(レントゲン上では向かって右下奥の○部)への歯牙移植は、移植側の骨の高さも幅も足りず、
2根に分岐したドナー歯の根分岐部が骨縁上に露出したため、自家骨、骨補填材を用い分岐部を
完全に閉鎖しています(術後の歯周ポケットは全周3mm以下)。
③ ②で対応できない 左下小臼歯部(向かって右下)欠損部分に対しては、インプラント( ↑)
としました。
①~③の治療方法を選択することの利点は
1.ブリッジを避けることで両隣接歯に負担をかけずに済む
2.ブリッジを避けることで天然歯を削らずに温存することができる(ブリッジで行うと
健全な天然歯を6歯も削る治療になってしまう)
3.歯根膜を有するご自身の歯を移植のドナー歯として有効活用することでインプラント(人工物)の
本数を少なくすることができる
ということがあげられます。
Hさんは今後長期に渡りご自分の歯を失わない最善の治療をというご希望もあり、自由診療にて
治療を行いました。
治療にかかる初期投資は確かにかかってはいますが、この先20年、30年と大切に使っていかなければ
ならないご自分の歯です。
20年、30年とメインテナンスしていった結果、歯を失わず入れ歯にもならず、生涯に渡りご自分の歯で
しっかり噛める生活を送ることができれば、最初にかけた費用は決して高くないのではないかな~と思う
のです

それくらい歯は人が健康に生きていく上でとても大切なものであり、その治療は皆さんが思っている
以上に難しく、生涯ご自身の歯を維持していくには質の高い歯科医療が必要だからです。

現在日本人の平均残存歯は、残念ながら26本(45才)→23本(55才)→18本(65才)
→10本(75才)と、再治療を繰り返しながら年齢と共にどんどん歯はなくなっています。
気づけば自分以外の周りの友人は皆入れ歯という話は、当院に長くメインテナンスに来られている
患者さんから何度もお聞きしています。
スウェーデンなどの歯科医療の先進国では、80才で平均25本の歯が残存しているにも
かかわらず、日本の現状はこうなのです。
40代、50代は歯を失っていく年代です。
できれば歯を失っていく前に信頼できる先生の下で、上記の日本人のデータが示すように
安い保険診療でできる治療には当然限界がありますので(今回、Hさんの治療で行った歯牙再植、
歯牙移植、インプラント、ファイバーコア、アライナー矯正治療はすべて保険給付外治療です)、
ある程度必要な初期投資は覚悟して、十分ご相談、ご納得の上で、ご自分の歯の治療を
しっかり行ってください。
そしてこれは大事なことですが、歯周治療に精通した歯科医院にてその後のメインテナンスを
継続して下さい。そうすればそう簡単に再治療も抜歯になることもないはずです。
皆様の大切な歯を生涯に渡ってしっかり守ってくれる優秀な歯科医師、スタッフのいる歯科医院に、
皆様が巡り会えますことを祈念いたします。
尚、当院ではセカンドオピニオンも行っていますので、お気軽に相談していただければと
思います。その患者さんにとってどういう治療が最善なのか、患者さんの身になって一緒に
考えたいといつも思っています

2014.03.18
重度歯周病に再生療法と歯牙移植を応用したAさんの12年後
3月も半ばを過ぎ、ようやく積もっていた雪も溶けてきて、
春の兆しを感じさせる今日この頃です。
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
突然ですが、先日ETCを取り付けました。
え? 何を今更?の感なのですが(笑)、オートバックス工賃コミコミセットを
ネットで申し込み、後日電話で取り付け日時を決めて、当日は1時間もかからずに
取り付け作業完了となりました。
ETCカードもどのカードがお得かをネットで調べて、ネットで申し込みました。
ネット検索すれば高速道路のETC割引率などが詳しく調べられ、例えば道内、
札幌⇔室蘭だと高速で4回往復すれば、ETC取り付け代分の元は取れるなとか(笑)
わかるわけです。
また高速バスやJRの時刻表を調べて、かかる時間、運賃などを車で行く場合と
即座に比較することもできます。
昨今のネット社会、今更ながら本当に昔に比べて便利になりました。
しかしながら反面、多くの情報が入ってくる時代でもあり、時には意図的に
コントロールされながら入ってくることもあります。
このめまぐるしい時代、時流を把握することは勿論大切なのですが、
情報に流されない確かな目、考えを持つということも大切であると、
この狭い歯科業界を見ていても感じることがあります。
今日は、本日メインテナンス来院されたAさんのお話をさせていただきます。
Aさんは平成14年に来院され、早いもので12年のお付き合いになりました。
初診時左下奥を除く(左下奥の大臼歯2本はすでに抜歯されていた)臼歯部は、
重度の歯周病に罹患していました。

上顎の左右に智歯(親知らず)があり、歯周病に罹患しているドナー歯では
ありましたが、右下、左下奥にそれぞれ歯牙移植を行い、インプラントではなく
ご自分の歯を有効活用することを考えました。
また右下奥と左上奥はエムドゲインという再生材料を用いた歯周外科処置を
行いました。
初診から12年後の現在です。

本日のメインテナンス時、Aさんに「治療終了になられて早いもので10年になりました」
「まずは10年、トラブルのない治療と申しあげましたので、最低限の義務は
果たせたかと思います」と私の素直な気持ちを申しあげましたところ、
「治療の結果には非常に満足しています」と予期せぬ望外な言葉を掛けて下さり、
一生懸命メインテナンスしてきた担当医としてとても嬉しく思いました
初診時重度の歯周病に罹患していましたが、すべての歯を保存し、53才からの
12年間、歯を失うことなく経過しています。
ただ残念ながら、10年間全く再治療なしとは成らず、右上奥の詰め物だけは
7年目に再治療を行いました。

もともと強い咬合力(咀嚼力だけではなく、夜間の歯ぎしりなどを含む)が影響して
初診時著しい垂直性の骨吸収が見られましたので、治療終了時にはナイトガードを
お作りしたのですが、違和感が強くその後装着されておらず、加えてこの歯と噛み合う
下の修復物を、セラミックや硬い保険の金属で行ったことが、このような咬耗を
更に助長させたと考えています。
再治療時には保険の金属である金パラから、生体親和性が良く歯の磨耗に追随する、
軟らかいゴールドへと変更していただきました。
今、歯科では天然歯と見間違うようなオールセラミックが、最新の修復物、これが何より
ベストな材料というような潮流になっています。
天然歯のような審美性を有し、経年的な変色や磨耗もほとんどなく、確かに良い材料では
あるのですが、一方、このようなケースにおいては必ずしも対合歯に優しくない材料で
あることを反省点として学んでいます。
患者さんのニーズはどこにあるのか、審美なのか、耐久性なのか、歯に優しい材料なのか。
現在、私は歯科界の潮流に反して、歯に優しい、軟らかいゴールドを噛みあわせの面に
もってくることが結構あります。
確かにゴールドはセラミックに比べて審美的に見劣りするのですが、これから先
10年、20年と長く大切に使っていただきたいものですので、それぞれの修復物の利点、
欠点もよくご説明し、患者さんと十分話し合った上で決めるようにしています。

Aさんは治療終了後1~2年はプラークコントロールが安定していない時期もありましたが、
平成18年頃からはずっとプラークコントロールが良く、またメインテナンスにも
きっちり来院されており、うすいピンクの健康な歯肉からは、日々歯ブラシで磨き込んだ
真面目なお人柄が滲み出ているように思います。
私が大変な時期にも変わらず信頼してメインテナンスにきて下さり、医患協同で
プラークコントロールに励んだ結果、ひとまずの通過点である治療終了後10年を
まずはクリアーすることができました。
今後はこの状態を15年、20年と再治療なく維持していけたらと思っています。
Aさん、これからも健康で末永くお付き合いいただけることを楽しみにしています
春の兆しを感じさせる今日この頃です。
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
突然ですが、先日ETCを取り付けました。
え? 何を今更?の感なのですが(笑)、オートバックス工賃コミコミセットを
ネットで申し込み、後日電話で取り付け日時を決めて、当日は1時間もかからずに
取り付け作業完了となりました。
ETCカードもどのカードがお得かをネットで調べて、ネットで申し込みました。
ネット検索すれば高速道路のETC割引率などが詳しく調べられ、例えば道内、
札幌⇔室蘭だと高速で4回往復すれば、ETC取り付け代分の元は取れるなとか(笑)
わかるわけです。
また高速バスやJRの時刻表を調べて、かかる時間、運賃などを車で行く場合と
即座に比較することもできます。
昨今のネット社会、今更ながら本当に昔に比べて便利になりました。
しかしながら反面、多くの情報が入ってくる時代でもあり、時には意図的に
コントロールされながら入ってくることもあります。
このめまぐるしい時代、時流を把握することは勿論大切なのですが、
情報に流されない確かな目、考えを持つということも大切であると、
この狭い歯科業界を見ていても感じることがあります。
今日は、本日メインテナンス来院されたAさんのお話をさせていただきます。
Aさんは平成14年に来院され、早いもので12年のお付き合いになりました。
初診時左下奥を除く(左下奥の大臼歯2本はすでに抜歯されていた)臼歯部は、
重度の歯周病に罹患していました。

上顎の左右に智歯(親知らず)があり、歯周病に罹患しているドナー歯では
ありましたが、右下、左下奥にそれぞれ歯牙移植を行い、インプラントではなく
ご自分の歯を有効活用することを考えました。
また右下奥と左上奥はエムドゲインという再生材料を用いた歯周外科処置を
行いました。
初診から12年後の現在です。

本日のメインテナンス時、Aさんに「治療終了になられて早いもので10年になりました」
「まずは10年、トラブルのない治療と申しあげましたので、最低限の義務は
果たせたかと思います」と私の素直な気持ちを申しあげましたところ、
「治療の結果には非常に満足しています」と予期せぬ望外な言葉を掛けて下さり、
一生懸命メインテナンスしてきた担当医としてとても嬉しく思いました

初診時重度の歯周病に罹患していましたが、すべての歯を保存し、53才からの
12年間、歯を失うことなく経過しています。
ただ残念ながら、10年間全く再治療なしとは成らず、右上奥の詰め物だけは
7年目に再治療を行いました。

もともと強い咬合力(咀嚼力だけではなく、夜間の歯ぎしりなどを含む)が影響して
初診時著しい垂直性の骨吸収が見られましたので、治療終了時にはナイトガードを
お作りしたのですが、違和感が強くその後装着されておらず、加えてこの歯と噛み合う
下の修復物を、セラミックや硬い保険の金属で行ったことが、このような咬耗を
更に助長させたと考えています。
再治療時には保険の金属である金パラから、生体親和性が良く歯の磨耗に追随する、
軟らかいゴールドへと変更していただきました。
今、歯科では天然歯と見間違うようなオールセラミックが、最新の修復物、これが何より
ベストな材料というような潮流になっています。
天然歯のような審美性を有し、経年的な変色や磨耗もほとんどなく、確かに良い材料では
あるのですが、一方、このようなケースにおいては必ずしも対合歯に優しくない材料で
あることを反省点として学んでいます。
患者さんのニーズはどこにあるのか、審美なのか、耐久性なのか、歯に優しい材料なのか。
現在、私は歯科界の潮流に反して、歯に優しい、軟らかいゴールドを噛みあわせの面に
もってくることが結構あります。
確かにゴールドはセラミックに比べて審美的に見劣りするのですが、これから先
10年、20年と長く大切に使っていただきたいものですので、それぞれの修復物の利点、
欠点もよくご説明し、患者さんと十分話し合った上で決めるようにしています。

Aさんは治療終了後1~2年はプラークコントロールが安定していない時期もありましたが、
平成18年頃からはずっとプラークコントロールが良く、またメインテナンスにも
きっちり来院されており、うすいピンクの健康な歯肉からは、日々歯ブラシで磨き込んだ
真面目なお人柄が滲み出ているように思います。
私が大変な時期にも変わらず信頼してメインテナンスにきて下さり、医患協同で
プラークコントロールに励んだ結果、ひとまずの通過点である治療終了後10年を
まずはクリアーすることができました。
今後はこの状態を15年、20年と再治療なく維持していけたらと思っています。
Aさん、これからも健康で末永くお付き合いいただけることを楽しみにしています
