2018.08.22
上下左右最後臼歯部遠心に歯周病による著しい骨吸収を認めた一例(歯周再生療法)
お盆前から続く長雨ですっかり朝晩は肌寒さを感じるようになり、暑かった夏が早、懐かしく感じる
今日この頃です。皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
今年のブログは近況やイベントの報告、日常の一コマが多く、あまり治療例のアップをしていませんでしたので、
これから年末にかけて少しずつ最近の症例を整理し、「へ~、そうなんだ~」とか、「こういう治療もできるんだ」と、
何か皆様の参考になるようなアップ記事を掲載していきたいと思います。
本日は左上奥の歯ぐきが腫れたため歯科医院を受診したところ抜歯と言われたとのことで、平成28年当院に来院
されたTさんのお話をさせていただきます。下は初診来院時のTさんのレントゲン写真です。

平成28年初診時レントゲン写真
主訴である左上の最後方歯(◎)は歯周病が高度に進行しており、また元々親知らず(以下、智歯と記載)があったと
思われる隣接部で大きく虫歯も進行していました。精査したところ外側から奥側にかけてすべて根の先まで骨がない
状態でした。

初診時の左上奥
全体的には軽度~中等度の歯周炎でしたが、左上奥以外にも左下奥、右上下奥(〇)のすべて奥側で、局所的に重度の
歯周炎に進行していました。

話をお聞きしたところ、今から15年程前の20代後半に上下左右の智歯を抜歯して矯正治療を行ったのこと。
おそらく元々歯周病の罹患度(なりやすさ)がやや高いところに、智歯との間は磨くことが困難な状態になっていたため、
その部で特に歯周病が進行していたのではないかと思われました。
智歯を抜歯した後(矯正治療前)もしくは矯正治療後に歯周病治療を行えば良かったのですが、残念ながら歯周病に
罹患しているという現状説明も歯周病治療もなされないまま静かに進行し、無症状に15年が経過したのではないかと
想像されました

左上奥は外側、内側に骨の支えがあって奥のみが根尖まで進行したのであれば再生療法で保存を試みたのですが、
囲みのある骨がなく再生できる見込みがなかったため私も残念ながら残せないこと、また今一番問題なのは
特に左上奥、右上下奥の歯であり、このまま放置しておくと数年のうちに左上奥のように根の先まで骨がなくなって
しまう可能性があることをお伝えしました。
数回歯周病治療に通院された後半年ほど未来院となり、その後左上奥が更に欠けてしまったとのことで再来された時の
左上奥の状態です。

再来時の左上奥
わずかな歯根を残してほとんど歯は脱落しており、レントゲンをご覧になられてさすがにTさんも保存は不可能と
観念されたようで、やむなく抜歯させていただきました。
左上奥、右上下奥の奥側は根尖もしくは根尖近くまでの骨吸収を認めており、この3ヵ所は通常の歯周外科処置では
深い歯周ポケットが残る可能性が高く、骨の再生も不十分になると思われました。
まだ40代のTさんが一生涯この歯を維持していくための最善の治療として、GTR法(再生療法)をご提案したところ、
Tさんは治療を希望されました。
初診来院から半年の未来院期間を経て再来された時に、左下奥の歯周炎は更に進行(根尖まで骨吸収)していたため
根管治療を行いました。

再来時の左下奥
再生療法後8ヵ月~2年の現在のレントゲン写真です。

再生療法後の経過期間が一番短い左下奥だけはまだ十分な再生が得られていませんが、抜歯は回避することが
でき、今後は右上奥、右下奥同様、骨の再生状態を観察していく予定です。
初診時根尖までの骨吸収を認めていた右上奥は、歯髄診断を行ったところすでに失活していた(神経が死んでしまって
いた)ため根管治療を行った後、冠を装着しています。
萌出するスペースがなく十分に生えてこない(例えば横向きに生えている)智歯を、単に痛みがないからとか
抜歯するのはひとまず避けたいからという理由で放置されている患者さんは結構多いのですが、結果、Tさんのように
智歯の前方にある大切な歯が歯周病や虫歯になり、歯の寿命を縮めてしまうということが往々にしてありますので
注意が必要です。
但し、口腔内にすでに失活歯がある場合、失活歯は常に歯根破折のリスクを抱えていますので、割れが入ると突然
抜歯宣告されてしまいます。そういう場合の救済処置の一つとして智歯があれば歯牙移植が可能な場合もありますので、
私は年齢、口腔内全体(歯、歯周組織)の状態、智歯周囲の状態等を総合的に判断して、今抜歯した方が良いかどうか
を患者さんにお話しするようにしています。
Tさんの奥歯のように、局所的に根尖もしくは根尖近くまで重度垂直性に骨吸収してしまっている場合、骨欠損の状態
等により、エムドゲイン、GTR膜、自家骨等の移植骨を用いた再生療法が有効と考えており、当院では本当に必要と
思われる症例を選んでご提案するようにしています。

本日メインテナンスに来られたTさんから「再生されたところは再発や悪化がないというわけではないんですよね?」
とご質問をいただきました。
「そうなんです(笑)」
再生療法は根尖近くまで骨のなくなっていた歯周組織をより良好に治癒させ、メインテナンスできる歯周環境を整えた
ということであって、決してブラッシングやメインテナンスが不十分でも悪くなりにくいということではないんです。
歯周病治療に精通した歯科医院を選ぶことができれば、あとは健康な歯周組織を獲得し、長期に維持するための
鍵は実は患者さんご自身にあるのです。
Tさん、これからもスタッフ一同しっかりサポートしていきますので、末永くよろしくお願いしますネ
今日この頃です。皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
今年のブログは近況やイベントの報告、日常の一コマが多く、あまり治療例のアップをしていませんでしたので、
これから年末にかけて少しずつ最近の症例を整理し、「へ~、そうなんだ~」とか、「こういう治療もできるんだ」と、
何か皆様の参考になるようなアップ記事を掲載していきたいと思います。
本日は左上奥の歯ぐきが腫れたため歯科医院を受診したところ抜歯と言われたとのことで、平成28年当院に来院
されたTさんのお話をさせていただきます。下は初診来院時のTさんのレントゲン写真です。

平成28年初診時レントゲン写真
主訴である左上の最後方歯(◎)は歯周病が高度に進行しており、また元々親知らず(以下、智歯と記載)があったと
思われる隣接部で大きく虫歯も進行していました。精査したところ外側から奥側にかけてすべて根の先まで骨がない
状態でした。

初診時の左上奥
全体的には軽度~中等度の歯周炎でしたが、左上奥以外にも左下奥、右上下奥(〇)のすべて奥側で、局所的に重度の
歯周炎に進行していました。

話をお聞きしたところ、今から15年程前の20代後半に上下左右の智歯を抜歯して矯正治療を行ったのこと。
おそらく元々歯周病の罹患度(なりやすさ)がやや高いところに、智歯との間は磨くことが困難な状態になっていたため、
その部で特に歯周病が進行していたのではないかと思われました。
智歯を抜歯した後(矯正治療前)もしくは矯正治療後に歯周病治療を行えば良かったのですが、残念ながら歯周病に
罹患しているという現状説明も歯周病治療もなされないまま静かに進行し、無症状に15年が経過したのではないかと
想像されました


左上奥は外側、内側に骨の支えがあって奥のみが根尖まで進行したのであれば再生療法で保存を試みたのですが、
囲みのある骨がなく再生できる見込みがなかったため私も残念ながら残せないこと、また今一番問題なのは
特に左上奥、右上下奥の歯であり、このまま放置しておくと数年のうちに左上奥のように根の先まで骨がなくなって
しまう可能性があることをお伝えしました。
数回歯周病治療に通院された後半年ほど未来院となり、その後左上奥が更に欠けてしまったとのことで再来された時の
左上奥の状態です。

再来時の左上奥
わずかな歯根を残してほとんど歯は脱落しており、レントゲンをご覧になられてさすがにTさんも保存は不可能と
観念されたようで、やむなく抜歯させていただきました。
左上奥、右上下奥の奥側は根尖もしくは根尖近くまでの骨吸収を認めており、この3ヵ所は通常の歯周外科処置では
深い歯周ポケットが残る可能性が高く、骨の再生も不十分になると思われました。
まだ40代のTさんが一生涯この歯を維持していくための最善の治療として、GTR法(再生療法)をご提案したところ、
Tさんは治療を希望されました。
初診来院から半年の未来院期間を経て再来された時に、左下奥の歯周炎は更に進行(根尖まで骨吸収)していたため
根管治療を行いました。

再来時の左下奥
再生療法後8ヵ月~2年の現在のレントゲン写真です。

再生療法後の経過期間が一番短い左下奥だけはまだ十分な再生が得られていませんが、抜歯は回避することが
でき、今後は右上奥、右下奥同様、骨の再生状態を観察していく予定です。
初診時根尖までの骨吸収を認めていた右上奥は、歯髄診断を行ったところすでに失活していた(神経が死んでしまって
いた)ため根管治療を行った後、冠を装着しています。
萌出するスペースがなく十分に生えてこない(例えば横向きに生えている)智歯を、単に痛みがないからとか
抜歯するのはひとまず避けたいからという理由で放置されている患者さんは結構多いのですが、結果、Tさんのように
智歯の前方にある大切な歯が歯周病や虫歯になり、歯の寿命を縮めてしまうということが往々にしてありますので
注意が必要です。
但し、口腔内にすでに失活歯がある場合、失活歯は常に歯根破折のリスクを抱えていますので、割れが入ると突然
抜歯宣告されてしまいます。そういう場合の救済処置の一つとして智歯があれば歯牙移植が可能な場合もありますので、
私は年齢、口腔内全体(歯、歯周組織)の状態、智歯周囲の状態等を総合的に判断して、今抜歯した方が良いかどうか
を患者さんにお話しするようにしています。
Tさんの奥歯のように、局所的に根尖もしくは根尖近くまで重度垂直性に骨吸収してしまっている場合、骨欠損の状態
等により、エムドゲイン、GTR膜、自家骨等の移植骨を用いた再生療法が有効と考えており、当院では本当に必要と
思われる症例を選んでご提案するようにしています。

本日メインテナンスに来られたTさんから「再生されたところは再発や悪化がないというわけではないんですよね?」
とご質問をいただきました。
「そうなんです(笑)」
再生療法は根尖近くまで骨のなくなっていた歯周組織をより良好に治癒させ、メインテナンスできる歯周環境を整えた
ということであって、決してブラッシングやメインテナンスが不十分でも悪くなりにくいということではないんです。
歯周病治療に精通した歯科医院を選ぶことができれば、あとは健康な歯周組織を獲得し、長期に維持するための
鍵は実は患者さんご自身にあるのです。
Tさん、これからもスタッフ一同しっかりサポートしていきますので、末永くよろしくお願いしますネ

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2018.06.24
再生療法、意図的再植にて抜歯を回避したYさんの初診から10年後
もうすぐ7月。札幌はまだまだ夏を感じさせない涼しい毎日ですが皆様いかがお過ごしでしょうか、
なえぼ駅前歯科の大村です。
最近本当に忙しくなかなかブログを更新することができずにいましたが、今日は久しぶりの完全オフ、
朝から診療室に籠ってブログを作成中です(笑)。
本日は先週メインテナンスで来院されたYさんのお話をさせていただきます。
Yさんは平成20年、普段から歯のぐらつきを自覚しており、歯周病治療を希望しての来院でした。
初診時のレントゲン写真です。

レントゲン所見から臼歯部を中心に歯根長の1/2以上の骨吸収と上下左右の大臼歯部には6~10mm以上
の深い歯周ポケットを認め、全体に歯周病が進行していました。
左上奥から2番目(向かって右上奥から2番目、歯周ポケット10mm以上)の歯は初診時すでに外側に全く骨が
残っていなかったため、内側の根のみを保存しました。同年11月に全顎治療が終了し、メインテナンスに
入りました。
2年ほど良好にメインテナンスしていたのですが、右上最後臼歯の遠心根分岐部にしみる症状が出始めました。
サホライド(知覚過敏薬)を塗って対応していたのですが、遠方からのメインテナンス来院であったこともあり、
症状が強く出た時に近隣の歯科医院を受診されたようで、次回メインテナンス来院時にはすでに冠が装着されて
いました。冠の状態をみて、正直「どうしてうちに来てくれなかったかな~」と思いましたが、Yさんを責めることの
ないよう対応しました
案の定1年も経たずにこの歯の頬側の歯肉が腫れたためレントゲン写真を撮影した時の状態です(中央上)。
不適切な根管治療、不適切な冠形態(遠心根分岐部が全くブラッッシングできないオーバーな形になっていました)
による歯周-歯内病変の悪化により、頬側遠心根(頬側2根はほとんど分岐していない)は完全に骨がない状態
になっていました。
現状を説明し、まずは根管治療を行い、根管治療終了後治癒期間を待って再生療法(エムドゲイン+移植骨
(自家骨+バイオオス))を行いました。オペ時歯肉弁を開けると、頬側遠心根根尖は露出していました。
再生療法6年後の現在の右上奥の状態です。
レントゲン所見において再生療法による骨の再生と浅い歯周ポケットは維持されています

右上最後臼歯の治療経過
保険診療ではできない治療もありますが、適切な根管治療、保存の難しい高度歯周病罹患歯に対する再生療法、
その後のブラッシングしやすい冠形態とメインテナンスの質。どれ一つ欠けてもこの歯の保存、維持は難しかった
のではないかなと思います(勿論、患者さんの良好なプラークコントロールが前提です)。
初診から10年後の現在です。


現在Yさんは3ヵ月ごとのメインテナンス来院を継続され、ひとまず初診から10年、右上奥に再治療はありましたが、
メインテナンスから1歯も抜歯になることなく健康な口腔内を維持しています。
実は左上奥の歯も根管治療が奏功せず、意図的再植(根管内からのアプローチで改善しない場合、
歯根端切除術の適応外の歯に対し、一度抜歯し、口腔外で根尖部の処置を行う方法)を行っています。
再植時、根尖の感染部と上顎洞との間に骨の裏打ちがありませんでしたが、適切に処置すると歯はしっかりと
保存されていきます。

左上臼歯(奥から2番目の歯)の治療経過
最近、歯科医師の知人が歯周治療を希望して当院に来院しました。
医者の不養生と言っておりましたが
、当院に来院する直前に2歯、根管治療の予後不良で抜歯したとのこと
(元々リーマー(根管治療の器具)の破折から根尖病変が大きくなり、前医では結局対応できず知人も同意の上
で抜歯したとのこと)。
当院の歯周治療を信頼しての来院でしたので嬉しい反面、抜歯する前にどうしてうちに来てくれなかったかな~と、
救えたのに
と正直思いましたが、すでに抜歯されてしまっているので、そこはやんわり伝えるのみにとどめ、
現在歯周治療を進めているところです。
この「なえぼほのぼのブログ」のブログカテゴリー「破折歯保存」、「根管治療」に掲載した多くの治療例のように、
破折リーマーはまず除去を試み、また根管治療での対応が難しいケースは、歯根端切除術や意図的再植による
外科的歯内療法、更に外科処置においても予後不良となる典型例としての根尖部での歯根破折に対しては、
破折歯の接着保存治療がありますので、このブログを読んでいただいている方は、知人のように簡単に自分の歯を
あきらめずぜひセカンドオピニオンにご来院ください。
当院は現在あるいは生涯に渡り、自分の歯を失いたくないと思っておられる患者さんのご来院を心からお待ちしています。
なえぼ駅前歯科の大村です。
最近本当に忙しくなかなかブログを更新することができずにいましたが、今日は久しぶりの完全オフ、
朝から診療室に籠ってブログを作成中です(笑)。
本日は先週メインテナンスで来院されたYさんのお話をさせていただきます。
Yさんは平成20年、普段から歯のぐらつきを自覚しており、歯周病治療を希望しての来院でした。
初診時のレントゲン写真です。

レントゲン所見から臼歯部を中心に歯根長の1/2以上の骨吸収と上下左右の大臼歯部には6~10mm以上
の深い歯周ポケットを認め、全体に歯周病が進行していました。
左上奥から2番目(向かって右上奥から2番目、歯周ポケット10mm以上)の歯は初診時すでに外側に全く骨が
残っていなかったため、内側の根のみを保存しました。同年11月に全顎治療が終了し、メインテナンスに
入りました。
2年ほど良好にメインテナンスしていたのですが、右上最後臼歯の遠心根分岐部にしみる症状が出始めました。
サホライド(知覚過敏薬)を塗って対応していたのですが、遠方からのメインテナンス来院であったこともあり、
症状が強く出た時に近隣の歯科医院を受診されたようで、次回メインテナンス来院時にはすでに冠が装着されて
いました。冠の状態をみて、正直「どうしてうちに来てくれなかったかな~」と思いましたが、Yさんを責めることの
ないよう対応しました

案の定1年も経たずにこの歯の頬側の歯肉が腫れたためレントゲン写真を撮影した時の状態です(中央上)。
不適切な根管治療、不適切な冠形態(遠心根分岐部が全くブラッッシングできないオーバーな形になっていました)
による歯周-歯内病変の悪化により、頬側遠心根(頬側2根はほとんど分岐していない)は完全に骨がない状態
になっていました。
現状を説明し、まずは根管治療を行い、根管治療終了後治癒期間を待って再生療法(エムドゲイン+移植骨
(自家骨+バイオオス))を行いました。オペ時歯肉弁を開けると、頬側遠心根根尖は露出していました。
再生療法6年後の現在の右上奥の状態です。
レントゲン所見において再生療法による骨の再生と浅い歯周ポケットは維持されています


右上最後臼歯の治療経過
保険診療ではできない治療もありますが、適切な根管治療、保存の難しい高度歯周病罹患歯に対する再生療法、
その後のブラッシングしやすい冠形態とメインテナンスの質。どれ一つ欠けてもこの歯の保存、維持は難しかった
のではないかなと思います(勿論、患者さんの良好なプラークコントロールが前提です)。
初診から10年後の現在です。


現在Yさんは3ヵ月ごとのメインテナンス来院を継続され、ひとまず初診から10年、右上奥に再治療はありましたが、
メインテナンスから1歯も抜歯になることなく健康な口腔内を維持しています。
実は左上奥の歯も根管治療が奏功せず、意図的再植(根管内からのアプローチで改善しない場合、
歯根端切除術の適応外の歯に対し、一度抜歯し、口腔外で根尖部の処置を行う方法)を行っています。
再植時、根尖の感染部と上顎洞との間に骨の裏打ちがありませんでしたが、適切に処置すると歯はしっかりと
保存されていきます。

左上臼歯(奥から2番目の歯)の治療経過
最近、歯科医師の知人が歯周治療を希望して当院に来院しました。
医者の不養生と言っておりましたが

(元々リーマー(根管治療の器具)の破折から根尖病変が大きくなり、前医では結局対応できず知人も同意の上
で抜歯したとのこと)。
当院の歯周治療を信頼しての来院でしたので嬉しい反面、抜歯する前にどうしてうちに来てくれなかったかな~と、
救えたのに

現在歯周治療を進めているところです。
この「なえぼほのぼのブログ」のブログカテゴリー「破折歯保存」、「根管治療」に掲載した多くの治療例のように、
破折リーマーはまず除去を試み、また根管治療での対応が難しいケースは、歯根端切除術や意図的再植による
外科的歯内療法、更に外科処置においても予後不良となる典型例としての根尖部での歯根破折に対しては、
破折歯の接着保存治療がありますので、このブログを読んでいただいている方は、知人のように簡単に自分の歯を
あきらめずぜひセカンドオピニオンにご来院ください。
当院は現在あるいは生涯に渡り、自分の歯を失いたくないと思っておられる患者さんのご来院を心からお待ちしています。
2016.07.18
高度歯周病罹患歯に対して再生療法を行い、抜歯を回避した2症例
九州から関東にかけてようやく梅雨も明け、本格的な夏の到来となりました。自宅でも本日朝の
ランニング後に、扇風機を車庫から出して組み立てました。普段仕事をしている病院内と違い、休みの
時は暑いのが玉に瑕です(^^;。 皆様は暑い夏をいかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
5月から2ヶ月もブログを更新していない間にいろいろな出来事がありました。新しいところで先週末、
九州で行われた日本臨床歯周病学会に参加してきました。会場はアクロス福岡で宿泊は会場から
歩いて5分ほどの中洲のホテルにしました(早速「一蘭」本店でとんこつラーメンを食べ、おみやげも
Getしました(*´∀`*))。
博多で行われる学会は会場まで福岡空港から地下鉄で10分と非常にアクセスがよく、今回は個人的に
オーラルやポスターの発表もなかったので、合間を縫って柳川か太宰府くらいは行ってくるかなと思って
いたのですが、7月の九州は、まあ予想はしていたのですがやはり暑かった(´Д`;)。 ランニングシューズを
持っていったので朝走ったのですが、北海道とは湿度が全然違う、汗のかき方が半端じゃない、1日に
5回くらいお風呂に入りました~(笑)。ということで、夜、近場で料理に舌鼓をしたくらいで、昼間は学会と
ホテルの往復に終始しました
今年の学会のテーマは「歯周治療 成功の鍵」-再生療法 Step by Step-でした。近年歯科医療の
めざましい進歩により、エムドゲイン、GEM21、各種GTR膜や骨補填材などの再生材料が開発され、
少し以前であれば絶対に保存不可能と思われた高度歯周病罹患歯も条件によっては保存することが
可能になりました。
学会特別講演はスイス、米国など海外から講師をお招きし、またシンポジウムは日本の再生療法の
第一人者による講演で、私自身はお昼のランチョンセミナーもバイオオス、バイオガイドを用いた再生
療法のセミナーを受講しました。講師の根本先生は症例数が60~70ケースと話されていたので、私と
同じくらいの症例数、臨床経験かなと思いながら聞いていました。
歯科医師はこの歯は残せませんと抜歯してしまうことが仕事ではなく、また抜歯した後にインプラントを
入れることが仕事ではなく、保存の難しい歯を何とかうまく残せるよう技術を駆使して救済することが
本来の仕事だと、個人的には20年前に開業して以来ずっと変わらぬ想いで臨床に取り組んできました。
最終日、最後の講演者である白石和仁先生は、残せる歯も抜歯してインプラントという最近の風潮に
警鐘を鳴らすべく、「グローバルスタンダード(世界水準)」という言葉に惑わされるな!と私が以前のブログに
書いたことと全く同じ主旨の話をされていました。
本日は歯周病のため保存は困難と前医で言われ、HPを見て当院に来院されたNさんのお話を最初に
させていただきます。医療系の職業に就かれている40代前半のNさんは、これまで全く歯周病の自覚が
なかったそうですが、昨年突然奥歯の痛みと動揺を自覚したため他院を受診したところ、この歯は残せないと
言われたとのことでした。同部のレントゲン撮影と歯周ポケット診査を行ったところ、右上一番奥の歯の
奥側において根尖(根の先)まで完全に骨が喪失しているのを認めました。

少しずつ進行していた歯周病が根尖まで骨がなくなるに至り、突然痛みと大きな歯の動揺として症状が出現した
のだと想像できました。
常々このブログやHPでもお話しさせていただいておりますが、歯周病は「silent disease(静かなる病気)」と
言われており、かなり進行するまでほとんど自覚症状なく進行します。Nさんのこの歯はまさにsilent diseaseの
典型例だと思います。
歯周病治療の基礎を勤務医時代に師匠から学び、札幌臨床歯科研究会で更に磨きをかけて25年になります
が、この歯の歯周病はあまりに進行しており、10年以上前の再生療法という治療のoptionを持たなかった
当時の私であれば、前医と同じように保存は難しいとNさんに告げていたかもしれません。


現在、再生療法後5ヶ月とまだ再生途上ではありますが、すでに歯周ポケットは浅くなっており(厳密にはまだ
測ってはいけないのですが、(^^;)、)、次回来院時に再生療法後8ヶ月となりますので再評価を行い、冠を装着する
予定です。
もう一ケース、Tさん(50代)のケースもご紹介させていただきます。
私が担当した時点で、右下一番奥の歯には自費の冠がすでに装着されていましたが、大きな根尖病変と頬側
中央部には根尖に至る歯周ポケットを認めました。装着されているファイバーの土台は除去困難であるため、
まずは再植による外科的歯内療法(根管治療)を行いました。

処置2ヶ月後、根尖部の骨吸収像には著明な改善を認めましたが、写真の右上の丸で囲んだ部分の歯根膜は
すでに喪失しているのではないかと予測した通り、同部の歯周ポケットは依然として10mm以上と全く改善しません
でした。
そこで2回目の外科処置として、GTR膜と骨補填材(自家骨主体)による再生療法を行いました。


再生療法後9ヶ月時の再評価とレントゲン所見で、大幅な歯周ポケットの減少(歯周組織の改善)を認め、
現在メインテナンス継続中です(*´∀`*) Tさんのこの歯は二つの外科処置のcombinationにより無事保存する
ことができました。
歯を保存するための手立てはいろいろあります。どうやっても保存は難しいと判断せざるを得ないことも時には
ありますが、前医で抜歯宣告されて当院に来院される多くの患者様の歯のほとんどは実際には残っていきます。
10年後のメインテナンス時に、「あの時抜歯しなくて本当に良かったですね」と患者さんと喜びを共有することが、
私の歯科医師としての喜びであり使命であると思っています。
Nさん、Tさん、これからもご自分の歯を大切にして、生涯に渡り1本でも歯を失うことのないよう、末永くメインテ
ナンスにご来院ください(*´∀`*)

ランニング後に、扇風機を車庫から出して組み立てました。普段仕事をしている病院内と違い、休みの
時は暑いのが玉に瑕です(^^;。 皆様は暑い夏をいかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
5月から2ヶ月もブログを更新していない間にいろいろな出来事がありました。新しいところで先週末、
九州で行われた日本臨床歯周病学会に参加してきました。会場はアクロス福岡で宿泊は会場から
歩いて5分ほどの中洲のホテルにしました(早速「一蘭」本店でとんこつラーメンを食べ、おみやげも
Getしました(*´∀`*))。
博多で行われる学会は会場まで福岡空港から地下鉄で10分と非常にアクセスがよく、今回は個人的に
オーラルやポスターの発表もなかったので、合間を縫って柳川か太宰府くらいは行ってくるかなと思って
いたのですが、7月の九州は、まあ予想はしていたのですがやはり暑かった(´Д`;)。 ランニングシューズを
持っていったので朝走ったのですが、北海道とは湿度が全然違う、汗のかき方が半端じゃない、1日に
5回くらいお風呂に入りました~(笑)。ということで、夜、近場で料理に舌鼓をしたくらいで、昼間は学会と
ホテルの往復に終始しました

今年の学会のテーマは「歯周治療 成功の鍵」-再生療法 Step by Step-でした。近年歯科医療の
めざましい進歩により、エムドゲイン、GEM21、各種GTR膜や骨補填材などの再生材料が開発され、
少し以前であれば絶対に保存不可能と思われた高度歯周病罹患歯も条件によっては保存することが
可能になりました。
学会特別講演はスイス、米国など海外から講師をお招きし、またシンポジウムは日本の再生療法の
第一人者による講演で、私自身はお昼のランチョンセミナーもバイオオス、バイオガイドを用いた再生
療法のセミナーを受講しました。講師の根本先生は症例数が60~70ケースと話されていたので、私と
同じくらいの症例数、臨床経験かなと思いながら聞いていました。
歯科医師はこの歯は残せませんと抜歯してしまうことが仕事ではなく、また抜歯した後にインプラントを
入れることが仕事ではなく、保存の難しい歯を何とかうまく残せるよう技術を駆使して救済することが
本来の仕事だと、個人的には20年前に開業して以来ずっと変わらぬ想いで臨床に取り組んできました。
最終日、最後の講演者である白石和仁先生は、残せる歯も抜歯してインプラントという最近の風潮に
警鐘を鳴らすべく、「グローバルスタンダード(世界水準)」という言葉に惑わされるな!と私が以前のブログに
書いたことと全く同じ主旨の話をされていました。
本日は歯周病のため保存は困難と前医で言われ、HPを見て当院に来院されたNさんのお話を最初に
させていただきます。医療系の職業に就かれている40代前半のNさんは、これまで全く歯周病の自覚が
なかったそうですが、昨年突然奥歯の痛みと動揺を自覚したため他院を受診したところ、この歯は残せないと
言われたとのことでした。同部のレントゲン撮影と歯周ポケット診査を行ったところ、右上一番奥の歯の
奥側において根尖(根の先)まで完全に骨が喪失しているのを認めました。

少しずつ進行していた歯周病が根尖まで骨がなくなるに至り、突然痛みと大きな歯の動揺として症状が出現した
のだと想像できました。
常々このブログやHPでもお話しさせていただいておりますが、歯周病は「silent disease(静かなる病気)」と
言われており、かなり進行するまでほとんど自覚症状なく進行します。Nさんのこの歯はまさにsilent diseaseの
典型例だと思います。
歯周病治療の基礎を勤務医時代に師匠から学び、札幌臨床歯科研究会で更に磨きをかけて25年になります
が、この歯の歯周病はあまりに進行しており、10年以上前の再生療法という治療のoptionを持たなかった
当時の私であれば、前医と同じように保存は難しいとNさんに告げていたかもしれません。


現在、再生療法後5ヶ月とまだ再生途上ではありますが、すでに歯周ポケットは浅くなっており(厳密にはまだ
測ってはいけないのですが、(^^;)、)、次回来院時に再生療法後8ヶ月となりますので再評価を行い、冠を装着する
予定です。
もう一ケース、Tさん(50代)のケースもご紹介させていただきます。
私が担当した時点で、右下一番奥の歯には自費の冠がすでに装着されていましたが、大きな根尖病変と頬側
中央部には根尖に至る歯周ポケットを認めました。装着されているファイバーの土台は除去困難であるため、
まずは再植による外科的歯内療法(根管治療)を行いました。

処置2ヶ月後、根尖部の骨吸収像には著明な改善を認めましたが、写真の右上の丸で囲んだ部分の歯根膜は
すでに喪失しているのではないかと予測した通り、同部の歯周ポケットは依然として10mm以上と全く改善しません
でした。
そこで2回目の外科処置として、GTR膜と骨補填材(自家骨主体)による再生療法を行いました。


再生療法後9ヶ月時の再評価とレントゲン所見で、大幅な歯周ポケットの減少(歯周組織の改善)を認め、
現在メインテナンス継続中です(*´∀`*) Tさんのこの歯は二つの外科処置のcombinationにより無事保存する
ことができました。
歯を保存するための手立てはいろいろあります。どうやっても保存は難しいと判断せざるを得ないことも時には
ありますが、前医で抜歯宣告されて当院に来院される多くの患者様の歯のほとんどは実際には残っていきます。
10年後のメインテナンス時に、「あの時抜歯しなくて本当に良かったですね」と患者さんと喜びを共有することが、
私の歯科医師としての喜びであり使命であると思っています。
Nさん、Tさん、これからもご自分の歯を大切にして、生涯に渡り1本でも歯を失うことのないよう、末永くメインテ
ナンスにご来院ください(*´∀`*)

2014.07.13
日本臨床歯周病学会に参加して -歯科における再生医療の現状と今後-
7月に入り北海道もいよいよ暑くなってきました。
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
気づけばもう7月・・・。
5月、6月は忙しさと体調不良のためブログの更新をすっかりご無沙汰してしまいました
6月に頚椎ヘルニアを患ってしまい、椎間板のつぶれ方が良くなかったのか、
右肩甲骨~肘~小指全体が強い自発痛としびれで、毎日大量の痛み止めを飲みつつ
診療という日々でした
現在1ヶ月が過ぎしびれはまだあるものの痛みはかなり軽減し、今後はできるだけ再発しないよう
しっかりリハビリに努めたいと思っています。
さてそのような状況の中、6月21日、22日の両日、名古屋での日本臨床歯周病学会に
参加してきました。今回のメインテーマは重度歯周病罹患歯に対する再生療法の最前線
ということで、海外、日本の著名な歯科医師による特別講演、シンポジウムが行われました。
当院でもエムドゲインによる再生療法は15年前から、また高度歯周病罹患歯に対する
二種併用、三種併用の再生療法は8年前から行っておりますが、予知性の高い再生療法の
現在の臨床的到達点を再確認しようとの思いで聴講しました。
イタリアのベルン大学で歯周病学教授をされているトネッティー先生が、根の先まで完全に骨の
喪失している高度歯周病罹患歯25歯に対する再生療法の10年経過を出されていたことが
一番印象に残りました。
治療後初期に思ったような再生が得られず抜歯した2歯以外は、その後1歯も抜歯にならずに
維持されていました。
「一見抜歯と思われるような歯もうまく処置してあげると、我々が予想している以上に長期維持が
可能である」
これは私も自分の臨床経験から感じている臨床実感です。そして現在私の臨床において、それを
より可能にしてくれているのが再生療法です。
患者Tさんは他院で抜歯宣告された重度歯周病罹患歯の保存治療を希望され、当院に来院
されました。初診時右下奥の歯はグラグラしており、↓のところは根尖近くまで骨が吸収し
10mm以上の歯周ポケットを認めました。
右は治療終了後ですが、二種併用の再生療法により根尖近くまで骨が喪失していた部位には
まるでそこに歯周病がなかったかのような骨の再生が認められます。

歯周病によって失った骨を積極的に再生させるための治療法は、今から30年程前、歯科医療の先進国
であるスウェーデンのニーマン、リンデ先生らによりGTR法としてこの世に送り出されました。
その後エムドゲインなどの再生材料、自家骨に近い代用骨の開発などにより、現在予知性の高い高度
先進医療として歯科界において認知されています。
しかしながら現在の再生療法は、その歯に歯根膜という組織(歯根周囲に付着し、再生の鍵となる組織)
がある程度存在しなければ成功しません。
現在、この歯根膜そのものを採取、培養し、歯根膜細胞シートを作製して、歯根に定着させるという
試みがなされており、近い将来、自然脱落するような高度の歯周病罹患歯であっても保存できる時代が
くるのではないかと思っています。
昨今、i PS細胞やSTAP細胞に関する報道が新聞紙面を賑わせていましたが、歯科においても
i PS細胞による歯の再生が試みられています。遠い将来、i PS細胞から歯胚(歯のもと)を作製し、
それを歯のないところに移植すると再び歯が萌出してくるというような時代がくるかもしれません
(まあ、おそらく私が現役のうちには無理だとは思いますが、笑)。
1960年代にスウェーデンのブローネマルク先生が開発し、歯科の治療を革命的に変えた
チタンによる骨結合インプラントでさえその頃には過去の遺物になっているかもしれませんネ。
今後もご自身の歯を残したいという患者さんのために再生療法に磨きをかけ、これからの歯科における
再生医療の行く末を、私自身が歯科医としての幕を閉じるまでしっかり見守っていきたいと思います。

皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
気づけばもう7月・・・。
5月、6月は忙しさと体調不良のためブログの更新をすっかりご無沙汰してしまいました

6月に頚椎ヘルニアを患ってしまい、椎間板のつぶれ方が良くなかったのか、
右肩甲骨~肘~小指全体が強い自発痛としびれで、毎日大量の痛み止めを飲みつつ
診療という日々でした

現在1ヶ月が過ぎしびれはまだあるものの痛みはかなり軽減し、今後はできるだけ再発しないよう
しっかりリハビリに努めたいと思っています。
さてそのような状況の中、6月21日、22日の両日、名古屋での日本臨床歯周病学会に
参加してきました。今回のメインテーマは重度歯周病罹患歯に対する再生療法の最前線
ということで、海外、日本の著名な歯科医師による特別講演、シンポジウムが行われました。
当院でもエムドゲインによる再生療法は15年前から、また高度歯周病罹患歯に対する
二種併用、三種併用の再生療法は8年前から行っておりますが、予知性の高い再生療法の
現在の臨床的到達点を再確認しようとの思いで聴講しました。
イタリアのベルン大学で歯周病学教授をされているトネッティー先生が、根の先まで完全に骨の
喪失している高度歯周病罹患歯25歯に対する再生療法の10年経過を出されていたことが
一番印象に残りました。
治療後初期に思ったような再生が得られず抜歯した2歯以外は、その後1歯も抜歯にならずに
維持されていました。
「一見抜歯と思われるような歯もうまく処置してあげると、我々が予想している以上に長期維持が
可能である」
これは私も自分の臨床経験から感じている臨床実感です。そして現在私の臨床において、それを
より可能にしてくれているのが再生療法です。
患者Tさんは他院で抜歯宣告された重度歯周病罹患歯の保存治療を希望され、当院に来院
されました。初診時右下奥の歯はグラグラしており、↓のところは根尖近くまで骨が吸収し
10mm以上の歯周ポケットを認めました。
右は治療終了後ですが、二種併用の再生療法により根尖近くまで骨が喪失していた部位には
まるでそこに歯周病がなかったかのような骨の再生が認められます。

歯周病によって失った骨を積極的に再生させるための治療法は、今から30年程前、歯科医療の先進国
であるスウェーデンのニーマン、リンデ先生らによりGTR法としてこの世に送り出されました。
その後エムドゲインなどの再生材料、自家骨に近い代用骨の開発などにより、現在予知性の高い高度
先進医療として歯科界において認知されています。
しかしながら現在の再生療法は、その歯に歯根膜という組織(歯根周囲に付着し、再生の鍵となる組織)
がある程度存在しなければ成功しません。
現在、この歯根膜そのものを採取、培養し、歯根膜細胞シートを作製して、歯根に定着させるという
試みがなされており、近い将来、自然脱落するような高度の歯周病罹患歯であっても保存できる時代が
くるのではないかと思っています。
昨今、i PS細胞やSTAP細胞に関する報道が新聞紙面を賑わせていましたが、歯科においても
i PS細胞による歯の再生が試みられています。遠い将来、i PS細胞から歯胚(歯のもと)を作製し、
それを歯のないところに移植すると再び歯が萌出してくるというような時代がくるかもしれません
(まあ、おそらく私が現役のうちには無理だとは思いますが、笑)。
1960年代にスウェーデンのブローネマルク先生が開発し、歯科の治療を革命的に変えた
チタンによる骨結合インプラントでさえその頃には過去の遺物になっているかもしれませんネ。
今後もご自身の歯を残したいという患者さんのために再生療法に磨きをかけ、これからの歯科における
再生医療の行く末を、私自身が歯科医としての幕を閉じるまでしっかり見守っていきたいと思います。

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