2019.06.09
重度歯周炎に罹患していたTさんの治療例(歯牙移植、再生再植、矯正治療、後編)
今日も良い天気ですね~。
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
6月に入り、ここ札幌も日増しに暖かくなってきました。
先週からYOSAKOIソーラン祭りが始まっており、今日がいよいよフィナーレです
また昨日、今日とこの暖かな日差しの中、北大祭も行われており、1年生やサークル団体が中心となった様々な模擬店が
出店されているようです。
当院に直結した旧苗穂駅の取り壊し作業もいよいよ始まり、跡地に何ができるのかはわかりませんが、当院の周辺は
苗穂新駅直結のツインのタワーマンションの建築もすでに始まっており、確実に再開発が進んでいるようです。
先週2日の日曜日、天候に恵まれた千歳JAL国際マラソンでしたが、原生林に囲まれたコースの中、雨上がりの路面
状態も程良く、ハーフを練習のつもりで気持ちよくゆっくり(2時間半)完走してきました。
スタート地点でたまき矯正歯科の玉木先生ともお会いし、玉木先生は例年通りフルマラソンにエントリーされていました
(2週間前に罹った風邪が長引き、体調は不良とのことでしたが)。
最後までゆっくり走ったためあまり足にも来ず、もう少し走れたかな~と思いつつも、まあ相変わらずの練習不足なので
こんなものだと思います
ところで先日、九州の中野充先生がご逝去されたという訃報が入りました。
2000年10月、日本臨床歯周病学会のアンケートをもとに、「保険診療における歯周治療のあり方を考える」という
座談会が東京の医歯薬出版社で行われ、当時学会長であった関東支部の鈴木文雄先生、九州支部長であった
中野充先生、そして北海道から若手の歯科医師ということで私に白羽の矢が立ち、私にとっては初めてのメジャー
デビューであり、忘れられない座談会となりました(2001年4月号の「歯界展望」巻頭特集に掲載されました)。
まだ開業4年目の30代でしたが、鈴木先生、中野先生は日本臨床歯周病談話会の私にとっては雲の上の方でした。
座談会がご縁で毎年年賀状をいただくようになり、ご心配をお掛けした時期もありましたが、学会でお会いした時には
いつも「先生、元気!」とお声をかけていただいたことは私にとって忘れられない思い出です。
中野先生、ありがとうございました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
さて本日は前回のブログでお伝えしたTさん(現在71才、男性)のお話をさせていただきます。
Tさんは7年前(当時65才)の平成24年、左上奥、右下奥がグラグラして痛いということで当院に来院されました。
右上奥の4歯はすでになく、義歯が装着されていました。
初診時のレントゲンと口腔内写真です。

重度歯周炎(7mm以上は重度)に罹患した歯が臼歯部を中心に多く認められ、10mmもしくは10mm以上の保存が難しい
と思われる歯も7歯に見られました。


4年前、残っていた右上奥歯をすべて抜歯し、入れ歯(義歯)になったとのこと。

保存の難しい6歯を初診時抜歯してしまうと治療計画はかなりシンプルにはなりますが、アイヒナーB4症例(残存歯による
臼歯部の咬合支持がなく、前歯部のみが咬合接触)となってしまいますので、すでにフレアーアウトしている上顎前歯の
状況からも、将来上顎は総義歯への道を辿る可能性が高い症例であると考えました。Tさんは予算の関係でインプラント
までは難しいということになりましたが、インプラントなしでもできるなら義歯ではなくブリッジにして差し上げられないものかと
考えました(ここまでは前回のブログと一緒ですね、
)
まずは歯周基本治療と保存の難しい左上臼歯部(5、6、7)の抜髄、自然挺出、上顎の仮義歯装着を行いました。
私が初診時の診査から考えた見立てと治療計画です。


専門的な歯科用語ばかりで申し訳ありません
簡単に解説させていただくと、
①できるだけ歯の保存に努める
②右下8を右上5、6部に歯牙移植を行う
③矯正治療により前歯部のガイドをしっかり作る
④ブリッジが可能であれば、すべての残存歯をクロスアーチに連結固定する
⑤アイヒナーB4になりそうなケースをアイヒナーB2(且つ、左右で臼歯部の咬合支持を作る)に欠損形態を改変する
上下左右の受圧、加圧のバランスを整える
⑥ブラキシズム、咀嚼力のコントロールを行う
⑦歯周治療をしっかり行い、その後のメインテナンスを継続する となります(簡単ではなかったですね
)
左上臼歯部の治療経過です。

左上6、7が保存できるかどうかがブリッジで行うための鍵でしたが、歯周外科処置前に保存できると考えていた
左上6の口蓋根(P)と左上7(3根中、近心頬側根(MB)ともう1根を保存予定)はいずれも根分岐部で根尖まで
歯周病が進行しており、根面の廓清中に抜けてきてしまいました
仕方なく残存している歯根膜を大切にしつつ、口腔外で残った歯根面の歯石等を除去し、エムドゲインを塗布した
後、抜歯窩に戻しました。
7は根間中隔の骨がサクサクですべてなく、ひとつの抜歯窩になっていたため、2根を戻してもブカブカの状態であった
ことから、その時はβ-TCPという骨移植材で周囲を埋めた後、できるだけ歯肉を寄せて縫合し、スーパーボンドにて
固定を行いました。

このように経過をみていきました。
次に右上臼歯部の治療経過です。

歯牙移植後、根分岐部の付着もしっかり得られていたのですが、移植後3ヵ月3週で仮歯にて少し咬合させたところ
頬側の根分岐部で急激に付着を喪失してしまい、結果分割を余儀なくされてしまいました。

この論文は当時すでに知っていましたが、少しでも早くブリッジで咬合させて治療を進めたいと考えたことが、結果として
大きな反省点となりました。もう2ヵ月待って根分岐部の骨が再生された後に負荷をかけるべきであったと思います。
次に矯正治療に関してですが、歯周外科処置終了後以下のような仮歯を装着し、左上7口蓋根のアップライトを行った後、
マウスピース矯正を行っていきました。

治療終了時の口腔内写真とレントゲン写真です。

矯正治療後の後戻り防止も兼ね、ワイヤー+スーパーボンドにて上下顎前歯部は臼歯部と連結固定しています。

予後の不安なところもありますが、歯周ポケットは概ね4~5mm以内とメインテナンスできる歯周環境は確保できました。
4年後の現在の状態です。


これまで一度も腫れたことはなく、日常生活においては全く問題なく経過してはいますが、4年後のレントゲン写真をみますと、
再生再植を行った左上奥だけが少しずつ歯周病の進行を認めます。

左上6、7 は今後問題が顕著になってきたら、速やかに次の一手に踏み切る必要があり、その一手は6 に1本だけ
インプラントの追加を考えています。
ここまで専門用語の多い、理解しにくい長文をお読みいただきありがとうございました。
最後になりましたが、Tさんの今後のご健康とご多幸を祈りながら、口腔健康を通して少しでも T さんの幸せに貢献できます
よう、スタッフ一同一生懸命対応させていただきますので、Tさん、今後も末永くご来院をお待ちしております
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
6月に入り、ここ札幌も日増しに暖かくなってきました。
先週からYOSAKOIソーラン祭りが始まっており、今日がいよいよフィナーレです

また昨日、今日とこの暖かな日差しの中、北大祭も行われており、1年生やサークル団体が中心となった様々な模擬店が
出店されているようです。
当院に直結した旧苗穂駅の取り壊し作業もいよいよ始まり、跡地に何ができるのかはわかりませんが、当院の周辺は
苗穂新駅直結のツインのタワーマンションの建築もすでに始まっており、確実に再開発が進んでいるようです。
先週2日の日曜日、天候に恵まれた千歳JAL国際マラソンでしたが、原生林に囲まれたコースの中、雨上がりの路面
状態も程良く、ハーフを練習のつもりで気持ちよくゆっくり(2時間半)完走してきました。
スタート地点でたまき矯正歯科の玉木先生ともお会いし、玉木先生は例年通りフルマラソンにエントリーされていました
(2週間前に罹った風邪が長引き、体調は不良とのことでしたが)。
最後までゆっくり走ったためあまり足にも来ず、もう少し走れたかな~と思いつつも、まあ相変わらずの練習不足なので
こんなものだと思います

ところで先日、九州の中野充先生がご逝去されたという訃報が入りました。
2000年10月、日本臨床歯周病学会のアンケートをもとに、「保険診療における歯周治療のあり方を考える」という
座談会が東京の医歯薬出版社で行われ、当時学会長であった関東支部の鈴木文雄先生、九州支部長であった
中野充先生、そして北海道から若手の歯科医師ということで私に白羽の矢が立ち、私にとっては初めてのメジャー
デビューであり、忘れられない座談会となりました(2001年4月号の「歯界展望」巻頭特集に掲載されました)。
まだ開業4年目の30代でしたが、鈴木先生、中野先生は日本臨床歯周病談話会の私にとっては雲の上の方でした。
座談会がご縁で毎年年賀状をいただくようになり、ご心配をお掛けした時期もありましたが、学会でお会いした時には
いつも「先生、元気!」とお声をかけていただいたことは私にとって忘れられない思い出です。
中野先生、ありがとうございました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
さて本日は前回のブログでお伝えしたTさん(現在71才、男性)のお話をさせていただきます。
Tさんは7年前(当時65才)の平成24年、左上奥、右下奥がグラグラして痛いということで当院に来院されました。
右上奥の4歯はすでになく、義歯が装着されていました。
初診時のレントゲンと口腔内写真です。

重度歯周炎(7mm以上は重度)に罹患した歯が臼歯部を中心に多く認められ、10mmもしくは10mm以上の保存が難しい
と思われる歯も7歯に見られました。


4年前、残っていた右上奥歯をすべて抜歯し、入れ歯(義歯)になったとのこと。

保存の難しい6歯を初診時抜歯してしまうと治療計画はかなりシンプルにはなりますが、アイヒナーB4症例(残存歯による
臼歯部の咬合支持がなく、前歯部のみが咬合接触)となってしまいますので、すでにフレアーアウトしている上顎前歯の
状況からも、将来上顎は総義歯への道を辿る可能性が高い症例であると考えました。Tさんは予算の関係でインプラント
までは難しいということになりましたが、インプラントなしでもできるなら義歯ではなくブリッジにして差し上げられないものかと
考えました(ここまでは前回のブログと一緒ですね、

まずは歯周基本治療と保存の難しい左上臼歯部(5、6、7)の抜髄、自然挺出、上顎の仮義歯装着を行いました。
私が初診時の診査から考えた見立てと治療計画です。


専門的な歯科用語ばかりで申し訳ありません

簡単に解説させていただくと、
①できるだけ歯の保存に努める
②右下8を右上5、6部に歯牙移植を行う
③矯正治療により前歯部のガイドをしっかり作る
④ブリッジが可能であれば、すべての残存歯をクロスアーチに連結固定する
⑤アイヒナーB4になりそうなケースをアイヒナーB2(且つ、左右で臼歯部の咬合支持を作る)に欠損形態を改変する
上下左右の受圧、加圧のバランスを整える
⑥ブラキシズム、咀嚼力のコントロールを行う
⑦歯周治療をしっかり行い、その後のメインテナンスを継続する となります(簡単ではなかったですね

左上臼歯部の治療経過です。

左上6、7が保存できるかどうかがブリッジで行うための鍵でしたが、歯周外科処置前に保存できると考えていた
左上6の口蓋根(P)と左上7(3根中、近心頬側根(MB)ともう1根を保存予定)はいずれも根分岐部で根尖まで
歯周病が進行しており、根面の廓清中に抜けてきてしまいました

仕方なく残存している歯根膜を大切にしつつ、口腔外で残った歯根面の歯石等を除去し、エムドゲインを塗布した
後、抜歯窩に戻しました。
7は根間中隔の骨がサクサクですべてなく、ひとつの抜歯窩になっていたため、2根を戻してもブカブカの状態であった
ことから、その時はβ-TCPという骨移植材で周囲を埋めた後、できるだけ歯肉を寄せて縫合し、スーパーボンドにて
固定を行いました。

このように経過をみていきました。
次に右上臼歯部の治療経過です。

歯牙移植後、根分岐部の付着もしっかり得られていたのですが、移植後3ヵ月3週で仮歯にて少し咬合させたところ
頬側の根分岐部で急激に付着を喪失してしまい、結果分割を余儀なくされてしまいました。

この論文は当時すでに知っていましたが、少しでも早くブリッジで咬合させて治療を進めたいと考えたことが、結果として
大きな反省点となりました。もう2ヵ月待って根分岐部の骨が再生された後に負荷をかけるべきであったと思います。
次に矯正治療に関してですが、歯周外科処置終了後以下のような仮歯を装着し、左上7口蓋根のアップライトを行った後、
マウスピース矯正を行っていきました。

治療終了時の口腔内写真とレントゲン写真です。

矯正治療後の後戻り防止も兼ね、ワイヤー+スーパーボンドにて上下顎前歯部は臼歯部と連結固定しています。

予後の不安なところもありますが、歯周ポケットは概ね4~5mm以内とメインテナンスできる歯周環境は確保できました。
4年後の現在の状態です。


これまで一度も腫れたことはなく、日常生活においては全く問題なく経過してはいますが、4年後のレントゲン写真をみますと、
再生再植を行った左上奥だけが少しずつ歯周病の進行を認めます。

左上6、7 は今後問題が顕著になってきたら、速やかに次の一手に踏み切る必要があり、その一手は6 に1本だけ
インプラントの追加を考えています。
ここまで専門用語の多い、理解しにくい長文をお読みいただきありがとうございました。
最後になりましたが、Tさんの今後のご健康とご多幸を祈りながら、口腔健康を通して少しでも T さんの幸せに貢献できます
よう、スタッフ一同一生懸命対応させていただきますので、Tさん、今後も末永くご来院をお待ちしております

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2019.05.27
重度歯周炎に罹患していたTさんの治療例(歯牙移植、再生再植、矯正治療、前編)
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
5月というのに今日も暑いですね~。昨日は北海道佐呂間町で39.5℃を記録し、通年を通して北海道の観測史上最高
気温となったようです。札幌も連日31℃と真夏日を記録していますが、来週の千歳JALマラソンに向け、昨日はお昼前に
自宅のある琴似から手稲前田までの往復15kmくらいをゆっくり2時間以上走りました。日々多忙な仕事の影響でたいぶ
体が弱っていますが(笑)、今週1週間は体調をできるだけ整えたいと思います。

18日(土)は5年ぶりに北大歯学部硬式テニス部のOB総会&新入部員歓迎会に出席しました。
しばらくご無沙汰していたのですが、今回、硬式テニス部の顧問がK先生からこの4月に薬理の教授として赴任された
I 先生に変わるということで、お二人への挨拶をと思い久し振りに顔を出しました。
I 先生は私の少し後輩で一緒にダブルスを組んだこともあるのですが、卒後は東京医科歯科大学の大学院に進んだ
ため実に30年ぶりくらいの対面でした。旭川から出席していた友人のY先生と3人で1次会がお開きになっても学生さんに
付き合って2次会に参加し、その後は3人で3次会に行って昔話に花を咲かせました。蛇足なのですが、娘が今年歯学部に
入学し、高校でやっていた硬式テニス部に入部したのでクラブ創設以来、初めての親子でテニス部となってしまいました
また一昨日の25日(土)は北大の医局時代にお世話になったK先生、T先生の退任を祝う会が札幌グランドホテルで
行われ、私も出席してきました。入局38年ですから当医局の歴史そのものと言っても決して言い過ぎではなく、本当に
長い間お疲れさまでしたという思いです。30年前、卒業したてで臨床を全くわからない新人医局員の私もここで補綴の
基礎を学びました。秋田からは同期のK先生が来ていて、会うのは20年ぶりくらいでしょうか、テーブルが隣ということも
あって、近況や昔のことも懐かしく思い出されて話も弾み、体は1週間の診療でだいぶ疲れていましたが、楽しい一時を
過ごすことができました。
毎週末、何かしらの予定が入っていて、あまり休んでいる暇なくまた月曜日の診療が始まってしまうのですが、大変忙しく
しながらも現在、健康で仕事も家庭も充実した50代を過ごせていることは本当に幸せなことだな~と思う次第です。

ところで更に話が横道にそれてしまうのですが
、5月は当院スタッフ I さんとFさんのお誕生日月です
例年ケーキやピザをとってお祝いしているのですが、今年は少し違う企画をと思い、I さんに「回転寿司食べ放題」を
提案したところ、「それすごく良いですね」(笑)ということになり、I さんの誕生日当日、午前中の診療を11:30までとし、
お昼はトリトン伏古店で誕生会を行いました。
12時前というのにボックス席はすでに埋まっておりカウンター席となりましたが、着席するや否や、早速本日おすすめの
札とメニュー表に首っぴきで注文用紙にオーダーし始め、結局、「お誕生日おめでとう!」の発声もないまま、皆食べ始めて
しまいました(
いいんですよ~、今日は I さんの誕生日ということで、好きなだけお寿司を食べられるのですから)。
でもオーダー時に、すかさず「先生は何を注文されますか?」と聞いてくれるのは、そこはやはり気配り上手の I さん。
皆が遠慮することのないよう(ま、うちはないかな)、高くておいしそうな(笑)ネタを I さんと一緒にまずはいくつか注文
しました。結局、1時間弱くらいで皆満腹となってしまい、食後のデザートを最後にいただいて終了となりました。全員が
お腹いっぱい食べてもギャル曽根さんが一人で食べる量にも達しないのですからかわいいものです。
会食直後に「またやりたいですね~」とスタッフNさんからの提案。私の誕生日にはまた「回転寿司食べ放題」を行おうと
いうことになりました(笑、スタッフに大いに祝ってもらえるのですから嬉しい限りです)。
ちなみに今回は集合写真もいただいたお寿司の写真もありません。I さん曰く、食べる方に集中し過ぎていてすっかり
忘れていたのだとか。ということで、この楽しい和やかな雰囲気を写真で皆様にお送りできずちょっぴり残念です。
さて本日、令和最初の「なえぼほのぼのブログ」治療例は、先週メインテナンス来院されたTさん(71才、男性)のお話を
させていただきます。Tさんは7年前の平成24年、左上奥、右下奥がグラグラして痛いということで当院に来院されました。
右上奥の4歯はすでになく、義歯が装着されていました。
初診時のレントゲンと口腔内写真です。

重度歯周炎(7mm以上は重度)に罹患した歯が臼歯部を中心に多く認められ、10mmもしくは10mm以上の保存が難しいと
思われる歯も7歯に見られました。


4年前、残っていた右上奥歯をすべて抜歯し、入れ歯(義歯)になったとのこと。

保存の難しい6歯を初診時抜歯してしまうと治療計画はかなりシンプルにはなりますが、前々回のなえぼほのぼのブログ
「生涯のかかりつけ歯科医を目指して」(http://naebohonobono.blog.fc2.com/blog-entry-137.htm)のケースでも述べた
通り、アイヒナーB4症例となってしまいますので、すでにフレアーアウトしている上顎前歯の状況からも、将来上顎は
総義歯への道を辿る可能性が高い症例であると考えました。Tさんは予算の関係でインプラントまでは難しいということに
なりましたが、インプラントなしでもできるなら義歯ではなくブリッジにして差し上げられないものかと考えました。
さてここまで話が長くなってしまいましたので、この話の続きは次回のなえぼほのぼのブログで述べたいと思います。
近日中にアップを予定していますのでご期待ください
5月というのに今日も暑いですね~。昨日は北海道佐呂間町で39.5℃を記録し、通年を通して北海道の観測史上最高
気温となったようです。札幌も連日31℃と真夏日を記録していますが、来週の千歳JALマラソンに向け、昨日はお昼前に
自宅のある琴似から手稲前田までの往復15kmくらいをゆっくり2時間以上走りました。日々多忙な仕事の影響でたいぶ
体が弱っていますが(笑)、今週1週間は体調をできるだけ整えたいと思います。

18日(土)は5年ぶりに北大歯学部硬式テニス部のOB総会&新入部員歓迎会に出席しました。
しばらくご無沙汰していたのですが、今回、硬式テニス部の顧問がK先生からこの4月に薬理の教授として赴任された
I 先生に変わるということで、お二人への挨拶をと思い久し振りに顔を出しました。
I 先生は私の少し後輩で一緒にダブルスを組んだこともあるのですが、卒後は東京医科歯科大学の大学院に進んだ
ため実に30年ぶりくらいの対面でした。旭川から出席していた友人のY先生と3人で1次会がお開きになっても学生さんに
付き合って2次会に参加し、その後は3人で3次会に行って昔話に花を咲かせました。蛇足なのですが、娘が今年歯学部に
入学し、高校でやっていた硬式テニス部に入部したのでクラブ創設以来、初めての親子でテニス部となってしまいました

また一昨日の25日(土)は北大の医局時代にお世話になったK先生、T先生の退任を祝う会が札幌グランドホテルで
行われ、私も出席してきました。入局38年ですから当医局の歴史そのものと言っても決して言い過ぎではなく、本当に
長い間お疲れさまでしたという思いです。30年前、卒業したてで臨床を全くわからない新人医局員の私もここで補綴の
基礎を学びました。秋田からは同期のK先生が来ていて、会うのは20年ぶりくらいでしょうか、テーブルが隣ということも
あって、近況や昔のことも懐かしく思い出されて話も弾み、体は1週間の診療でだいぶ疲れていましたが、楽しい一時を
過ごすことができました。
毎週末、何かしらの予定が入っていて、あまり休んでいる暇なくまた月曜日の診療が始まってしまうのですが、大変忙しく
しながらも現在、健康で仕事も家庭も充実した50代を過ごせていることは本当に幸せなことだな~と思う次第です。

ところで更に話が横道にそれてしまうのですが


例年ケーキやピザをとってお祝いしているのですが、今年は少し違う企画をと思い、I さんに「回転寿司食べ放題」を
提案したところ、「それすごく良いですね」(笑)ということになり、I さんの誕生日当日、午前中の診療を11:30までとし、
お昼はトリトン伏古店で誕生会を行いました。
12時前というのにボックス席はすでに埋まっておりカウンター席となりましたが、着席するや否や、早速本日おすすめの
札とメニュー表に首っぴきで注文用紙にオーダーし始め、結局、「お誕生日おめでとう!」の発声もないまま、皆食べ始めて
しまいました(

でもオーダー時に、すかさず「先生は何を注文されますか?」と聞いてくれるのは、そこはやはり気配り上手の I さん。
皆が遠慮することのないよう(ま、うちはないかな)、高くておいしそうな(笑)ネタを I さんと一緒にまずはいくつか注文
しました。結局、1時間弱くらいで皆満腹となってしまい、食後のデザートを最後にいただいて終了となりました。全員が
お腹いっぱい食べてもギャル曽根さんが一人で食べる量にも達しないのですからかわいいものです。
会食直後に「またやりたいですね~」とスタッフNさんからの提案。私の誕生日にはまた「回転寿司食べ放題」を行おうと
いうことになりました(笑、スタッフに大いに祝ってもらえるのですから嬉しい限りです)。
ちなみに今回は集合写真もいただいたお寿司の写真もありません。I さん曰く、食べる方に集中し過ぎていてすっかり
忘れていたのだとか。ということで、この楽しい和やかな雰囲気を写真で皆様にお送りできずちょっぴり残念です。
さて本日、令和最初の「なえぼほのぼのブログ」治療例は、先週メインテナンス来院されたTさん(71才、男性)のお話を
させていただきます。Tさんは7年前の平成24年、左上奥、右下奥がグラグラして痛いということで当院に来院されました。
右上奥の4歯はすでになく、義歯が装着されていました。
初診時のレントゲンと口腔内写真です。

重度歯周炎(7mm以上は重度)に罹患した歯が臼歯部を中心に多く認められ、10mmもしくは10mm以上の保存が難しいと
思われる歯も7歯に見られました。


4年前、残っていた右上奥歯をすべて抜歯し、入れ歯(義歯)になったとのこと。

保存の難しい6歯を初診時抜歯してしまうと治療計画はかなりシンプルにはなりますが、前々回のなえぼほのぼのブログ
「生涯のかかりつけ歯科医を目指して」(http://naebohonobono.blog.fc2.com/blog-entry-137.htm)のケースでも述べた
通り、アイヒナーB4症例となってしまいますので、すでにフレアーアウトしている上顎前歯の状況からも、将来上顎は
総義歯への道を辿る可能性が高い症例であると考えました。Tさんは予算の関係でインプラントまでは難しいということに
なりましたが、インプラントなしでもできるなら義歯ではなくブリッジにして差し上げられないものかと考えました。
さてここまで話が長くなってしまいましたので、この話の続きは次回のなえぼほのぼのブログで述べたいと思います。
近日中にアップを予定していますのでご期待ください

2019.05.07
咬合性外傷を伴う重度歯周炎に罹患していたNさんの治療例
今日から連休明けの仕事始めですね。
連休後半は天気も良く絶好の行楽日和でしたが、皆様いかがお過ごしでしたでしょうか。
私も5月5日の豊平川マラソン、何とか (;^_^A ゴールしました。
まあ、ゴールしたと言っても15km過ぎから歩いてしまったので、これまでの自己最低記録を塗り替えてしまいましたが
練習不足と歳にはやはり勝てません。無理せずゴールしました。
春の暖かい日差しの中、2時間半走ったり歩いたりして少し日焼けしただけで十分健康的でしたが、6月の千歳JALマラソン
に向けてもう少し走れるようにしたいと思います。
話は変わりますが、これまでもブログで度々書いている通り、当院では各月でランチ会を行っています。
今回4月はホテルマイステイズプレミア札幌パーク1階(中央区南9条西2丁目) にあるFarm To Table TERRAで行いました。
室内なのにアウトドアのようなスタイルの地産地消の自然派レストランとして1年前リニューアルされたTERRAは、
スタッフが以前から気になっていたお店だったようです。
店内は高い天井が吹き抜けになっており、広い窓からは自然光も差しています。また通路以外のところには土や石が
敷き詰められてその間を小さな川も流れており、開放感があって静かで落ち着いた森林浴気分を味わえるお店でした。

店内内観
ランチメニューはメイン料理(10種類くらいから選べます)にサラダバーとドリンクバーがセットになっており(下はビーフの
コロダッチグリル玉ねぎソース)、これに食後のデザートを頼みました。

オーガニックな料理は味も色合いもボリュームもとても良かったですし、こういう開放的な雰囲気を楽しめるお店もなかなか
ないと思いますので、皆様、お時間がある時にぜひ一度行ってみてください。
ちなみに次回6月のランチ会はお休みし、その代わり7月にスタッフ全員でトマム一泊の医局旅行に行くことになりました。
医局旅行の様子は追々またこのブログでご報告させていただきます
さて本題の令和元年最初の「なえぼほのぼのブログ」の治療例は、奥歯が全体にグラグラする、歯ぐきが腫れるとのことで、
平成27年に歯周病治療を希望して来院されたNさん(50代、男性)のお話をさせていただきます。
Nさんは3年くらい前から歯のぐらつきを自覚するようになり、前医で1本また1本と抜歯され、このままではどんどん歯が
なくなっていくのではないかと危機感を持って来院されました。
また歯ぎしりや噛みしめの自覚があり、上下顎大臼歯部において垂直性骨吸収と根分岐部病変の進行が著しく、ブラキシズム
が歯周病の進行における増悪因子となっていることが想像されました。
下が初診時のレントゲン写真です(歯周病の進行が著しい大臼歯部のみ歯周ポケットの深さを記載)

左上(向かって右上)の一番奥の歯(左上7)はすべて10mm以上と完全に根尖まで骨がなく保存は不可能な状態でした。
また右上奥、右下奥の歯も一部の歯根で根尖まで骨がありませんでしたが、まずは根管治療を先行させました。
歯周基本治療、根管治療終了時の状態です。

ここから歯周外科処置を行っていきました。
左上奥は冠を外したところ、6 は失活(神経が死んでいる状態)しており、また5 は冠の中で虫歯が進行していたため
いずれも根管治療が必要となりました。

右上奥、左上奥のブリッジセット前の歯周ポケットの状態とブリッジセット後の口腔内です。
プロービング値はすべて3mm以内に収まっています。

次に下顎大臼歯の治療経過ですが、右下奥(8)は近心根のみならず遠心根も根尖に至る歯周ポケットが改善されないため
抜歯させていただきました。その空いたスペースを利用して本来あった位置に7 を起こし(アップライト)、手前の歯も一歯ずつ
手前に送っていきました。
元々欠損していた6部のスペースを確保した後、同部にインプラントを埋入しました。7 はブリッジ支台としては骨支持が少なく、
インプラントによる支持の増員が必要と判断しました。

最後に左下奥ですが、5、6 欠損で骨支持の少ない7、8 が大きく近心傾斜した状態で残りました。

右下臼歯部のように7、8をアップライトさせつつ順次手前に送っていく矯正治療は、固定源もなく時間も非常にかかる上に
2歯とも骨支持が少なく予知性も低いことから現実的ではなく、最初から抜歯して5、6 部にインプラントも考えましたが、
インプラントは対合歯の加圧要素となり得ること、7、8 を有効利用できないかと考え、8 近心根を5 部に90℃回転させて
歯牙移植、抜根して空いたスペースを利用して7 を遠心にアップライト、アップライトさせることでできたスペースに可能なら
8 遠心根を歯牙移植できないかと考えました(最終的には3からの連結固定)。
CTで3次元的な骨の状態を確認した上で、8近心根をまず5 部に移植しました。
歯牙移植はこれまで50ケースくらいは行っており、20年を超えるケースも持っていますが、このケースは抜歯したところ
術前CTで残存骨量を確認していたにもかかわらず健全な歯根膜がないと感じられ、これまで術中にこういう話を患者さんに
した経験はないのですが、「この歯は思っていたより健全な歯根膜がなく、もしかしたら生着しない可能性もありますので
術後の経過をみていく必要があります」とNさんにお話しした上で、歯牙移植を終えました。
術直後と移植2ヵ月の状態です。嫌な予感は的中しました。やはり健全な歯根膜がほとんどなかったようで生着しませんでした
(術前の歯周ポケットは浅く根尖付近の付着はありましたが、あらためて術前CTを見直してみますと、歯根周囲の骨はやや
透過性を増しており健全な状態ではないようにも見えます)。
CT所見で8の遠心根は近心根より更に条件が悪かったため、結局7、8は有効利用することができず、残念ながら抜歯となり
5、6部にインプラント埋入となりました。

治療終了時と現在の状態です。
初診時リーマー(根管治療の器具)が破折していた左上犬歯(3)の根尖病変は、その後悪化して症状が出たため
補綴処置後に歯根端切除術を行っています。
現在まだ根尖部に若干の透過像を認めますが、術後6ヵ月でかなり改善してきています。



初診時と比べると歯肉の状態はかなり改善していますが、数ヵ所に5mmの歯周ポケットが残存しており、また舌側からの
口腔内写真をみますと歯頚部にうっすらプラークの付着も認めたため、引き続きブラッシングの徹底に努めているところです。
またナイトガードを使用していただくと共に、咬合力のコントロールに関しても引き続きアプローチしていく予定でいます。
Nさんのようなブラキシズムによると思われる咬合性外傷を伴う臼歯部の重度歯周炎は、咬合力のコントロールは勿論必要
なのですが、歯周病の原因はあくまでプラークであることから(咬合性外傷は修飾因子)、歯肉縁上、縁下のプラークコントロール
を長期に渡り医患協同で徹底していくことが何より大切です。
治療経過の中で、残念ながら下顎左右の親知らず(8)と左下7は保存、有効利用できず抜歯を余儀なくされましたが、残った
22歯の残存歯が今後長期に守られていくよう、私たち医療側は温かく、さりげなく、大きな責任を持って見守っていかなければ
なりません。10年後、20年後、当院にきて本当に良かったとNさんに言っていただけるよう、スタッフ一同、協力し合いながら
研鑽していきたいと思います
連休後半は天気も良く絶好の行楽日和でしたが、皆様いかがお過ごしでしたでしょうか。
私も5月5日の豊平川マラソン、何とか (;^_^A ゴールしました。
まあ、ゴールしたと言っても15km過ぎから歩いてしまったので、これまでの自己最低記録を塗り替えてしまいましたが

練習不足と歳にはやはり勝てません。無理せずゴールしました。
春の暖かい日差しの中、2時間半走ったり歩いたりして少し日焼けしただけで十分健康的でしたが、6月の千歳JALマラソン
に向けてもう少し走れるようにしたいと思います。
話は変わりますが、これまでもブログで度々書いている通り、当院では各月でランチ会を行っています。
今回4月はホテルマイステイズプレミア札幌パーク1階(中央区南9条西2丁目) にあるFarm To Table TERRAで行いました。
室内なのにアウトドアのようなスタイルの地産地消の自然派レストランとして1年前リニューアルされたTERRAは、
スタッフが以前から気になっていたお店だったようです。
店内は高い天井が吹き抜けになっており、広い窓からは自然光も差しています。また通路以外のところには土や石が
敷き詰められてその間を小さな川も流れており、開放感があって静かで落ち着いた森林浴気分を味わえるお店でした。

店内内観
ランチメニューはメイン料理(10種類くらいから選べます)にサラダバーとドリンクバーがセットになっており(下はビーフの
コロダッチグリル玉ねぎソース)、これに食後のデザートを頼みました。

オーガニックな料理は味も色合いもボリュームもとても良かったですし、こういう開放的な雰囲気を楽しめるお店もなかなか
ないと思いますので、皆様、お時間がある時にぜひ一度行ってみてください。
ちなみに次回6月のランチ会はお休みし、その代わり7月にスタッフ全員でトマム一泊の医局旅行に行くことになりました。
医局旅行の様子は追々またこのブログでご報告させていただきます

さて本題の令和元年最初の「なえぼほのぼのブログ」の治療例は、奥歯が全体にグラグラする、歯ぐきが腫れるとのことで、
平成27年に歯周病治療を希望して来院されたNさん(50代、男性)のお話をさせていただきます。
Nさんは3年くらい前から歯のぐらつきを自覚するようになり、前医で1本また1本と抜歯され、このままではどんどん歯が
なくなっていくのではないかと危機感を持って来院されました。
また歯ぎしりや噛みしめの自覚があり、上下顎大臼歯部において垂直性骨吸収と根分岐部病変の進行が著しく、ブラキシズム
が歯周病の進行における増悪因子となっていることが想像されました。
下が初診時のレントゲン写真です(歯周病の進行が著しい大臼歯部のみ歯周ポケットの深さを記載)

左上(向かって右上)の一番奥の歯(左上7)はすべて10mm以上と完全に根尖まで骨がなく保存は不可能な状態でした。
また右上奥、右下奥の歯も一部の歯根で根尖まで骨がありませんでしたが、まずは根管治療を先行させました。
歯周基本治療、根管治療終了時の状態です。

ここから歯周外科処置を行っていきました。
左上奥は冠を外したところ、6 は失活(神経が死んでいる状態)しており、また5 は冠の中で虫歯が進行していたため
いずれも根管治療が必要となりました。

右上奥、左上奥のブリッジセット前の歯周ポケットの状態とブリッジセット後の口腔内です。
プロービング値はすべて3mm以内に収まっています。

次に下顎大臼歯の治療経過ですが、右下奥(8)は近心根のみならず遠心根も根尖に至る歯周ポケットが改善されないため
抜歯させていただきました。その空いたスペースを利用して本来あった位置に7 を起こし(アップライト)、手前の歯も一歯ずつ
手前に送っていきました。
元々欠損していた6部のスペースを確保した後、同部にインプラントを埋入しました。7 はブリッジ支台としては骨支持が少なく、
インプラントによる支持の増員が必要と判断しました。

最後に左下奥ですが、5、6 欠損で骨支持の少ない7、8 が大きく近心傾斜した状態で残りました。

右下臼歯部のように7、8をアップライトさせつつ順次手前に送っていく矯正治療は、固定源もなく時間も非常にかかる上に
2歯とも骨支持が少なく予知性も低いことから現実的ではなく、最初から抜歯して5、6 部にインプラントも考えましたが、
インプラントは対合歯の加圧要素となり得ること、7、8 を有効利用できないかと考え、8 近心根を5 部に90℃回転させて
歯牙移植、抜根して空いたスペースを利用して7 を遠心にアップライト、アップライトさせることでできたスペースに可能なら
8 遠心根を歯牙移植できないかと考えました(最終的には3からの連結固定)。
CTで3次元的な骨の状態を確認した上で、8近心根をまず5 部に移植しました。
歯牙移植はこれまで50ケースくらいは行っており、20年を超えるケースも持っていますが、このケースは抜歯したところ
術前CTで残存骨量を確認していたにもかかわらず健全な歯根膜がないと感じられ、これまで術中にこういう話を患者さんに
した経験はないのですが、「この歯は思っていたより健全な歯根膜がなく、もしかしたら生着しない可能性もありますので
術後の経過をみていく必要があります」とNさんにお話しした上で、歯牙移植を終えました。
術直後と移植2ヵ月の状態です。嫌な予感は的中しました。やはり健全な歯根膜がほとんどなかったようで生着しませんでした
(術前の歯周ポケットは浅く根尖付近の付着はありましたが、あらためて術前CTを見直してみますと、歯根周囲の骨はやや
透過性を増しており健全な状態ではないようにも見えます)。
CT所見で8の遠心根は近心根より更に条件が悪かったため、結局7、8は有効利用することができず、残念ながら抜歯となり
5、6部にインプラント埋入となりました。

治療終了時と現在の状態です。
初診時リーマー(根管治療の器具)が破折していた左上犬歯(3)の根尖病変は、その後悪化して症状が出たため
補綴処置後に歯根端切除術を行っています。
現在まだ根尖部に若干の透過像を認めますが、術後6ヵ月でかなり改善してきています。



初診時と比べると歯肉の状態はかなり改善していますが、数ヵ所に5mmの歯周ポケットが残存しており、また舌側からの
口腔内写真をみますと歯頚部にうっすらプラークの付着も認めたため、引き続きブラッシングの徹底に努めているところです。
またナイトガードを使用していただくと共に、咬合力のコントロールに関しても引き続きアプローチしていく予定でいます。
Nさんのようなブラキシズムによると思われる咬合性外傷を伴う臼歯部の重度歯周炎は、咬合力のコントロールは勿論必要
なのですが、歯周病の原因はあくまでプラークであることから(咬合性外傷は修飾因子)、歯肉縁上、縁下のプラークコントロール
を長期に渡り医患協同で徹底していくことが何より大切です。
治療経過の中で、残念ながら下顎左右の親知らず(8)と左下7は保存、有効利用できず抜歯を余儀なくされましたが、残った
22歯の残存歯が今後長期に守られていくよう、私たち医療側は温かく、さりげなく、大きな責任を持って見守っていかなければ
なりません。10年後、20年後、当院にきて本当に良かったとNさんに言っていただけるよう、スタッフ一同、協力し合いながら
研鑽していきたいと思います

2019.02.18
中等度~重度歯周炎に罹患していたYさんとの20年(後編)(歯根外部吸収)
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
2月12日、競泳の池江璃花子選手が白血病であることを公表し、世界中に衝撃が走りました。私自身も東京オリンピック
を大いに期待され、健康を絵に書いたようなあの池江選手が白血病って・・・、と本当に驚きました。
些か身内の話になるのですが、今から50年前、充(たかし)伯父様(長兄)が41才の若さで、急性白血病で亡くなりました。
当時、東大理学部の助教授をしており、原子分子物理の研究で、東海村の原子力研究所や東大原子核研究所の大型装置を
使って実験を重ねていたそうです。現在、次兄の平(ひとし)伯父貴以下、父方の兄弟4人は皆健在で、年齢も85才を越えて
きましたので、当時、実験中の被爆であるとか、何かあったのではないかな~と、今なら助かっていたのではないか、そして
日本の物理学会に大きな業績を残されたのではないかと甥として大変残念な思いです。
50年前は不治の病と言われ手の施しようがなかった白血病ですが、その後医学は発達し、近年の急速な治療法の進歩
により、現在、若い世代の白血病は7割以上が治っているとの報告も聞きます。
俳優の渡辺謙さんも1989年、急性骨髄性白血病を発症し、再起はおろか生命も危ぶまれたことがありました。1年間の
闘病生活の後、治療を続けながら復帰され、定期的に入院治療を続けながら経過も良好に見えたのですが、5年後の
1994年に再発。しかしながら、再び俳優として復帰し、その後「ラストサムライ」(2003年)でハリウッドスターの仲間入り
をされ、現在、最初の発病から30年になりますが、お元気でご活躍されています。
池江選手もまずはしっかり治療に専念し、日本の最高の医療スタッフチームの元、一日も早く元気な姿を見せてくれること
を祈っております。そして病気を克服した暁には、やはり競泳選手として復帰し、オリンピックで活躍する姿を見せていただけ
たらな~と切に願っています。
さて本日は、「中等度~重度歯周炎に罹患していたYさんとの20年(後編)(歯根外部吸収)」ということで前回の続きを
お話しさせていただきます。
Yさんは今から20年前の1999年(当時49才)に初診来院され、歯根外部吸収を認めた右上奥の治療を行いました。
「将来的に外部吸収が進んでくると7番は保存できなくなりますが、下に8番がありますので、この歯をうまく利用することが
できます」とお伝えした上で、翌月ブリッジを装着しました。

その後、2015年(65才)までの16年間、前回のブログでお話ししたとおり、その間、何度か歯周病の現状と治療の
必要性をお伝えしたのですが、歯周治療を行わないまま経過してしまい、奥歯でしっかり噛めなくなるまでに重症化して
しまいました。

右下最後臼歯(向かって左下の一番奥の歯)と左上最後臼歯は噛むと垂直的にかなり動揺しており、全体に9~10mmと
深い歯周ポケットを認めました。また左上の奥2歯はぐるっとⅢ度の根分岐部病変を認め、この3歯は保存が危ぶまれる
状態でした。
またYさんは関節リウマチの治療を受けており、主治医に照会したところ、できるだけ休薬は避けてほしいとの要請があり
ましたので、臼歯部は重度の歯周炎でしたが、歯周外科処置は行わず、歯周基本治療のみにて対応していこうと考えました。
16年前にセットした右上奥のブリッジは、49才から65才までの16年間維持されていましたが、7番の外部吸収は進み、
8番(親知らず)は写真にありますように外側に歯冠を出しておりました。

平成27年(2015年)9月から、歯周治療を開始しました。
歯周治療の成功とは、健康な歯周組織を長期に維持することだと考えていますので、そのための大切なポイントが
あります。
① 患者さんご自身による良好なプラークコントロール
歯と歯の間、歯と歯ぐきの間のプラーク(歯垢)を日々きれいに除去すること
私は特に「ブラッシング時間を長く」ということを必ず最初にお話ししています (おおよその目安は1日1回は15分以上)
時間をかけて磨き込まれた歯ぐきは経年的に硬い抵抗性のある歯ぐきへと変化していきます
磨き込まれた硬い歯ぐきはちょっとやそっとのプラークくらいではビクともしません
② 患者さんご自身によるメインテナンスの継続
これも最初のモチベーション時に必ずお話しし、治療中の節目、メインテナンス中にも何度も繰り返し
お話しします
大切な話は最初にできるだけシンプルに伝える、大切な話は繰り返し伝えるということが重要だと
考えているからです
③ 医療側による歯肉縁下の起炎物質の徹底除去
患者さんがどんなにブラッシングを頑張っても、またメインテナンスを継続しても、ここが徹底除去されないと
メインテナンスに通いながら歯周病で歯がなくなっていくということになってしまいます(メインテナンスを継続
したからここまで持ったというのは詭弁です)
④ 医療側による質の高いメインテナンス治療
10年くらいは全く再治療なく経過する患者さんも少なくないのですが、何らかのご事情でメインテナンスの空白期が
生じたり、ブラッシングレベルも皆ピカピカというわけではありませんので、経過の中で歯、歯周組織に悪化が見られた
時(どこが悪化しやすいかという予測と悪化に早く気づくことが大切)、適切な対応によりリカバリーさせなければ
なりません。そこに医療側のレベルの差がはっきり出ます。

歯周病は歳を取ったらなるものではありませんし(白髪になったり、髪が薄くなったりするような加齢変化ではない)、
歳を取ったら歯はなくなっていくものでも決してありません。歯周病は治癒、安定、維持が可能な病気なのです。
1999年の初診来院から2015年までの経過の中で、何度か歯周治療の必要性をご説明してもなかなか歯周治療に
踏み切らなかったYさんでしたが、担当歯科衛生士 I さんの指導の下、まずは時間をかけたブラッシングに励まれ、
その後、I さんによる歯肉縁下の起炎物質(歯石、プラーク、感染セメント質)の除去がなされていったことで、
再来時、歯肉辺縁に見られた赤み(赤いところは歯ぐきに炎症の見られるところです)は少しずつ改善していきました。

2015年再来時の口腔内
あらためて口腔内写真を見てみますと、再来時、Yさんはまずまずのブラッシングであったことがわかります
(プラークはそれ程付いていません)。これまでの歯周治療におけるモチベーション(働きかけ)の効果があったのかも
しれません。しかしながら歯周病は進行し深い歯周ポケットが見られたのは、歯肉縁下の起炎物質が原因と思われます。
Yさんのような進行した歯周病、特に臼歯部の複雑な根分岐部内の徹底除去は、歯周基本治療のみでは困難であるため、
再評価後、確定処置として当院では歯周外科処置を行っています。
しかしながらYさんは前述したように歯周外科処置ができませんでしたので、より時間をかけた丁寧な歯周基本治療を
心掛け、8ヵ月後メインテナンスに移行しました。
2016年5月メインテナンス移行時には、まだ13歯に5~6mmの歯周ポケットが残存していました。
歯周病の進行が著しかった右下奥と左上奥、歯根外部吸収を起こしていた右上奥の治療経過です。


右上奥の矯正的挺出(矯正力で引っぱる処置)は、固定源を同側の手前の歯に持っていくことも考えたのですが、
時間がかかりそうでしたので、対側にアンカースクリューを入れそこを固定源にして挺出させ、おおよそ2ヵ月で手前に少し
寄せながら歯軸を修正しました。その後、7ヵ月間固定を行った後、ブリッジとしました。
ブラケット除去時、歯根周囲の骨は心もとない状態に見えますが、1年8ヵ月後のレントゲンでわかりますように
歯根膜の存在するところまできれいに回復しています。
現在のレントゲン写真です。

残念ながら口腔内写真が撮影されておらず
、次回3月来院時に撮らせていただいたらアップしたいと思います。
メインテナンスの経過の中で、適時、担当衛生士の I さんが歯肉縁下の起炎物質の徹底除去に努めた結果、Yさんの
ブラッシングと相俟って、現在左上奥に2ヵ所、5mmの歯周ポケットを認めるのみとなりました。
またⅢ度の根分岐部病変に罹患していた左上奥2歯は、抜根せず良好に維持されています。
world standard(世界水準、この言葉は私は嫌いなのですが
)において、上顎大臼歯部のⅢ度根分岐部病変は
抜歯してインプラントもしくは保存する場合においても、支えの少ない歯根の抜根(部分的に歯根を抜歯する処置)なのですが、
Yさんの場合は抜根せずそのままメインテナンスできる状態にまで改善しました(そもそも抜根する場合には、再度内科で
休薬しないと処置ができないのですが)。
その理由としては、① 根分岐部内の処置( I さんが行っています)が徹底されていること ②根分岐部における骨欠損
の形(水平的な骨欠損に近いこと、但しYさんの場合は9~10mmの歯周ポケットがありましたので、必ずしも水平的とは
言えないのですが) ③患者さんのブラッシングレベルとメインテナンスの頻度(質も関係) ④歯肉の質(線維性の厚い
歯肉は歯周基本治療に反応が悪く、歯周ポケットが浅くなりにくい)が考えられ、これらの条件が重なった結果と考えています。
1999年、右上奥の歯はかなり歯根外部吸収を起こしていましたので、その時点で抜歯し、矯正治療を提案される先生も
おられるかと思います(抜歯して終わりの場合がほとんどかな
)。
しかしながらその後2015年まで16年間この歯が持ったこと、その間歯周治療はされなかったこと(もしかしたらかなり
歯周病が進行してしまっていたかも)、右上奥のブリッジは結果として65才からの装着となりましたので、ここからの15年、
20年維持できると考えますと、寿命を全うできる可能性も十分あると思います。
この歯は文字通り、持つところまで持たせる歯ではありましたが、Yさんの49才から65才までの16年間、機能してくれました
(結局、20年間で抜歯はこの歯だけです)。
今後もご自身の歯を大切にしながら、勿論お体具合にも十分留意され(歯の健康維持の前提として、お体の健康がしっかり
維持されなければなりませんし、「歯周病は万病の元」と言われるように、あらゆる病気との関連性が示唆されていますので、
歯の健康維持は全身の健康維持にも少なからず貢献するものと思っています)、今後も末永く健康な状態でメインテナンス
にご来院いただけることを願っております。

2月12日、競泳の池江璃花子選手が白血病であることを公表し、世界中に衝撃が走りました。私自身も東京オリンピック
を大いに期待され、健康を絵に書いたようなあの池江選手が白血病って・・・、と本当に驚きました。
些か身内の話になるのですが、今から50年前、充(たかし)伯父様(長兄)が41才の若さで、急性白血病で亡くなりました。
当時、東大理学部の助教授をしており、原子分子物理の研究で、東海村の原子力研究所や東大原子核研究所の大型装置を
使って実験を重ねていたそうです。現在、次兄の平(ひとし)伯父貴以下、父方の兄弟4人は皆健在で、年齢も85才を越えて
きましたので、当時、実験中の被爆であるとか、何かあったのではないかな~と、今なら助かっていたのではないか、そして
日本の物理学会に大きな業績を残されたのではないかと甥として大変残念な思いです。
50年前は不治の病と言われ手の施しようがなかった白血病ですが、その後医学は発達し、近年の急速な治療法の進歩
により、現在、若い世代の白血病は7割以上が治っているとの報告も聞きます。
俳優の渡辺謙さんも1989年、急性骨髄性白血病を発症し、再起はおろか生命も危ぶまれたことがありました。1年間の
闘病生活の後、治療を続けながら復帰され、定期的に入院治療を続けながら経過も良好に見えたのですが、5年後の
1994年に再発。しかしながら、再び俳優として復帰し、その後「ラストサムライ」(2003年)でハリウッドスターの仲間入り
をされ、現在、最初の発病から30年になりますが、お元気でご活躍されています。
池江選手もまずはしっかり治療に専念し、日本の最高の医療スタッフチームの元、一日も早く元気な姿を見せてくれること
を祈っております。そして病気を克服した暁には、やはり競泳選手として復帰し、オリンピックで活躍する姿を見せていただけ
たらな~と切に願っています。
さて本日は、「中等度~重度歯周炎に罹患していたYさんとの20年(後編)(歯根外部吸収)」ということで前回の続きを
お話しさせていただきます。
Yさんは今から20年前の1999年(当時49才)に初診来院され、歯根外部吸収を認めた右上奥の治療を行いました。
「将来的に外部吸収が進んでくると7番は保存できなくなりますが、下に8番がありますので、この歯をうまく利用することが
できます」とお伝えした上で、翌月ブリッジを装着しました。

その後、2015年(65才)までの16年間、前回のブログでお話ししたとおり、その間、何度か歯周病の現状と治療の
必要性をお伝えしたのですが、歯周治療を行わないまま経過してしまい、奥歯でしっかり噛めなくなるまでに重症化して
しまいました。

右下最後臼歯(向かって左下の一番奥の歯)と左上最後臼歯は噛むと垂直的にかなり動揺しており、全体に9~10mmと
深い歯周ポケットを認めました。また左上の奥2歯はぐるっとⅢ度の根分岐部病変を認め、この3歯は保存が危ぶまれる
状態でした。
またYさんは関節リウマチの治療を受けており、主治医に照会したところ、できるだけ休薬は避けてほしいとの要請があり
ましたので、臼歯部は重度の歯周炎でしたが、歯周外科処置は行わず、歯周基本治療のみにて対応していこうと考えました。
16年前にセットした右上奥のブリッジは、49才から65才までの16年間維持されていましたが、7番の外部吸収は進み、
8番(親知らず)は写真にありますように外側に歯冠を出しておりました。

平成27年(2015年)9月から、歯周治療を開始しました。
歯周治療の成功とは、健康な歯周組織を長期に維持することだと考えていますので、そのための大切なポイントが
あります。
① 患者さんご自身による良好なプラークコントロール
歯と歯の間、歯と歯ぐきの間のプラーク(歯垢)を日々きれいに除去すること
私は特に「ブラッシング時間を長く」ということを必ず最初にお話ししています (おおよその目安は1日1回は15分以上)
時間をかけて磨き込まれた歯ぐきは経年的に硬い抵抗性のある歯ぐきへと変化していきます
磨き込まれた硬い歯ぐきはちょっとやそっとのプラークくらいではビクともしません
② 患者さんご自身によるメインテナンスの継続
これも最初のモチベーション時に必ずお話しし、治療中の節目、メインテナンス中にも何度も繰り返し
お話しします
大切な話は最初にできるだけシンプルに伝える、大切な話は繰り返し伝えるということが重要だと
考えているからです
③ 医療側による歯肉縁下の起炎物質の徹底除去
患者さんがどんなにブラッシングを頑張っても、またメインテナンスを継続しても、ここが徹底除去されないと
メインテナンスに通いながら歯周病で歯がなくなっていくということになってしまいます(メインテナンスを継続
したからここまで持ったというのは詭弁です)
④ 医療側による質の高いメインテナンス治療
10年くらいは全く再治療なく経過する患者さんも少なくないのですが、何らかのご事情でメインテナンスの空白期が
生じたり、ブラッシングレベルも皆ピカピカというわけではありませんので、経過の中で歯、歯周組織に悪化が見られた
時(どこが悪化しやすいかという予測と悪化に早く気づくことが大切)、適切な対応によりリカバリーさせなければ
なりません。そこに医療側のレベルの差がはっきり出ます。

歯周病は歳を取ったらなるものではありませんし(白髪になったり、髪が薄くなったりするような加齢変化ではない)、
歳を取ったら歯はなくなっていくものでも決してありません。歯周病は治癒、安定、維持が可能な病気なのです。
1999年の初診来院から2015年までの経過の中で、何度か歯周治療の必要性をご説明してもなかなか歯周治療に
踏み切らなかったYさんでしたが、担当歯科衛生士 I さんの指導の下、まずは時間をかけたブラッシングに励まれ、
その後、I さんによる歯肉縁下の起炎物質(歯石、プラーク、感染セメント質)の除去がなされていったことで、
再来時、歯肉辺縁に見られた赤み(赤いところは歯ぐきに炎症の見られるところです)は少しずつ改善していきました。

2015年再来時の口腔内
あらためて口腔内写真を見てみますと、再来時、Yさんはまずまずのブラッシングであったことがわかります
(プラークはそれ程付いていません)。これまでの歯周治療におけるモチベーション(働きかけ)の効果があったのかも
しれません。しかしながら歯周病は進行し深い歯周ポケットが見られたのは、歯肉縁下の起炎物質が原因と思われます。
Yさんのような進行した歯周病、特に臼歯部の複雑な根分岐部内の徹底除去は、歯周基本治療のみでは困難であるため、
再評価後、確定処置として当院では歯周外科処置を行っています。
しかしながらYさんは前述したように歯周外科処置ができませんでしたので、より時間をかけた丁寧な歯周基本治療を
心掛け、8ヵ月後メインテナンスに移行しました。
2016年5月メインテナンス移行時には、まだ13歯に5~6mmの歯周ポケットが残存していました。
歯周病の進行が著しかった右下奥と左上奥、歯根外部吸収を起こしていた右上奥の治療経過です。


右上奥の矯正的挺出(矯正力で引っぱる処置)は、固定源を同側の手前の歯に持っていくことも考えたのですが、
時間がかかりそうでしたので、対側にアンカースクリューを入れそこを固定源にして挺出させ、おおよそ2ヵ月で手前に少し
寄せながら歯軸を修正しました。その後、7ヵ月間固定を行った後、ブリッジとしました。
ブラケット除去時、歯根周囲の骨は心もとない状態に見えますが、1年8ヵ月後のレントゲンでわかりますように
歯根膜の存在するところまできれいに回復しています。
現在のレントゲン写真です。

残念ながら口腔内写真が撮影されておらず

メインテナンスの経過の中で、適時、担当衛生士の I さんが歯肉縁下の起炎物質の徹底除去に努めた結果、Yさんの
ブラッシングと相俟って、現在左上奥に2ヵ所、5mmの歯周ポケットを認めるのみとなりました。
またⅢ度の根分岐部病変に罹患していた左上奥2歯は、抜根せず良好に維持されています。
world standard(世界水準、この言葉は私は嫌いなのですが

抜歯してインプラントもしくは保存する場合においても、支えの少ない歯根の抜根(部分的に歯根を抜歯する処置)なのですが、
Yさんの場合は抜根せずそのままメインテナンスできる状態にまで改善しました(そもそも抜根する場合には、再度内科で
休薬しないと処置ができないのですが)。
その理由としては、① 根分岐部内の処置( I さんが行っています)が徹底されていること ②根分岐部における骨欠損
の形(水平的な骨欠損に近いこと、但しYさんの場合は9~10mmの歯周ポケットがありましたので、必ずしも水平的とは
言えないのですが) ③患者さんのブラッシングレベルとメインテナンスの頻度(質も関係) ④歯肉の質(線維性の厚い
歯肉は歯周基本治療に反応が悪く、歯周ポケットが浅くなりにくい)が考えられ、これらの条件が重なった結果と考えています。
1999年、右上奥の歯はかなり歯根外部吸収を起こしていましたので、その時点で抜歯し、矯正治療を提案される先生も
おられるかと思います(抜歯して終わりの場合がほとんどかな

しかしながらその後2015年まで16年間この歯が持ったこと、その間歯周治療はされなかったこと(もしかしたらかなり
歯周病が進行してしまっていたかも)、右上奥のブリッジは結果として65才からの装着となりましたので、ここからの15年、
20年維持できると考えますと、寿命を全うできる可能性も十分あると思います。
この歯は文字通り、持つところまで持たせる歯ではありましたが、Yさんの49才から65才までの16年間、機能してくれました
(結局、20年間で抜歯はこの歯だけです)。
今後もご自身の歯を大切にしながら、勿論お体具合にも十分留意され(歯の健康維持の前提として、お体の健康がしっかり
維持されなければなりませんし、「歯周病は万病の元」と言われるように、あらゆる病気との関連性が示唆されていますので、
歯の健康維持は全身の健康維持にも少なからず貢献するものと思っています)、今後も末永く健康な状態でメインテナンス
にご来院いただけることを願っております。

2019.02.11
中等度~重度歯周炎に罹患していたYさんとの20年(前編)(歯根外部吸収)
こんにちは、毎日寒いですね、なえぼ駅前歯科の大村です。
本日は三連休の最終日、朝からニュースでやっていましたが、最強寒波により関東の至る所で雪が降っており、
交通機関にも障害が出ているようです。
皆さん、くれぐれも滑ってけがをしないよう、足元には細心の注意を払って外出してくださいネ
北海道でも先日9日の早朝、十勝(足寄郡)の陸別町で-31.8℃を記録しましたし、札幌も8日には1日中-10℃を
下回るという40年ぶりの寒さとなっており、さっぽろ雪まつりで海外や本州から訪れた観光客も、きっと北海道の寒さを
実感されているのではないかと思います。本日いよいよ最終日。
昨日は、先日6/2(日)に開催される千歳JAL国際マラソンハーフにエントリーしましたので、早速スポーツジムにて
最近さぼっていたランニング&筋トレを行いました。
50才まではあまり衰えを感じなかった筋力も、50才を過ぎてから少しずつ衰えを感じるようになりました。
昔は10kgの米袋も左右の肩にそれぞれひょいひょいっと持ち上げて運んだものでしたが、最近は10kgでも重く感じる
ようになりました。年始には23才になる三男と久しぶりに腕相撲をしたところはじめて負けてしまいました
(尤も私は左利きですが)。
やはり常日頃から、ストレッチをする、筋トレをする、階段の上り下りをする(平地にくらべると登れなくなってきました~
)、
そしてジムや外で走ることを心掛けないと、これから10年以上先、健康な70才を迎えられないな~と思います。
今年は(今年こそ?)体をしっかり絞って走り込み、40代の頃のようにハーフを2時間くらいで走れるようにしたいと思います。
さて本日お話させていただく患者Yさん(初診時49才、女性)は、今から20年前、右上奥のブリッジが外れたとのことで
来院されました。
初診時のレントゲン写真です。

右上奥の歯(7番)の下から親知らず(8番)が頭を出しそうになっており、7番の遠心頬側根の根尖(赤矢印)はすでに外部
吸収による歯根吸収を生じていました。
「将来的に外部吸収が進んでくると7番は保存できなくなりますが、下に8番がありますので、この歯をうまく利用することが
できます」とお伝えした上で、翌月ブリッジを装着しました。その時はここだけの治療を希望されていましたので、歯肉に
腫脹を認めた左上臼歯部だけレントゲン写真を撮影し、歯周病の現状を伝えました。
それから2年後。

今度は左上の前歯が取れたとのことで来院、取れたのは2回目とのこと。根管内には虫歯を認め、金属ポストの適合も
ルーズでしたので再製を勧めました。
またその際、歯周ポケットの深い左右下奥のレントゲン写真も撮影し、再び歯周病の現状を説明しましたが、自覚症状も
なかったため上の前歯の治療のみで治療は終了してしまいました。
その後はしばらく来院がありませんでしたが、2010年、前回来院から10年ぶりに左上奥の歯ぐきが腫れて痛いとの
ことで来院されました。

全顎レントゲン撮影を行ったところ、臼歯部を中心に中等度以上の歯周炎を認めましたので、現状と歯周治療の
必要性をお伝えしましたが、その時も1回のみでの来院で中断となってしまいました。
そこから更に5年後の2015年の来院時には、奥歯でしっかりものが噛めなくなるまでに歯周病は進行しており、
ご自身の歯の将来に不安を感じて歯周治療を希望されました。
下が再来時のレントゲン写真と歯周ポケット検査7mm以上(歯周病が重度)の部位です。

初診から16年が経過し、49才であったYさんは65才となり、歯周病もかなり進行していました。
右下最後臼歯(向かって左下の一番奥の歯)と左上最後臼歯は噛むと垂直的にかなり動揺しており、全体に9~10mm
と深い歯周ポケットを認めました。また左上の奥2歯はぐるっとⅢ度の根分岐部病変を認め、この3歯は保存が危ぶまれる
状態でした。
またYさんは関節リウマチの治療を受けており、主治医に照会したところ、できるだけ休薬は避けてほしいとの要請が
ありましたので、臼歯部は重度の歯周炎でしたが、歯周外科処置は行わず、歯周基本治療のみにて対応していこうと
考えました。
16年前にセットした右上奥のブリッジは、49才から65才までの16年間維持されていましたが、7番の外部吸収は進み、
8番(親知らず)は写真にありますように挺出し、外側に歯が出てきておりました。

さてその後どのように治療が行われ、初診から20年後の現在、Yさんの口腔内はどのようになっているのか。
この続きはまた次回にさせていただきたいと思います。
本日の札幌は久しぶりに穏やかな冬晴れの天気ですので、これから午後はぶらっ~と出かけようと思っています
(いつも仕事に追われているので
、仕事が溜まっていないのは久し振りかな~)。
あ、今日は北海道歯科医師会館で北海道歯科産業さんのデンタルショーがある日でした
常日頃お世話になっている営業の I さんも1日仕事で出ていると言っていたので、まずは顔を出さなければ(笑)。
本日は三連休の最終日、朝からニュースでやっていましたが、最強寒波により関東の至る所で雪が降っており、
交通機関にも障害が出ているようです。
皆さん、くれぐれも滑ってけがをしないよう、足元には細心の注意を払って外出してくださいネ

北海道でも先日9日の早朝、十勝(足寄郡)の陸別町で-31.8℃を記録しましたし、札幌も8日には1日中-10℃を
下回るという40年ぶりの寒さとなっており、さっぽろ雪まつりで海外や本州から訪れた観光客も、きっと北海道の寒さを
実感されているのではないかと思います。本日いよいよ最終日。
昨日は、先日6/2(日)に開催される千歳JAL国際マラソンハーフにエントリーしましたので、早速スポーツジムにて
最近さぼっていたランニング&筋トレを行いました。
50才まではあまり衰えを感じなかった筋力も、50才を過ぎてから少しずつ衰えを感じるようになりました。
昔は10kgの米袋も左右の肩にそれぞれひょいひょいっと持ち上げて運んだものでしたが、最近は10kgでも重く感じる
ようになりました。年始には23才になる三男と久しぶりに腕相撲をしたところはじめて負けてしまいました

(尤も私は左利きですが)。
やはり常日頃から、ストレッチをする、筋トレをする、階段の上り下りをする(平地にくらべると登れなくなってきました~

そしてジムや外で走ることを心掛けないと、これから10年以上先、健康な70才を迎えられないな~と思います。
今年は(今年こそ?)体をしっかり絞って走り込み、40代の頃のようにハーフを2時間くらいで走れるようにしたいと思います。
さて本日お話させていただく患者Yさん(初診時49才、女性)は、今から20年前、右上奥のブリッジが外れたとのことで
来院されました。
初診時のレントゲン写真です。

右上奥の歯(7番)の下から親知らず(8番)が頭を出しそうになっており、7番の遠心頬側根の根尖(赤矢印)はすでに外部
吸収による歯根吸収を生じていました。
「将来的に外部吸収が進んでくると7番は保存できなくなりますが、下に8番がありますので、この歯をうまく利用することが
できます」とお伝えした上で、翌月ブリッジを装着しました。その時はここだけの治療を希望されていましたので、歯肉に
腫脹を認めた左上臼歯部だけレントゲン写真を撮影し、歯周病の現状を伝えました。
それから2年後。

今度は左上の前歯が取れたとのことで来院、取れたのは2回目とのこと。根管内には虫歯を認め、金属ポストの適合も
ルーズでしたので再製を勧めました。
またその際、歯周ポケットの深い左右下奥のレントゲン写真も撮影し、再び歯周病の現状を説明しましたが、自覚症状も
なかったため上の前歯の治療のみで治療は終了してしまいました。
その後はしばらく来院がありませんでしたが、2010年、前回来院から10年ぶりに左上奥の歯ぐきが腫れて痛いとの
ことで来院されました。

全顎レントゲン撮影を行ったところ、臼歯部を中心に中等度以上の歯周炎を認めましたので、現状と歯周治療の
必要性をお伝えしましたが、その時も1回のみでの来院で中断となってしまいました。
そこから更に5年後の2015年の来院時には、奥歯でしっかりものが噛めなくなるまでに歯周病は進行しており、
ご自身の歯の将来に不安を感じて歯周治療を希望されました。
下が再来時のレントゲン写真と歯周ポケット検査7mm以上(歯周病が重度)の部位です。

初診から16年が経過し、49才であったYさんは65才となり、歯周病もかなり進行していました。
右下最後臼歯(向かって左下の一番奥の歯)と左上最後臼歯は噛むと垂直的にかなり動揺しており、全体に9~10mm
と深い歯周ポケットを認めました。また左上の奥2歯はぐるっとⅢ度の根分岐部病変を認め、この3歯は保存が危ぶまれる
状態でした。
またYさんは関節リウマチの治療を受けており、主治医に照会したところ、できるだけ休薬は避けてほしいとの要請が
ありましたので、臼歯部は重度の歯周炎でしたが、歯周外科処置は行わず、歯周基本治療のみにて対応していこうと
考えました。
16年前にセットした右上奥のブリッジは、49才から65才までの16年間維持されていましたが、7番の外部吸収は進み、
8番(親知らず)は写真にありますように挺出し、外側に歯が出てきておりました。

さてその後どのように治療が行われ、初診から20年後の現在、Yさんの口腔内はどのようになっているのか。
この続きはまた次回にさせていただきたいと思います。
本日の札幌は久しぶりに穏やかな冬晴れの天気ですので、これから午後はぶらっ~と出かけようと思っています
(いつも仕事に追われているので

あ、今日は北海道歯科医師会館で北海道歯科産業さんのデンタルショーがある日でした

常日頃お世話になっている営業の I さんも1日仕事で出ていると言っていたので、まずは顔を出さなければ(笑)。