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2018.12.17

治療方針に悩んだ重度慢性歯周炎患者さんの治療例(再生療法、歯牙移植)

 札幌もすっかり寒くなりましたね。
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
12月8、9日の両日は仕事で東京に行っておりました。
9日(日)には東京に住む長男たちと丸の内ビルでランチを予定していたのですが、待ち合わせ時間まで1時間以上
時間があったので、皇居を散策してきました。ちょうど皇居敷地内の乾通りが一般開放されており、多くの人が皇居を
訪れていました。当日は10℃と東京としては寒かったようなのですが、札幌と比べると別世界!札幌の10月上旬の
気候でまだ紅葉が見られました。

乾門と乾通りの紅葉

京橋、日本橋、銀座方面はたまに仕事で行くことがあり八重洲口は利用するのですが、東京駅の顔とも言うべき丸の内側は
2012年10月の保存・復原工事が完了してからは初めてでした。一番下の娘がくまモンの大ファンで(笑)、いつも銀座の
くまモン館でお土産を買うのが我が家の恒例となっており、時間があれば上野美術館のフェルメール展や湯島天神にも
行きたかったのですが今回はお預けとなりました 

今年も残すところあと2週間。新年をきれいな歯で迎えていただくため、年末いつも以上に忙しくしていますが
(加えて週末は忘年会のはしごですが、笑)、本日は2016年に冠が外れたとのことで来院されたNさんのお話をさせて
いただきます。

下はNさんの初診時の状態です。

患者Nさんの初診時の状態
                          Nさんの初診時の状態

詳しく診査を行った結果、右下奥(向かって左下奥)のブリッジが外れているだけではなく、上の左右5番の歯(いずれも延長
ブリッジの支台歯)が歯根破折、左下奥のインプラントが重度のインプラント周囲炎に罹患していました。更に右上奥(6番)も
ブリッジを外してみると3つの根がバラバラに割れてしまっており、一部の根には破折線も認めました。

Nさんは固定性のブリッジを希望していましたが、上の支えが足りないためインプラントによる増員を考えました。

上顎のブリッジの設計は?
インプラントによるブリッジ設計①です(〇、△のところがインプラント予定部位)。インプラントは左右臼歯部に4本埋入。

インプラントによるブリッジ設計第一案
次にインプラントによるブリッジ設計②を考えてみました。この案だとインプラントは右上奥の2本で済みます。

インプラントによるブリッジ設計第二案
しかしながら前歯部だけのブリッジだと、いずれの場合も右上犬歯(3番)の負担が大きいと思われ、万一この歯が
歯根破折で抜歯となった場合、2番も抜歯となって更に2~3本(計4~5本のインプラント)の追加が必要になりますが、
そのインプラント自体が前歯の骨の幅がかなりないため埋入が難しく、万一の時の次の一手はインプラントでリカバリー
が困難という事態が想像されました。

私も歯を守るため欠損部分にインプラント治療を勧めることがありますが、Nさんの場合はインプラントをうまく活用する
ことが難しいケースと判断しました。

右上6の治療経過

左下5の治療経過

現在初診から2年経過し、治療は終了しています。
初診時重度であった歯周炎もきれいに改善し、健康な歯周組織を取り戻しています。

治療終了時レントゲン写真

                      治療終了時レントゲン写真

結局、インプラントを使って上の受け止める側を増員するのではなく、歯牙移植を応用し、上下左右で受け止める側の
バランスを整え、上顎はすべての残存歯を連結固定しました。

治療終了時口腔内

                      治療終了時口腔内写真

また受け止める側を強化するだけでなく、加える側、咬合力のコントロールも併せて行っています。
Nさんの歯周病原性細菌に関しては、前回、前々回のブログでお話ししたPCR細菌検査を行った結果、
Aa菌、Pg菌とも感染しておらず、他のred complex(Pg菌に次ぐ歯周病原性の強い細菌と位置付けられている菌)
2菌種も數が少なく、結局除菌療法は行いませんでした。

これまで歯周病治療を受けたことがないとは言っても、プラークに対する感受性が高くなければ50代でここまで
歯周病は進行しません。仮に細菌に問題がないとすれば、体質とか遺伝によるものなのか、上顎は欠損歯列である
ため咬合性外傷の影響を受けて進行が早かったのか、疑問は尽きませんが、今後も注意深くメインテナンスを継続
していかなければならないことを再認識しました。

炎症と咬合力のコントロールを地道に継続し、Nさんには10年、15年とトラブルなく、良い状態を維持していって
ほしいと願っています。Nさん、今後も末永く当院に来院してくださいね 





  

  

  

 



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Posted at 09:42 | 歯周治療 | COM(0) | TB(0) |
2018.11.17

歯周病治療におけるPCR細菌検査と除菌療法 Part2

 皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
今年は例年になく初雪が遅く、札幌において観測史上最も遅い初雪は1890年11月20日ということですので、
128年ぶりの記録更新となるかもしれませんね。厳しい残暑もなく、また今のところそれ程寒くもありません
ので、例年になく長い秋を過ごせているのは何よりです。

本日、自院の診療は休みなのですが、午前中、他院さんでインプラントのオペとスタッフさん向けの勉強会を行い、
午後からは日本臨床歯周病学会北海道支部研修会に参加する予定です。

その前に苗穂新駅舎が本日オープンということで頑張って早起きし、こちらに来てみました~~(笑)

苗穂新駅舎(南口)

             苗穂新駅舎(南口)

私と同じように早朝から写真を撮る人も(笑)


苗穂新駅舎構内

             苗穂新駅舎構内

テレビ局の取材で構内はごった返し、カメラに写らないようスルーしながら改札口へと移動


なえぼ駅前歯科電飾広告

             なえぼ駅前歯科電飾広告

長田広告のデザイナーさんがかわいらしく作ってくれました!何とか新駅舎オープンに間に合いました


苗穂新駅舎南口に隣接した東西に25階建てのタワーマンションが来年3月から着工予定とのことですので、
少しずつ苗穂駅周辺も変わってくることと思います(これまでは良くも悪くも高層建築物がなく(笑)、辺りをぐるりと
見渡せたのですが)。

さて、本日は前回に引き続き、歯周病治療におけるPCR細菌検査と除菌療法についてお話しさせていただきます。
今日の話は前回のブログからお読みいただかないと、内容をご理解いただくことが難しいと思われますので、
お手数ですがまずは http://naebohonobono.blog.fc2.com/blog-entry-126.html をご一読いただけたら幸いです。

前回ご紹介した、平成18年当時、42才のSさん(侵襲性歯周炎と診断)と平成14年当時、36才のWさん(慢性歯周炎)は、
お二人とも10年近い未来院を経て当院に再来院されました。

お二人とも30代後半~40代前半の男性で、初診時、中等度~重度の歯周炎に罹患していたこと、喫煙者、
歯周病治療(歯周動的治療)は一旦終了した後未来院になっていること、未来院期間中のプラークコントロールは
不十分という条件が似たケースでありながら、その後の経過は大きく違っています。

当時、より罹患度が高く、進行しやすいと考えていたSさんの方は、10年後の再来時、虫歯で保存不可能となった
上顎前歯と右下智歯を除き、すべての残存歯が保存可能な状態で維持されていました。
再来院から2年8ヵ月経過した現在も、歯周組織は良好に維持されています。

患者Sさんの初診時

                          平成18年初診時

初診時全顎的に重度の歯周炎で、42才という年齢からも侵襲性歯周炎と考え、PCR細菌検査を行いました。

PCR細菌検査

その結果、Aa菌、Pg菌ともに感染を認めたため、アモキシシリン+メトロニダゾールにて除菌を行いましたが
(その直後から未来院)、最後まで内服薬を飲み切られたかどうか定かではありませんでした。
歯周基本治療が終了し、歯周動的治療も概ね終了した時点から(歯周基本治療で改善しており、歯周外科処置は考えて
いなかった)未来院となりました。

患者Sさんの10年後の再来時

                    平成28年再来時

う蝕の進行により、上顎前歯部と右下智歯は保存不可能となっていましたが、それ以外の残存歯はびっくりする程、
10年前の状態を維持していました。
Sさんに当時の除菌の話をお聞きしたところ、「先生の指示通り、薬はすべて飲み切りました」とのこと。
あらためてPCR細菌検査を行ったところ、Aa菌、Pg菌とも除菌されていました。

再検査(除菌後)

患者Sさん治療終了時

患者Sさん治療終了時(正面観)

         平成30年現在の状態

上顎はすべての残存歯をブリッジで連結固定し、左下奥に1本インプラントをお入れしてメインテナンス継続中。

「親から受け継いだ遺伝(体質)だと思っていたら、実は親からの菌の感染だった」
の例えではありませんが、Sさんの侵襲性歯周炎の病態はこれまでの経過から細菌学的要因が強かった可能性が
高いと推測されました。

ひとつだけ誤解のないようお伝えしておきたいのですが  、歯周病治療の基本はあくまで「歯肉縁上、縁下の
プラークコントロールの徹底」と「質の高いメインテナンスの継続」だと言うことです。

Sさんの場合、歯肉縁下の起炎物質(歯石など)の徹底除去が平成18年時に一度達成されていたこと、併せて
細菌学的要因が大きかったこと(未来院前にAa菌、Pg菌の除菌が達成されていたこと)、再来時、喫煙をやめて
おられたこと、咬合力が強くない(リスク因子としての外傷性咬合がない)ことなどが複合的に重なった結果として、
たまたま進行していなかったにすぎません(歯周病は薬で治る?とか、メインテナンスがなくても進行しない?と
くれぐれも誤解のないようにお願いします  )。

一方、Wさんの方は、36才時に27歯あった残存歯ですが、15年経った現在、7歯がすでに抜歯もしくは自然脱落し、
残っている歯もかなり厳しい状態になっています。

患者Wさんの治療終了時

                      平成14年治療終了時


 患者Wさんの再来時(H22年)

            平成22年再来時(8年ぶりの来院、その後再度未来院)


患者Wさん平成30年8月歯周治療開始時

                   平成30年8月歯周病治療開始時

喫煙、ストレス、噛みしめ等のリスク因子が歯周病の進行を助長したことに疑いの余地はありませんが、それにしても
歯周病の進行が早く、あらためて30代以降の重度慢性歯周炎と侵襲性歯周炎の線引きは難しいと感じています。

詳しく話をお聞きしたところ、家族内集積があるとのことでしたので、Aa菌、Pg菌の2菌種に関してPCR細菌検査を
行ったところ、Aa菌の感染はなく、Pg菌のみを認めました。

ところで歯周炎の進行に強く関与していると考えられている細菌は、同定されているもので10~20種類ありますが、
BML社のPCR細菌検査ではその中でも重要と思われている6菌種を調べることが可能です。

当院では6菌種すべてを調べる場合、Aa菌とred complexと呼ばれる3菌種(Pg菌はここに属している)の計4菌種、
もしくはAa菌、Pg菌の2菌種を調べる場合があります。歯周病原性の強い細菌として、特に問題とされているAa菌、Pg菌
なのですが、実は菌株によって病原性に差があることがわかっています。

例えばAa菌の罹患率は日本では低いのですが、海外では10~25%という報告があります(病原性の強くないAa菌に
多く罹患している)。またPg菌の罹患率は何と日本では40%くらいなのですが、そのうち重症化する症例は限られています。

日本でPg菌の罹患率が高いことから、BML社では細菌外膜のfimA線毛の遺伝子型(菌株)まで調べることができ、
6種類のうちⅡ型がもっとも病原性が強いことがすでにわかっています。次いでⅣ型、Ⅰ型と言われているのですが、
WさんはⅡ型ではなくⅠ型でした。

だんだん迷路にはまりこんできましたね(スイマセン)。
結論を簡単にお話しすると、Wさんの場合、遺伝的要因がおそらくまずあって、そこにⅠ型のPg菌が関与している
可能性がある。またリスク因子としての喫煙、外傷性咬合(噛みしめ)、ストレスが歯周炎の進行に複雑に絡み合っていると
考えられます。

歯周病は細菌と宿主の相互作用により発症する多因子性疾患

Wさんに除菌療法が有効かどうかは意見が分かれるところです。

私が侵襲性歯周炎もしくは重度慢性歯周炎と診断した患者さんに対してPCR細菌検査を行い、① Aa菌が検出されたり、
②Pg菌の対総菌数比率が大きかったり、③Pg菌のfimA遺伝子型がⅡ型(もしくはⅣ型)であった場合(Ⅰ型は?)、
内服による除菌療法を積極的に行うようになったのは、母娘でAa菌に感染していた患者さんの長期経過の違いが
きっかけでした。

ここで詳細は述べませんが、20才代で重度の歯周炎に罹患していた娘さんは、Aa菌(+)、Pg菌(-)で除菌療法を
行った結果、長期予後が極めて良好である一方、40才代で重度の歯周炎に罹患していた母親は、Aa菌(+)、Pg菌(+)
(後にこのPg菌はⅡ型であることが判明)の両菌に感染しており、そのため内服による除菌を勧めたにもかかわらず、
患者さんが消極的であったため抗生剤の局所投与のみでメインテナンスし続けた結果、6ヵ月以内のメインテナンスを
継続したにもかかわらずメインテナンスし切れず、20年間で4歯の喪失を余儀なくされました。

この苦い経験を通して現在は、PCR細菌検査の結果、①~③の場合、積極的に内服による除菌を勧めています。
私自身はFMD(Full Mouth Disinfection)や歯周ポケット内の局所投与では、歯肉深くに侵入している歯周病原性
細菌の徹底除菌は困難であり、歯周ポケット外からの再感染の可能性も否定できないと考えています。

ここまで長い話に最後までお付き合いいただきありがとうございました。
次回はPCR細菌検査、除菌療法に絡めてPart3ということで、重度歯周炎患者の治療例をみていただく予定です。
次回もまたお付き合いくださることを願っています 
Posted at 08:29 | 歯周治療 | COM(0) | TB(0) |
2018.11.06

歯周病治療におけるPCR細菌検査と除菌療法 Part1

  皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
今年も残すところあと2ヵ月弱、1年間全力で診療に取り組んできましたが、昨年同様、今年も充実した1年を過ごすことが
できたのは、ひとえに常日頃、私を献身的に支えてくれるスタッフのお陰と本当に感謝しています。
 
本日、今年最後のランチ会を南3条西9丁目にあるフレンチビストロのお店  ヴァンセット ケイ(Vingt-Sept.K)
http://www.vingtseptk.com/)で行いました。

ヴァンセット ケイ

皆の笑顔は私の喜びでもありますので、これからも健康管理には気をつけつつ、「スタッフの満足なくして患者満足は
あり得ない」を院長として肝に命じながら、共に成長していけたらと思っています。

早速ですが、今日は前回のブログでも予告した、歯周病治療におけるPCR細菌検査と除菌療法のお話をさせていただきます。
すでにご存知の方も多いと思いますが、歯周病は歯と歯肉の境目(歯肉溝)に付着したプラーク(歯垢)中の細菌が原因です。
プラーク中には700種類と言われる細菌が存在していますが、その中でも10~20種類の歯周病原性の強い細菌の存在が
明らかになっており、一般的に歯周病治療は「歯肉縁上、縁下のプラークコントロール」をいかに徹底できるかが成功の鍵と
なります。

しかしながら、多くの歯周炎患者(ほとんどの患者さんは40才くらいから徐々に進行していく慢性歯周炎)の中には、全身的
には健康であるにもかかわらず、10代、20代から歯周炎を発症し急速に進行していく、いわゆる侵襲性歯周炎と思われる
患者さんがおられます。

歯周病の分類

侵襲性歯周炎患者の特徴として、家族内集積が見られることが多く、歯周病原性の高いAa菌、Pq菌による感染(細菌学的
要因)や宿主の防御機構の低下、免疫応答の異常(遺伝的要因)、あるいはその両者の複合が指摘されています。


歯周病は細菌と宿主の相互作用により発症する多因子性疾患


             歯周病は細菌と宿主の相互作用により発症する多因子性疾患


このようなごく一部の特殊な歯周炎患者に対しては、プラーク細菌の量をコントロールするのみならず(わずかなプラーク
の付着でも問題となり得る可能性があるため)、質のコントロール、即ち細菌叢を変える(歯周病原性の強いプラーク細菌を
除菌する)ことで、より良い歯周組織の治癒と長期維持が可能になるのではないかと考え、日本の一般臨床医が歯周病原性
細菌のPCR細菌検査を初めて行えるようになった(BML社に委託できるようになった)2000年当初から、当院では主に
侵襲性歯周炎と思われる患者さんに対し、細菌検査と除菌療法を行ってきました。

今日ご紹介する患者さんは平成18年当時、42才のSさんと、同じく平成14年当時、36才のWさんで、お二人とも10年近い
未来院を経て当院に再来院されました。

当時、Sさんは侵襲性歯周炎、Wさんは慢性歯周炎と考えており、Sさんの方が罹患度も高く、進行性もあると考えていました。
同年代の男性、喫煙者、歯周病治療(歯周動的治療)は一旦終了していること、未来院期間中のプラークコントロールは
不十分という共通する条件が多いにもかかわらず、その後の経過は大きく違っています。

それは何故なのか?
侵襲性歯周炎のSさんの病態(原因や発症機序)はどのように考えられるか(歯周病原性の強い細菌の感染が原因?体質?)、
30代以降の侵襲性歯周炎と慢性重度歯周炎の線引きは難しいという話は、次回Part2でさせていただきます 


患者Sさんの初診時
           患者 Sさんの初診時  ×は保存困難なため抜歯、△は部分的に抜根


Sさんは歯周基本治療を終了(概ね歯周動的治療も終了)したあたりで、職場が苗穂から移動となり来院が途絶えました。
初診時の年齢と罹患度の高さから侵襲性歯周炎と考えていましたので、PCR細菌検査を行ったところ、予想していたAa菌、
Pg菌共に感染していることが判明したため、来院が途絶える直前に、アモキシシリン+メトロニダゾールにて除菌療法を
行っていました。

しかしながら、服用中に確か吐き気か下痢の症状が出たとのことでお電話をいただき、結局そのまま?来院が途絶えて
しまったため、最後まで飲み切られたかどうか定かではありませんでした(1週間連続投与を行い、その間、歯周ポケット内
のMIC90(90%の最小発育阻止濃度)を維持することが必須ですので、途中で服用し忘れてしまったり、自己判断で中止
してしまうと効果が発揮できなくなります)。

患者Sさんの10年後の再来時


10年後に突然、前歯が取れたとのお電話があり、驚きと嬉しさの反面、「ああ、やっぱりかなり歯周病が進行してしまった
んだな~」と想像(上の前歯は歯周病の進行で自然脱落したと考えた)。
しかしながら再来時のレントゲンを10年前(初診時)のレントゲンとよく比較しながら診てみると、上顎前歯部と右下
智歯は歯周病ではなくう蝕の進行により保存困難となっており(上顎前歯部は嚢胞も大きくなっていた)、他のすべての
歯の歯周病は・・・!!

その後、2年8ヵ月経過した現在の状態は次回のPart2でご覧いただきます 

一方、Wさんの方ですが、下は平成14年に全顎治療を終了した時のレントゲン写真です。

患者Wさんの治療終了時

当時Wさんは36才でしたので、歯周病に対する罹患度は高く、赤矢印の部位には5~6mmの歯周ポケットも残存して
いたため、引き続き注意しながらメインテナンスしていこうと考えていましたが、何回かメインテナンス来院された後、未来院
となりました。

患者Wさんの再来時(H22年)


8年ぶり、44才時のWさんのレントゲン写真です。36才当時の罹患度から想像していたより歯周病はかなり進行していました。
またそれ程欠損がない(3歯欠損、27歯残存)にもかかわらず、全体に垂直性の骨吸収像を示しており、噛みしめ等の
ブラキシズム、喫煙、仕事のストレスがリスク因子となっているのではないかと考えました。

再来時口腔内写真(H22.4)

再度歯周病治療のモチベーション、ブラッシング指導を行い、全顎を6回に分けて、私自身が浸麻、スケーリング・ルートプレー
ニングを行いました。しかしながら元々痛みにとても弱いWさんは、このあたりで一度お休みしたいということになってしまい、
結局そのまま中断となってしまいました。

そこから更に6年後、H28年にWさんから再びご予約のお電話がありました。

患者Wさんの再来時(H28年)

6年の間、道東に転勤となり、転勤先で5本(×の部位)の抜歯処置を受けたとのことでした・・・

当初は慢性歯周炎と診断していたWさんの14年間の経過における歯周病の進行の速さ、またあらためて問診をお取りすると
実は家族内集積があること、Sさんとの経過の違いなど、歯周病を専門に行っている歯科医師にとっては興味深いものが
あります。

痛みにとても弱く、ご自分の歯に対するあきらめも相俟って、再来院後も治療に積極的になれない状態が2年近く続きました。
その間、Wさんの気持ちに寄り添いながら応急処置にて対応してきましたが、右上奥歯の2本が相次いで自然脱落
今年8月からようやく少しずつ歯周病治療を再開しており、先日WさんもPCR細菌検査を行いました。

さて、ここまで話がかなり長くなってしまいました。
専門的過ぎる話に最後までお付き合いいただきありがとうございます 
この続きは次回のPart2であらためてお話しさせていただくこととし、本日はここまでとさせていただきます。




Posted at 16:55 | 歯周治療 | COM(0) | TB(0) |
2018.03.17

40才で局所的に重度の歯周病に罹患していたHさんの16年後(フルブリッジケース)

 3月も後半に入りようやく雪も解け始め春もう少しと思っていたら、昨日今日の雪でまた一面雪の冬に逆戻り。
なかなか春遠い札幌ですが皆様はいかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。

春と言えば移動の時期。
現在育休を取得している歯科衛生士のOさんがだんな様の突然の移動で4月から札幌を離れることになりました。
6月には復帰してくれると思っていましたので、唯々涙

昨年暮れに長男が生まれて家族が一人増え、母親として妻として札幌から遠く離れた道南の小さな町という慣れない
環境の中、いろいろ苦労もあるとは思いますが、だんな様と仲良く協力し合って楽しい家庭を築いていってほしいと思います。
いつかだんな様の転勤で再び札幌に戻り、一緒に仕事ができる日を待っています

さて本日は平成14年に当院の患者さんのご紹介で、歯周病の治療を希望して来院されたHさんのお話をさせていただきます。
主訴は上の左右の奥歯がグラグラし、歯ぐきが腫れているとのことでした。
レントゲン写真を撮らせていただいたところ、下は右下奥の親知らずとの間で歯周病が進行していましたが、14歯すべて
残っていて歯周病もそれ程進行しておらず、一方上はすでに14歯中5歯が抜歯となっており、更に〇印の3歯は根の先
まで骨がない状態でした。上のブリッジは2年前、近隣の歯科医院で入れたとのことでした。

平成14年初診時レントゲン

40才という年齢にもかかわらず歯周病が局所的にかなり進行しており、上の4番(犬歯の1本奥の歯)、7番(最後臼歯)
という噛む力の影響を受けやすい歯が喪失していることから歯ぎしりやくいしばり等の関与も疑われ、厳密なプラーク
コントロールと共に咬合力のコントロールが必要なケースと考えました。

〇印の3歯は自然挺出、根管治療を先行させできるだけ保存を試みましたが、歯周基本治療に反応せず、やむなく
右上の前歯と左の奥歯は抜歯させていただきました

左上奥(向かって右上奥)は大臼歯1歯しか残っておらず、しかもその歯の根分岐部病変は進行しており(Ⅲ度根分岐部病変)、
右上奥も保存の難しい4番を抜歯してしまうと1歯のみの残存となり、歯周病のみならず歯根破折のリスクも大きく固定性の
ブリッジは困難と考えました。

今なら右上奥にサイナースリフトによる骨造成を行い、2本インプラントを埋入することで右上奥の残存歯を守ろうと考えると
思いますが、当時サイナースリフトは考えていませんでした。
最終的に、右上4番は歯周再生療法を行って保存を試み、上顎のすべての歯を連結固定してブリッジで対応しました。

Hさんご自身による良好なブラッシングレベルの維持、メインテナンスの継続(1~3ヵ月毎)、また日中の噛みしめや
食事時の噛み方(強く噛み切らない)を常に意識していただきながら夜間はナイトガードの装着と、炎症のコントロールを
行うと共に咬合力のコントロールも医患協同で厳密に行いました。

治療終了から14年経過した現在のレントゲン写真です。

初診から16年後の現在

再生療法前には根尖まで骨の喪失を認めましたが、

右上4番再生療法前

15年後の現在は骨のボリュームもアップした状態で維持されており、14年間1歯も抜歯にならず上顎のフルブリッジも
しっかり維持されています。

Hさんには「当院に来るまでは治療の繰り返しで歯がなくなっていたが、多少の初期投資をしてでも長く自分の歯を失わずに
済む治療が受けられて本当に良かった」と言っていただけ嬉しい限りです。正直このケースの長期予後はなかなか難しいと
考えていましたので、当時の自分としては最善と思う治療を行って、メインテナンス中はプラークコントロールと力のコント
ロールを繰り返し訴え続けました。

左上奥(向かって右上奥)の大臼歯(根分岐部病変Ⅲ度)が現状維持できているのは、治療の質、メインテナンスの質のみ
ならず、患者さんご自身が当院を信頼して長くメインテナンスを継続されているということが何よりも大きいと思っています。
私と同世代のHさんですが、この先も60才、70才とできるだけ長く現状を維持していただけたらと願っています。




Posted at 12:04 | 歯周治療 | COM(0) | TB(0) |
2018.02.14

初診時中等度~重度歯周炎に罹患していたTさんの20年後

 皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
一昨日は注目の女子1500mスピードスケートの高木選手、ジャンプノーマルヒルの高梨選手、二人とも
金メダルはなりませんでしたが、良かったですね~。高木選手は先ほど1000mでも銅メダル獲得、
道内選手大活躍です!

高梨選手は大本命と言われていた4年前のソチでまさかの4位、高木選手は史上最年少15才で出場した
8年前のバンクーバーオリンピック出場後、当然出場と思われていた4年前のソチでまさかの落選、二人とも
過去のオリンピックでの悔しい思いを胸に、本番に向けて「自分に勝とう(自分の今のベストを尽くし切ろう)」
とする強い意志と集中力を感じました。今後の日本人選手の活躍にますます期待したいと思います!

さて本日は平成10年、今からちょうど20年前に「上の前歯がグラグラで全く噛めない」という主訴で当院に
来院されたTさんのお話をさせていただきます。写真に見られるように、初診時Tさんの右上の前歯(中央向かって左の歯)
の歯ぐきは赤黒く腫れており、奥歯の歯ぐきも全体に赤みがあり(発赤)、歯と歯の間にはプラークの付着を認めました。

平成10年初診時の口腔内

右上の前歯は根の先まですでに骨がなかったため、歯根面の処置よりも根管治療、自然挺出を先行させ
その後に歯根面をきれいに取り除く治療を行いました。2回歯根面の処置を徹底的に行ったのですが、
時すでに遅しで回復して来ず、やむなく抜歯させていただきました(抜歯した歯根面はきれいに歯石が
除去されていました)。

初診時の右上前歯の状態

右上1の歯根面の状態

平成10年初診時のレントゲン写真

奥歯を中心に全体に中等度から重度の歯周病に罹患していましたので(レントゲン上の数字は初診時の
歯周ポケットで、7mm以上(重度)の部位のみ記載)、歯周病治療、根管治療、冠の再製を行い1年かけて
治療は終了となりました。当時はブラッシング指導、モチベーション、スケーリング・ルートプレーニング等の
いわゆる歯周基本治療に力を入れており、Tさんの場合も歯周外科処置を行うことなく歯周基本治療のみで
改善しました。

初診から20年後の現在

その後概ねメインテナンスは継続されて現在に至っておりますが、レントゲンの赤丸の歯が平成25年に
急に痛み出して神経を取った(その際ブリッジも再製した)以外は、20年間1ヵ所も再治療なく経過しています。

唯一、平成26年から28年まで1年半ほどの未来院があり、その際やや歯周病が悪化していましたので、
右上奥と左上奥に歯周外科処置を行いました(写真左上奥(向かって右上)は歯周外科処置2ヵ月後のため、
まだ歯ぐきが落ちくぼんだ形になっていますが、それ以外の部位においては、初診時と比較し健康なうすいピンク色に
変化しているのがわかるかと思います)。

平成28年時の口腔内

旦那様、息子さんたちも当院に来られており、Tさんからは「先生のところに来るまでは毎年必ずどこかが腫れて
治療を繰り返していたが、先生の治療を受けてからは全くなくなった。歯の治療って、頻繁にやり直す必要が
あるものだと思っていたけれどそうではないということを知りました」と全幅の信頼をいただいており、心の中では
大変嬉しく思っている次第です

上の前歯がグラグラで全く噛めないと52才の時に来院されたTさんも現在72才となり、治療終了時の27歯
残存を20年近く維持されています。前回のブログの最後にも述べましたが、日本人は50才で24歯程度残存
しているのですが、75才になると一人平均10本くらい歯がなくなっています。

歳を取ったら歯はなくなっていくものでは決してありません。
40代、50代の時に受けた全顎治療の質とその後のメインテナンス治療の質が重要で、どの歯科医院に通うかで
自分の歯の運命が決まると言っても決して過言ではありません。

歯科医院さんのHPを見ますと、最先端の医療機器や最新の技術の謳い文句につい目がいってしまい、それが
その医院の実力と思いがちなのですが、それ以前の問題として、基本的なことがルーティンに丁寧にきちっと
されているかどうか、歯周治療においては歯周外科処置や再生療法ができるかどうかではなく(私も再生療法を
謳ってはいますが )、その前提となる歯周基本治療が実はとても大切だと言うことが、Tさんの20年の経過
からわかると思います。

70才を越えてもまだまだ元気なTさん。お互いこれから更に歳を取ってはいきますが、健康に気をつけて
これからも10年、15年と末永くご来院ください(むしろ私の方が健康に気をつけなければならないかも )。

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