2017.09.21

HP掲載症例Part2 : 重度歯周病患者 I さん(治療例1)の初診から17年後の現在

 台風一過。ようやくここ札幌も朝から気持ちの良い秋晴れの空が広がっています。
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。

10月1日はいよいよ札幌マラソンです。
一応ハーフにエントリーしているので、1ヶ月ぶりくらいになりますが先週からゆっくり走り始めました。
大会までまだ1ヶ月弱あるように思っていましたが(開催日は8日か9日だと思っていました)、残りはわずか2週間(笑)。
ランニング後、久しぶりの体重計、己が重さに(MAX?)愕然としてしまいました。
2~3kgは体重を落とし(もっと?? (^_^;))、少しでも軽くして本番に望まねばと思うところです。

さて本日は初診時20代で重度の歯周病に罹患していた I さん(当院HP重度歯周病治療例、治療例1)のお話を
させていただきます。

初診時レントゲン写真

                    平成12年初診時レントゲン写真

初診時口腔内写真

I さんとの初診からの話の詳細は2013年5月25日の「なえぼほのぼのブログ」
http://naebohonobono.blog.fc2.com/blog-entry-41.html に掲載しておりますので、まずはぜひこちらのブログを
お読みください。

現在初診から17年経過し、40代になった I さんですが、遠く道北にお住まいということもあり、先月3年ぶりの
来院となりました。

1回のブラッシング時間は20分と長く、その磨き込まれ鍛え上げられた歯肉と共に、ほとんどプラークの付着していない
完璧に近いブラッシングレベルにより、今回3年ぶりにもかかわらず1箇所の悪化も見られませんでした。
まさに歯周病治療において患者さんが日々行うブラッシングの質と量が何よりも一番大切であることを私に教えてくれる
お手本となる患者さんだと思います(勿論、メインテナンス治療を含めた歯周病治療の質も大切ですが (^_^;))。

I さんが初診来院された当時は開業して3年目で、これまで勤務医時代には他院からのご紹介で同様の患者さんを
何人か見たことはありましたが、実際に担当するのは初めての経験でした。私が所属している日本臨床歯周病学会の
支部例会で、初診時10代の患者さんが20~25年くらいの長期経過の中で最後には総義歯になってしまったケース
プレも見たことがありました。

初診時すでに口腔内はきれいに清掃されており、1日4~5回、1回2~3分のブラッシングを行っているにもかかわらず
短期間でここまで急激に歯周病が進行してしまっているギャップの大きさに、また上顎前歯部は根尖近くまで骨吸収して
いるにもかかわらず見た目の歯肉はほとんど正常なそのギャップの大きさに、果たして I さんの歯周病を私の力で治す
ことができるのだろうかとも思いました。

初診から17年後の現在のレントゲン写真

                    初診から17年後の現在のレントゲン写真 

初診から17年後の現在

                     初診から17年後の現在の口腔内写真                

初診から17年経って今思うことは、I さんは数千人に1人と言われる「広汎性早期発症型歯周炎」(現在は年齢に
因らない「侵襲性歯周炎」という分類に変更されている)の患者で、歯周病原性の強いA.a.菌の感染を認めたため
除菌療法を行ってはいるものの、どのようなタイプの歯周病であっても、歯周病治療の基本はやはり「歯肉縁上、縁下の
プラークコントロールの徹底」に尽きるということです。

I さんの右上奥、右下奥は初診時の口腔内写真(青矢印)に見られるよう歯肉は大きく腫脹し、根分岐部病変(根と根の
股の部分の歯周病変)がかなり進行していたため、神経を取る治療が必要ではないかとか、上顎前歯や右下臼歯は
支える骨がかなり少ないので、歯を削って連結すべきではないかとか、あるいは審美的な観点からも、予後の難しい
上顎前歯2歯は抜歯し、6歯でブリッジにした方が良いのではないかというご意見、ご質問を、研究会、学会、講演会等
での発表時に聴講された先生方からいただきました。

どれも一理あるご意見だと思いましたが、I さんは年齢も若くこの先の人生、50年以上はこの歯とうまく付き合っていか
なければなりません。神経を取った歯は経年的に歯根破折というリスクを必ず抱えますし、根管治療も100%成功する
という保証はありません。歯は削って連結冠を装着すれば、それに伴う2次う蝕や脱離等のリスクは必ず生じてきますし、
抜歯すれば解決するわけではなく、歯列の連続性は途切れブリッジの支台となる隣接歯の負担は確実に増加します。

天然歯の保存に勝るものはなく、若いからこそ不可逆的な処置はより慎重にと経過観察した結果、初診から17年1歯も
抜歯になることなく、すべての歯の歯周組織は健康な状態で維持され、それらの処置を行う必要なく今に至っています。

今後加齢変化として少しずつ臼歯部の近心傾斜、前歯部の叢生が進み、そのことが歯周病の憎悪因子となるのでは
ないかと少し懸念していますが、現在遠く道北にお住まいで、また子育ての真っ最中ということもあり、矯正治療に関して
は今後も長期に経過観察していく中で必要が出てくれば治療のご提案を行うつもりです。

歯科医師として一番大切なことは、治療後も患者さんとの信頼関係を大切にしながら、生涯かかりつけ医として責任を
持ってメインテナンスし続けることではないかと考えています。
そのために歯の大切さを訴え続け、患者さんが自分の歯を守るためにメインテナンスに来てくださるよう、これからも
熱意を持って働きかけていくつもりです 
I さん、今後もお互い健康で末永くご来院くださいますことを心より願っております。

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2017.08.19

HP掲載症例Part1 : 重度歯周病患者Aさん(治療例2)の初診から15年後の現在

 こんにちは、今日の札幌はとても良い天気ですね。
皆様連休中はいかがお過ごしでしたか、なえぼ駅前歯科の大村です。

あっという間のお盆休みでしたが、私は家族としばしゆったりとした時間を過ごすことができました。
例年のようにお墓参りをし、おいしいものを食べ、また映画や温泉にも行き、家族皆健康で当たり前の日常を過ごせることに
あらためて感謝した日々でした。

さて前回のブログでお伝えしましたように、当院HPの重度歯周病治療例として平成20年に掲載した治療例1、2、7の
更に7年後の現在を、3回に渡ってアップしたいと思います。

本日第1回目として、治療例2(50代、男性)のAさんのお話をさせていただきます。
Aさんは平成14年に来院されましたので、現在初診から15年(治療終了から13年)経過しています。
下は初診時のレントゲン写真です。

初診時レントゲン

臼歯部の骨吸収が著しく、左上(向かって右上)、右下(同左下)、右上(同左上)の計8歯に、8~10mm以上の重度の歯周
ポケットと著明な動揺、進行した根分岐部病変を認めました。

初診時、Aさんは抜歯になってしまうくらい悪化している歯があるにもかかわらず、自分が進行した歯周病に罹っていると
いう自覚はありませんでした。歯周病は「静かなる病気(Silent disease)」と言われ、かなり重症化するまで自覚症状なく
進行します。また「糖尿病」「心筋梗塞」「脳梗塞」「誤嚥性肺炎」等とも関係しており、本当は怖い病気なのです。

右下奥はすでに2本歯がない上に残っている2本も重症で(赤矢印)、噛む力に対して支えが足りないことで、歯周病が更に
悪化していました。また左下奥も2本歯がない状態(赤矢印)でしたので、ますます右下奥に負担がかかっていました。
左上と右上の親知らず(青矢印)は歯周病に罹ってはいましたが、移植のドナー歯となり得るため、歯周病治療を進めて
いきながら、この2歯を右下、左下奥に有効活用できないかと考えました。

治療終了時のレントゲンと口腔内写真です。

治療終了時レントゲン

右下奥と左上奥の歯()は、エムドゲインを使った歯周組織再生療法により骨の再生が得られ、無事保存することが
できました。更に左上、右上の親知らずをそれぞれ右下、左下に移植し()、どちらもブリッジで対応しました。

下は初診時(上段)と治療終了時(下段)の左右上下臼歯部の口腔内写真です。

初診時歯周病が進行していた左下を除く3箇所は、いずれも炎症のある赤みの強い歯肉でしたが、治療終了時には
やや白みがかった薄いピンク色に変わっていることがわかるかと思います。

初診時、治療終了時口腔内写真

2年ぶりに再来された最近のレントゲンです。初診から15年、治療終了から13年経過しています。

平成29年現在
歯周ポケットは少し深くなっている部位もありましたが、53才から68才の現在まで1本の歯を失うことなくお入れしたブリッジも
長期に維持されています。

再来時の口腔内写真です。1回のブラッシングは10分というAさんの口腔内ですが、プラークが結構付着しています(赤矢印)。

再来時口腔内写真

時間のかけ方は変わっておらず、ご自身ではきちっとプラークを除去できているつもりでも、2年もメインテナンスが空いて
しまうとこういう状況になりがちです。幸い今回は今後の歯周病治療で回復できるレベルの悪化でしたが、再来院された時
には取り返しのつかない状況になっていることも珍しくありません。

当院で長期にメインテナンスしている患者さんは、歯周病で抜歯になることがほとんどありません。
しかしながら3ヶ月毎のメインテナンスが5ヶ月、6ヶ月と延びがちになったり、途中1年以上来院されない期間があると、
その間に残念ながら歯周病が進行してしまうことがあります。

歯周病治療(メインテナンス治療も含む)は、「歯肉縁上、縁下の徹底的なプラークコントロール」に尽きます。
これは医療側の技術や見立て、歯周病、歯周病治療に対する知識、理解の深さは勿論ですが、「一生自分の歯で生活して
いきたい」「1本たりとも自分の歯を失いたくない」という患者さんの強い思い、そのために日々時間をかけた丁寧なブラッシング
と医療側の適切なメインテナンス治療の継続が何より大切で、口腔健康の長期維持は文字通り医患の協同作業により達成
されるのです。

Aさんが今回2年もの長期間来院されなかったことは、決して患者さんが悪いのではなく、私自身が伝え切れていない、
まだまだ力不足であることの結果だと受け止めています。患者さんがHPやご紹介等で、多くの歯科医院の中から当院を
選んで来てくださることは、本当にご縁だと思います。このご縁を大切にし、当院の患者さんが長期に渡り1本の歯も失う
ことのないよう、健康な口腔内を維持できるよう、これからもスタッフと共に研鑽、努力していきたいと思います。

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次回は初診時20代で重度の歯周病に罹患していた I さん(当院HP重度歯周病治療例、治療例1)のお話をさせていただきます。
現在初診から17年経過し、40代になった I さんですが、遠く道北にお住まいということもあり、今回3年ぶりの来院となりました。
前述したAさんも元々ブラッシングレベルは高かったのですが、 I さんは1回のブラッシング時間が20分と長く、その磨き込まれ
鍛え上げられた歯肉と共に、ほとんどプラークの付着していない完璧に近いブラッシングレベルにより、3年ぶりにもかかわらず
1箇所の悪化も見られませんでした。
まさに歯周病治療において何が一番大切なのかを教えてくれるお手本となる患者さんです。
この続きは次回のブログであらためて 
2017.08.11

大きな根尖病変や外科処置の難しい臼歯の歯根端切除術、意図的再植術(根管治療完結編)

 毎日暑いですね。
もうすぐお盆、すでにお休みに入られた方も多いと思いますが皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
本日は根管治療Part 3 (完結編)ということで、大きな根尖病変や外科処置の難しい臼歯の歯根端切除術、意図的再植術
ケースを4ケースご紹介させていただきます。

1ケース目は苫小牧から来院されているKさんのケースで、平成20年に根管治療を行いましたが、治療終了4年後に
初診時の根尖病変が更に大きくなっていることがわかり、歯根端切除術を行いました。

 初診時

治療終了4年後

歯肉を開けてみると、レントゲンで予想していたよりはるかに大きな根尖病変となっておりましたが、歯根端切除を行い
スーパーボンドにて逆根充しました。

オペ後1年

上は術後1年の状態です。
術前のレントゲン写真と比べますと、根尖周囲に骨の再生を認めます(黒い骨の吸収像が小さくなっています)。

Kさんのお父様は、まだ札幌にご勤務されていた平成9年から、苫小牧に引っ越された現在まで20年近く当院に通院されて
おり、Kさんご自身も治療終了から8年、3~4ヶ月ごとのメインテナンス治療を継続されています。
ご家族皆さんとてもブラッシング熱心で本当に嬉しい限りです。

平成9年当時は私も30代半ばと若く、すべての患者さんにブラッシングの重要性を一生懸命伝えていたあの頃の熱意が、
15年、20年経ってこうやって芽を出し、実を結んでいることに、歯科医師としていろいろ苦労もしてきたけれど、開業時から
自分の目指した「プラークコントロールを基盤とした患者さんの長期的な口腔健康に貢献できる歯科医院」という方向性は
間違っていなかったという思いです。

2ケース目は右上大臼歯(7番)の症例で、初診時頬側歯肉に腫れと瘻孔(排膿路)を認めました。
根管治療を行いましたが、根尖が閉鎖されている根管もあり、その後経過を見るも2年後に症状が再発しました。
CTを撮影したところすべての根尖にまたがった大きな根尖病変を有していたため、外科処置のとても苦手なTさんでしたが
歯を残したいという思いは強く持っておられ、CTの結果も見ていただき、ようやく外科の了承をいただいて意図的再植術を
行いました。
右上奥初診時、根管治療終了時

右上奥治療終了2年後及びCT画像
現在再植7ヶ月が経過しており、術後瘻孔はすみやかに消失し現在までのところ再発は認めておりません。
しかしながらレントゲンでの改善はまだ十分でないことから、引き続き経過を見ているところです。

再植7ヵ月後

Tさんのように何とか歯を残してほしいと願う患者さんに対しては、うまくその歯を残せるよう、長年歯を残すことにこだわり
臨床を積み重ねてきた、自分の知識と技術を駆使して保存に努めたいと考え、正確な診査と最善の治療方針、治療手順を
十分検討した上で、1本1本丹精を込めて処置を行っています。

3ケース目は下顎大臼歯(6番)の歯根端切除術ケースで、この歯は根充後6ヶ月経過をみた後、病変部の改善が思わしく
ないため再度根管治療を行い、計1年くらい保存治療に時間をかけて、一度は根尖病変が改善したかに見えた再発例で、
6年後のオペ時には嚢胞がかなり大きくなっており、掻爬時、遠心部では隣の6番遠心根が大きく露出、底部では下顎管に
かなり近接していたことに加え、逆根充も難しい狭い口腔内でしたが、うまく処置を行うことで改善したケースです。

この患者さん(Nさん)は以前ブログでご紹介したことがありますが、当院に来院される15年も前から、寒い冬の季節に
なると突然上下のあご、歯ぐきが痛むようになり、長い時には20分以上持続するため、恐怖で冬場の外出時には必ず
マスクを装着。痛み止めはいつも持ち歩いているという主訴を持っておられ、非定型歯痛、三叉神経痛等も疑いましたが、
全顎再根管治療を行ったところ、治療終了1年を経過した頃からピタッと症状がなくなりました。Nさんは長年痛みに
悩まれていたと思うのですが、おそらくどうしたら良くなるのか、どこを受診したらよいのかがわからなかったのだと思います。

だんな様に先立たれお一人で札幌に住んでおられましたが、平成23年、娘さんの住む千葉県に引っ越されることと
なったため、当地で開業されているK先生をご紹介しました。ちなみに下のレントゲンは、千葉に引っ越す前の検診時に
撮影したもので、治療終了後6年経ってこの歯の根尖病変が再発していることが判明し、急ぎ歯根端切除術を行いました。

再発時

歯根端切除術1年後

向こうでの生活も落ち着かれ、K先生のところに来院された後、K先生からは今回の紹介に対するお礼のメールに添えて、
術後の経過が良好であるという証拠写真(笑)も送っていただきました。現在Nさんとは年に1回、年賀状のみのやり取りと
なりましたが、お元気でK先生のところにメインテナンス通院されていることと思います。

最後の4ケース目は左上大臼歯(7番)の歯根端切除術のケースで、この歯は大きなブリッジの支台歯に組み込む予定で
いました。根管治療後も消えない瘻孔の原因歯として、写真中央の7番(◎)近心頬側根を疑ってはいたのですが、向かって
左の6番(○)遠心頬側根の可能性もあり(どちらの根管も閉鎖されていました)、意図的再植術で7番を抜去してしまうと
6番が万一原因歯であった場合、医療過誤となるリスクもあり、かなり奥の難しい処置でしたが、歯肉を開けて両歯の根尖を
よく観察し、結局予定通り7番頬側根の歯根端切除、スーパーボンドによる逆根充を行ったところ、瘻孔はすみやかに消失
しました。

左初診時、右オペ前

治療終了時(上顎)

今、あらためて治療終了時(上顎)のレントゲン写真を見ますと、当時はまだすべての歯にi-TFCファイバーコアを使用して
おらず、金属コア(土台)も混在していた時期でした。

ここにご紹介した治療例はすべて自分のその時のベストであり、自分にとっては作品のようでもあります。
長く快適にトラブルなく使っていただきたいという願いを込めて治療を行っていますので、その後のメインテナンスの継続に
つい厳しくなるのは、もし当院の患者さんでこの記事をお読みになり思い当たる方がおられましたらご容赦、ご理解ください。

当院でのメインテナンスが途切れた結果、悪くなって再来された時には手遅れとならないよう、適切な診査、診断、指導、
処置を行うためのもので、結局は患者さんご自身のためなのです。

また長い文章となってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございます。

3回に渡ってお話させていただいた根管治療編はひとまずここまでとし、次回以降は、当院HPの重度歯周病治療例
(治療例1、2、7)の患者さんの、更に7年後(HP掲載7年後)の現在を重度歯周病治療例の三部作としてご紹介させて
いただきます。

まずは次回第1回目として、平成14年に来院されたAさん(治療例2)のお話をさせていただきます。初診時保存は困難と
思われた歯もありましたが、1本の抜歯もなく、エムドゲインを用いた歯周組織再生療法、上顎左右親知らずの歯牙移植を
有効に活用し、初診から15年経過しています。

先ほど長期メインテナンスの継続という話をしましたが、実はAさんは治療終了後11年メインテナンスを継続されていたにも
かかわらず、「調子が良いので」という理由で2年ほどメインテナンスが途切れており、つい先日再来院されました。
本当の中断理由はもしかしたら何か別のご事情があるのかもしれませんが、まずは久し振りにお元気な姿で来院された
ことに感謝し、やや悪化した歯周病の治療をAさんと共に進めていく予定です。

平成15年当時の自分としては持てるべストを尽くした治療ですので、次回のブログも楽しみにしていただければ幸いです。









Posted at 13:31 | 根管治療 | COM(0) | TB(0) |
2017.08.05

破折リーマー(根管治療の器具)が問題となっていた2症例

  こんにちは、なえぼ駅前歯科の大村です。
札幌も日中はかなり暑くなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今朝は、琴似の自宅を出発し、線路下をひたすら走り手稲駅を越えて右折、新川通りを右に折り返し、
前田森林公園、コーチャンフォーを横目に、最後は北24条宮の森通りで折り返して自宅に到着。
概ね22kmのハーフコースを3時間位かけてゆっくり走りました。やはり自然の中で体を動かすって気持ち良い
ですね。しばらく休診日の土曜日は続けてみようと思います。

さて前回、歯根端切除術、意図的再植という通常の根管治療で治らないケースの外科的歯内療法という
お話をさせていただきました。
本日は根管治療Part2ということで、症状のある根管にリーマー破折(根管治療の用いる器具の破折)を認めた
症例の中から2ケースをご紹介させていただきます。

また前回同様、大きな根尖病変や外科処置の難しい大臼歯部の歯根端切除術、意図的再植術ケースも誌面が
許せば(長いと読むのも大変ですので  )供覧させていただきます。

私自身、歯周病治療は専門ですが、歯内療法(根管治療)は決して専門ではありませんので、一般開業医の話、
治療例として読んでいただければ幸いです。

最初の患者さんはYさん(20代、女性)で、平成13年、左上奥の歯が痛いということで来院されました。
レントゲンで確認したところ、矢印部分に器具(リーマー)の破折と根尖病変を認めました。

初診時①

                 初診時

上顎の最後臼歯は口が大きく開き、口腔前庭が広いなどの条件が良くないと歯根端切除術は難しく、華奢なYさんの
お口では到底無理でした。

リーマーを除去できなければこの根管だけは抜去せざるを得ませんが、3つの根でカメラの三脚のように
しっかり支えられている大臼歯の1根を除去してしまうと、残り2根に当然負担がかかって将来的に歯根破折→抜歯
となるリスクが高くなりますし、そもそも1根だけ抜去すること自体が難しい場合もあります。
何とか破折リーマーを除去しこの歯を救おうと考え、少し時間はかかりましたが、最終的には無事除去することが
でき治療は終了しました。

10年後、久し振りの再来時に撮らせていただいた左上奥の状態です。

10年後
                   10年後

経過良好でYさんのお口の中でしっかり機能していました。

若かったYさんも10年経って母になっていましたが、その後は現在まで5年程来院されていません。
30代のこの時期は子育てに追われ、どうしてもご自分の口腔内、歯のケアが疎かになりがちですが(子供を産むと
カルシウムを取られて歯が悪くなると言われていますが、お口の中ですでに完成している歯からカルシウムが溶けて
子供の栄養になることは絶対にありません)、歳を取っても自分の歯で噛めるよう、ぜひご自分の将来のために
時間を確保してメインテナンス来院していただきたいと思います。

2ケース目は、平成15年、当時テニススクールで知り合った方からのご紹介で、日本語がほとんど話せない
スウェーデン人Sさん(20代、女性)のお話をさせていただきます。
右下奥の歯が痛いということでしたが、さすがは歯科医療先進国スウェーデンの方、痛いという歯を除く27本は
全く治療されていない健全歯でした。

レントゲンを撮らせていただくと、何と!唯一の処置歯に根尖病変を認め、その根管には破折リーマーが
残っているではありませんか 
しかもその根管が痛みの原因(リーマーがあることで根の先端まできれいにすることができない)となっていました。

初診時②
                初診時

初診時、現状をありのままに説明してしまうと、もし私が保存的にうまく治療できなかった場合、母国でリーマー破折が
問題になっては大変とも思い、リーマーが折れていることは説明せず、「少し治療が難しいので時間はかかります」
とだけ説明して治療を開始しました。

治療3回目に無事破折リーマーを除去することができ、冠を被せて治療は終了となりました。

根管治療終了時

                   根管治療終了時

ちなみにSさんは保険証を持っておらず、すべての治療が自由診療でした。
当時は私自身、自由診療が全く解らず、確か根管治療代として保険診療の10割(5000円~1万円位)、冠は(当然
のことながら白物を希望)できるだけ健全歯を削らず、ハイブリッドセラミックの部分被覆冠をご提案し(当時はまだ
プレスセラミックが世に出ていない時代でした)、料金として3万円位とお話ししたように思います。

*ハイブリッドセラミックはセラミック(陶材)とレジン(プラスチック)のハイブリッド素材で、 セラミックよりも軟らかく
  粘りがあるため歯に優しく、料金もセラミックの中では安価である反面、減りやすく、経年的に変色するのが欠点です。
 
そうしたところ、Sさんに「そんな安い治療費で良いのか?」(英語で何と言われたかは覚えていません
と言われてしまいました。
欧米では大臼歯の根管治療代が10~20万円、セラミックは10~15万円くらいが相場だったようで(後で知りました)、
そのためSさんにはとても安く感じられたのだと思います(破折リーマーも除去したのですから、もっといただいても
良かったですね(笑))。

ちなみにリーマー(根管治療の器具)は消耗品ですので、使い続ければ無理な力を加えなくても破折することは
正直あります。先端の彎曲している難しい根管を一生懸命きれいにしようと頑張るほどリスクも高くなります。
患者ごとに新品を揃えられればベストですが、日本の根管治療(保険診療)代は欧米の1/20ですので、それは
正直なところ無理というのも現場の本音です。

そのためそのような偶発症を絶対に(この世の中、絶対ということは絶対にないのですが  )避けたい方は、
歯内療法(根管治療)のみを自由診療で専門に行っている医療機関での治療をお勧めします。
費用は欧米並みにかかりますが、その道のプロですので確実に治療をしてくれるはずです。

またリーマーが折れていても問題にならず良好に治癒していれば、当然ですがリーマーは除去しません。
除去することによるリスクもありますし、高額な機器であるマイクロスコープを使って、更に時間と手間をかけなければ
ならない治療であることもご理解ください。

富田ファーム


話は戻ります 
私、英会話は正直それ程得意ではないのですが、不思議とその後も何かのご縁で、欧米の方が患者さんでお見えに
なられています。そしてある時気づいたのですが、どの方も初診時に必ずチャージを聞いてこられます。
おそらく患者負担が非常に少ない日本の歯科保険診療と違い、欧米ではその10~20倍の治療費がかかるからだと
思います。

ちなみにアメリカでは人気職種 NO1 が歯科医師です。
また歯科治療の方針を決める上で大前提となるのが「rich or poor?」なのです。
実際に日本の歯科保険診療であれば残せる歯も、アメリカではお金がなければすべて抜歯され総義歯となってしまう
こともあります。

但し、最善の歯科医療を受けられるのはお金のある人だけというアメリカ人でさえ、日本人よりも80才ではるかに
多くの歯が残っているのは皮肉です(平成17年頃のデータでは、アメリカ人18本、日本人9本でした)。

①「治療よりも予防(できるだけ治療しない)」 → 治療費が高ければ必然的に予防しようとする意識が強く働き、
  結果、歯は残っていく(日本は未だに悪くなったら歯医者に行けばよいという悪しき習慣があります)

②「安くても治療の質が担保されなければ、結局治療は繰り返されて歯はなくなっていく」 → 日本の歯科保険診療
  にはさまざまな制約、限界があり、決して患者さんにとって最善の治療とはならないこと

がデータから読み取れると思います。

話がだいぶ脱線してしまいましたので本日はここまでとし、次回は歯根端切除、意図的再植術 Part2を近日中に
アップさせたいと思います。ここまで読んでいただきありがとうございました 


Posted at 19:54 | 根管治療 | COM(0) | TB(0) |
2017.07.21

根管治療で症状が改善しない症例に対し、歯根端切除術、意図的再植術を行った治療例

 こんにちは、なえぼ駅前歯科の大村です。
本日は前回のブログでお伝えしましたように、通常の根管治療では改善が難しい症例に対し、
① 歯根端切除術 
② 意図的再植術
③ 歯根端切除術→意図的再植術  
を行い、抜歯を回避できた治療例をご覧いただきたいと思います。 

その前に、平成17年、親戚の歯科医院で保存治療は困難、また抜歯も大きな嚢胞を有するため口腔外科でと
告げられたAさんのお話をさせていただきます。
Aさんのご友人(当院の患者さん)が、「あそこに行けば何とかしてくれるかもしれない」とご紹介してくださったとのこと。
問題になっている歯は上の前歯でしたが、来院時には大きく表裏の歯ぐきが腫れており、表側のみならず裏側においても
完全に骨の裏打ちがなく波動を触れていました。

 初診時
           
                初診時

大きな嚢胞でしたので、さすがにこのケースは通常の根管治療では治らず歯根端切除術になると考えていました。
しかしながら根管治療開始4ヵ月後には排膿も止まり、根管充填(根充)9ヶ月後まで経過観察しましたが、症状は再発
することなくレントゲン所見でも改善してきましたので、結局外科処置をせずに歯を残すことができました
(ちなみにCR充填の修正、研磨はこの後行っています  )。

根充9ヵ月後

      根充(根管治療終了)9ヶ月後

3年後、旦那様が当院に全顎治療を希望して来院されました。奥様のご様子を伺ったところ調子は良いとのことでした
ので、その後も経過は良好であったようです(きれいに改善した状態をレントゲンで確認したかったこともあり、メインテ
ナンス来院を促したのですが、調子は良いので結局来院されませんでした )。

さて話は本題に戻りますが、①歯根端切除術の最初の症例は平成13年、当院に来院された0さんのケースで、
当院の患者さんであった娘さんのご紹介で来院されました。
全顎のレントゲン写真を撮らせていただいたところ、右上犬歯に歯根の1/2以上を含んだ嚢胞を認めました。

初診時
根管治療開始4ヵ月後には排膿が止まり根充しましたが、根充1ヵ月後に再度歯ぐきが腫れたため歯根端切除術を
行いました。当時、嚢胞内の歯根はすべて切除というのが口腔外科の金科玉条となっており(今でも?)、このケースは
すべて切除してしまうとこの歯自体が保存不可能となり、更には上顎をブリッジで対応することができなくなります。

平成元年~3年、「歯界展望」という歯科雑誌に長期連載された歯科小手術(三井記念病院歯科口腔外科 寶田 博
先生著)の「根尖切除術」を熟読し、「根尖部の処置は歯根の変色や切断面の所見をよく観察する」という記述を頼りに、
根尖部を2mmだけ切断し、8ヵ月後に無事上顎の大きなブリッジを装着することができました。

 治療終了時

終了時レントゲン

現在は例外なくスーパーボンドで逆根充を行っていますが、当時はケースバイケース(切断のみ(自分で根管治療
を行っているケース)、照射型アイオノマーセメントで逆根充、スーパーボンドで逆根充)であったように思います
(スーパーボンドはまだクイックモノマー液が出ていない頃で、更に完全に硬化するまでの10分間はずっと血液が
付かないようにしなければならないと当時は考えていましたが、その後の研究でずっと保持し続ける必要はない
ことがわかりました)。
今でも口腔外科や他院での歯根端切除術において切断しかせず(逆根充がされていない)、根尖病変が治り切らない
再発例を見かけますが、なぜ旧泰然とした治療が変わっていかないのか非常に疑問に感じています。

続いて①歯根端切除術の2例目は、平成14年、他院で1年根管治療を行っているが一向に良くならないとのことで、
当院の患者さんのご紹介で来院されました。
来院時、下顎前歯数歯にまたがる大きな嚢胞を認めました。2ヶ月ほど根管治療を行いましたが、根管内からの排膿は
全く止まらず歯根端切除術に移行しました。

初診時

              初診時

実際に外科処置を行ってみると、術前のレントゲン像よりはるかに大きな骨吸収を認め(レントゲン写真の更に下方まで
病変は広がっている)、徹底掻爬している最中、下歯槽神経の分枝である太い切歯枝が嚢胞内に出てきました

歯根端切除術直後

       歯根端切除、術中根充後

向かって左側の根管内にはリーマー破折を認めましたが、根管治療時、バイパスにて根尖に穿通させることができ
すでに根充していましたので、その右側の2歯において歯根端切除と術中根充を行いました。
8ヵ月後に来院された際、撮らせていただいたレントゲンです。

オペ後8ヶ月

リーマー破折歯の根尖部にまだ骨吸収像が残っていますが、歯根端切除術を行った歯において嚢胞は概ねきれいに改善
しており、患者さんにもご紹介してくださった方にも大変喜んでいただけました

次の症例は平成11年に私が全顎治療を行い、平成27年、実に16年ぶりに当院に来院されたWさんのケースで、
その間1歯のトラブルもなくずっと調子は良かったとのことでした。このケースは①の歯根端切除術ではなく、最初から
②の意図的再植術で対応しました。
久し振りに全顎レントゲン写真を撮らせていただいたところ、左上奥に根尖病変と頬側の歯ぐきには瘻孔(排膿路)を
認めました。

初診時と16年後の再来時

向かって左端の歯の根尖部(赤矢印)に歯根破折を疑い、歯根端切除術では改善しないと考えました。
術中の根尖部です。

左上5根尖部

予想していた通り、根尖部に破折を認めたため根尖部を切断し、破折線の感染部分を除去してスーパーボンドにて
逆根充を行いました。こういうケースの場合、接着性、生体親和性、耐久性にすぐれたスーパーボンドに勝る材料は
ありません。
意図的再植9ヵ月後の現在のレントゲン写真において、改善している(黒い感染部分が骨に置き換わっている)のが
わかるかと思います。ちなみに1本右側の大臼歯においては歯根端切除術(近心頬側根、青矢印)を行っています。
瘻孔は消失し、冠も装着され良好に経過しています。

再植9ヵ月後の現在

こうやって過去の自分の治療を振り返りますと、彎曲している上顎大臼歯近心頬側根の感染根管治療は簡単ではないと
いうことをあらためて感じます。更には、1日に例えば20名以上の患者さんをこなさないと成り立っていかない、日本の
歯科保険診療において、根管治療には本当に一言では言えない難しい問題があります。

次は③歯根端切除術→意図的再植術のケースで、昨年当院の患者さんのご紹介で来院されました。
初診時、右上の前歯(矢印)の根尖に根尖病変と頬側歯肉には瘻孔を認めましたので根管治療を行いましたが、瘻孔は
消失しないため歯根端切除術を行いました。術後すみやかに瘻孔が消失したため、オペから2ヶ月経過後、ブリッジ作製
に取り掛かったところ歯肉の瘻孔が再発しました。

初診時→根充後→根切後

このケースは根尖から上向する骨吸収像を認めるものの、
①初診時のレントゲン所見において、もともと根尖部はそれ程大きく根管拡大されてはいなかったこと
②前歯部は根尖部での破折は少ないこと(多いのは根尖部に咬合力のかかる臼歯部)
③深い歯周ポケットもなく、術中も歯根破折は見つけられなかったこと
④オペ後すみやかに瘻孔は消失したこと
から、根尖部での破折をあまり疑っていなかったため、経過観察期間も十分ではありませんでした 。

意図的再植術中、根尖部での破折線及び壊死セメント質部分をスーパーボンドで充填した状態です。

再植時
再植直後→再植4ヵ月後

現在意図的再植後6ヶ月が経過しておりますがその後再発はなく、再植直後と4ヵ月後のレントゲン写真を比較しても
病巣は改善してきており、引き続きブリッジは仮付けのまま経過観察を行う予定です。

最後の症例は最近意図的再植術を行った症例で(矢印)、先程のSさんと同様、根尖部での破折が原因で改善しな
かったケースです。
初診時、再植後
当院では長期経過の中で歯を失う一番の原因であった歯根破折に対して、9年前から歯根破折を極力防止するため、
症例を選んでこのケースのようなスーパーボンドを用いたi-TFCファイバーコアによる根築1回法、フェルールを確保する
ための歯冠長延長術、また歯根破折を起こしてしまった歯に対しては破折歯接着保存治療を行い、できるだけ歯根破折
で歯を抜かずに済む治療を心がけています。

開業して20年、これまでの多くの患者さんの治療経過を踏まえ、今自分の臨床において積極的に取り組んでいる治療が
10年後、20年後の患者さんの口腔健康にしっかり貢献できることを願って止みません。

ガーベラ(希望)








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